「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#3
第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#3
2012-08-25 17:33:54「ダークニンジャ=サンめ」「グランドマスターの圧倒的カラテから逃げ仰せ……」「ホウリュウ・テンプルか」「だが奴は侮れぬ……」「なに、ぐるりと包囲して、一人一人誅すればよい」「違いない!」「多勢に無勢!」三人のニンジャはボソボソと会話しながら、黒塗りの廊下を足早に渡ってゆく。1
2012-08-25 17:47:22ニンジャ達はホンマルを高速移動し、中庭のホウリュウ・テンプル包囲部隊への合流を急いでいる。敵はダークニンジャとグランドマスター・ニーズヘグ、パープルタコ、シャドウウィーヴ、セプクを逃れたサラマンダー派のニンジャの僅かな生き残り(ミノタウル、フューズフィンガーらはセプクした)だ。2
2012-08-25 18:00:13「ムーホンとはしかし」「スローハンド=サンといい、わきまえぬことじゃのう」「アラクニッド殺しとは……」「ホウリュウ・テンプルに執着しておったと聞く」「不穏の極み」「過ぎた野心……」「まこと、ニンジャミレニアムの汚点めいた出来事よの。ムーホン、そしてニンジャスレイヤーだ」 3
2012-08-25 18:21:53「奴はロードに恭順したと聞いたぞ」「情報が古いな。奴にはヘカトンケイル=サンが差し向けられたという」「何」「なんたるオーバーキル」「ニンジャスレイヤーの命運尽きたり」「となれば後はムーホン者じゃ。ニーズヘグ=サンはそのニンジャスレイヤーとやり合い、既に瀕死」「醜い争い」「好機」4
2012-08-25 18:31:29「包囲連中は何処までやるかの?」「堕ちたりとも懲罰騎士、シテンノ、グランドマスターぞ。そう簡単にはくたばらぬわ。いい具合に潰しあったところを、我らが頂く寸法じゃ」「キンボシ・オオキイ!」「残り物にフクスケよ」「応!」5
2012-08-25 18:39:17三者は和気あいあいに廊下の角を曲がった。そして、曲がった先の床にうずくまるニンジャに躓きそうになった。「これ!無礼……」「往来でござる」「待て。此奴どうした?」「助け、アバ、すぐ逃げ、アバッ……」身体の六割が焼け焦げて炭化しかかったニンジャは声にならぬ警告を発しようとした。 6
2012-08-25 18:45:24「サ、サヨナラ!」限界だ。焼けたニンジャは爆発四散した。「これは!」三者は素早くカラテ警戒した。先頭の一人がバネじかけめいた勢いで垂直に跳ね上げられた。「グワーッ!」ゴギリ、と嫌な音が鳴った。「リマインダー=サン!?」「何が……」リマインダーは首が吊られて死んでいる。「え?」 7
2012-08-25 18:50:56二者は角を曲がった先を凝視した。廊下は酷い有様だ。何が起きた?「火事?」「リマインダー=サン?え……?」「ドーモ」そこに無雑作に立つプラチナブロンドの美女が一瞬にして醜怪な獣に変貌した。「フェイタルです」「フェイタル?え?」「十秒待つ」傍に屈んだニンジャが低く言った。「名乗れ」8
2012-08-25 18:58:42「ドーモ……メズマライズです」「ラカンターです」「ドーモ。ブラックヘイズです」ニンジャは立ち上がった。リマインダーの死体がドサリと床に落ち、爆発四散した。「イヤーッ!」ラカンターが仕掛けた!彼は焼け焦げた壁を蹴り、斜め上空からフェイタルに蹴りを放つ。メズマライズは両手をかざす!9
2012-08-25 19:06:11「イヤーッ!」ラカンターの蹴りは襲いかかったフェイタルの豪腕を撃って逸らし、もう一方の脚で側頭部を狙った。フェイタルは頭突きを繰り出す!「イヤーッ!」「グワーッ!?」ラカンターは跳ね飛び、壁に跳ね返った。バック転で受け身を取り、二人の侵入者を挟んで立つ! 10
2012-08-25 19:14:43「フゥーム」メズマライズは中腰姿勢で両手を翳したまま、小首を傾げた。「ブラックヘイズ=サンとな。わしの情報によれば、貴様はそこのフェイタル=サンを謀り、ドラゴン・ユカノをアマクダリに売ろうとして抹殺されたはず」「なかなか面白い。そういう話になっているか」 11
2012-08-25 19:24:11「違うのか?」「謀(たばか)ったとは人聞きの悪い」ブラックヘイズは葉巻に着火し、煙を吐き出した。メズマライズが両手を幻惑的に揺らす。「卑しき傭兵に、護るべき名誉など一切無し。ゆえにギルドは何をしてもよいのじゃ」「その通り!」ラカンターが両手にバイポーラ・クナイを構える。12
2012-08-25 19:42:03「こいつらに何かコメントはあるか、フェイタル=サン」ブラックヘイズは煙を吐いた。「いや、特に無い」フェイタルはカチャカチャと爪を鳴らした。「そうか」「所詮はサンシタのヘンゲヨーカイ使い」ラカンターがバイポーラ・クナイをゆっくりと動かす。「どうせ死ぬのだから艶姿に戻っては?」 13
2012-08-25 20:08:32「ククク……」メズマライズは幻惑的な手の動きを早める。「どうじゃ……もはや動けまい……」既に彼は恐るべきヒュプノ・ジツを発動しているのだ!「すまん、よく見えんのだ」ブラックヘイズが言った。葉巻から尋常ではない量の煙が出ている事にメズマライズは気づく。「ムム?」「見えんのだ」 14
2012-08-25 20:13:00「ア……これは煙幕!」メズマライズはジツを取りやめ、防御姿勢を取る。だが遅い!煙の中からワイヤーアームが飛び来たり、顔面を掴んだ。「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ナムサン!ワイヤーが引き戻される!煙の中にメズマライズが飛び込む! 15
2012-08-25 20:27:11「イヤーッ!」「グワーッ!」「GRRRRR!」「アバ、アバーッ!?」煙の中で残忍な咀嚼音!「プッ!」朦々たる煙の中から飛び出したのは……メズマライズの生首だ!ナムアミダブツ!「どうした!なんだこの煙は!」ラカンターはバイポーラ・クナイを煙に向かってむやみに振り回し、後ずさる。16
2012-08-25 20:30:56「何だーッ!」彼はパニックに陥りかけていた。やがて煙の中から、上半身をはだけたプラチナブロンドの美女が現れた。「艶姿だ」フェイタルが言った。「え?」ラカンターは一瞬呆気に取られた。ナムサン!「イヤーッ!」懐に飛び込んだフェイタルはイポン背負いで煙の中にラカンターを投げ飛ばす!17
2012-08-25 20:40:42「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「……イヤーッ!」煙の中からブラックヘイズが転がり出て来た。彼は煙を振り返り、UNIX起爆スイッチを操作した。KA-BOOOOOOM!「サヨナラ!」煙の中でラカンターが爆発!煙幕を吹き飛ばすとともに跡形も無く四散!18
2012-08-25 20:44:01「……さて。それにしても、あの跳ねッ返りの進行ルートがいよいよわからん」ブラックヘイズは回廊の先を覗き込む。「ここで暴れたのは確かだが……先に行った様子は無い」「完全にはぐれたな」とフェイタル。「あいつはバカだからしょうがない」彼女は髪をかきあげ、歩き出した。「先に進もう」19
2012-08-25 20:54:37「クローンヤクザ重点展開!」ヴェラーのIRC指示に従い、ヤクザ達がゾロゾロと列を為し、やがてホウリュウ・テンプルを取り囲んだ。「文化的価値が高い建造物であるため、爆破はダメだ。わかるな。RPG、グレネードの類いは使用禁止だ。いいか、これは訓練ではない。訓練ではないぞ」 21
2012-08-25 21:12:20彼はIRCインカム通信を終了した。潰れた左目は摘出され、包帯で覆われている。スローハンドに側頭部を蹴られた際に破裂したのだ。彼のニンジャ耐久力を持ってすれば、その程度の負傷では戦線離脱の必要無し。ヘリオンとワールウィンドが彼の両脇を固める。どちらも歴戦のニンジャである。 22
2012-08-25 21:21:17「まさにネズミ袋」彼らの背後で尊大な声。「我がカラテミサイルによってじわりじわりと追いつめられたムーホン者に逃げ場無し!これが用兵術というものだ。学びたまえよ?」ニンジャ達は素早く振り返り、オジギした。「ドーモ。パーガトリー=サン」「ドーモ」彼は浅いオジギを返した。23
2012-08-25 21:26:13「知っての通りホウリュウ・テンプルは文化的価値が高い建造物であるため、蹂躙はならんぞ?蹂躙は」パーガトリーは強調した。「ほれ……古代書物やら」「ハイ。重点指示しております」とヴェラー。パーガトリーはセンスで己をあおいだ。「しかし、歴史に抱かれ死にたいてか。センチメントの極み」24
2012-08-25 21:32:21