(フォロワーの皆さんへ:懲りずにニンジャスレイヤーの二次創作小説を流します。2時くらいまでの予定だ。二次創作なので、二次創作だ。クォリティとか本編との整合性はそれなりだ。)
2012-08-29 22:03:02「アバーッ!?」末席の部下がニューロンを焼かれ死んだ。鼻、口、耳から煙が吹き上がる。二階級特進だ。敵の侵攻、もとい殲滅は既に最終段階に入っている。物理レイヤ論理レイヤとも、現在の防衛戦力はポテトチップス袋の底に残った破片と相似であった。ナラは程なく壊滅する。1
2012-08-29 22:03:58「アバッ」「アバッ」「アバッ」部下が3連続死。彼らの役割は生きるネットワーク防壁であり、施設の中心部に位置するナラ・メインUNIXフレームの防衛である。これを落とされれば統合戦略システムは機能不全に陥る。それは地上で戦う物理軍の全滅を意味し、また自分達自身の死とイコールである。2
2012-08-29 22:06:59ZZOOMM。地下UNIXセンター全体が震えた。爆撃だ。ついに制空権を握られたのだ。電子戦争における制空権の確保は困難を極める。航空機はスタンドアロンでは機能しない。そのため、航空機の運用には、航空管制UNIXフレームへの敵ハッカー侵入可能性を完全にに排除する必要がある。3
2012-08-29 22:11:46逆に言えば、敵機の空襲は自軍の反攻戦力の消滅と同義である。逆転の可能性は潰えた。「アバッ」「アバッ」「アバッ」LANケーブルを直列に繋がれた部下が次々に死んでゆく。自分の順番が来るのが早いか、それともバンザイ・ニュークでネギトロ未満のチリになるのが早いか。今回は後者だろう。4
2012-08-29 22:15:58ZZOOMM。天井にヒビが入る。自分達の努力は無駄に終わった。総員に退避命令を出すも、ザゼン・トリップ状態の部下たちは微動だにしない。彼は一瞬苦悩したが、結局部下たちを見捨てた。頭部から伸びる49本のLANケーブルを接続解除、シェルターへと向かう。5
2012-08-29 22:19:13彼は非常灯の赤に染められた廊下を走る。だがインガオホー、その判断は遅い。一際大きな揺れ。跳ね飛ばされ転んだ彼の後ろから爆風が迫る。身を守る物は?ある。蝶つがいからもぎ取られたナノカーボンフスマが落ちている。彼はそれを迫る爆風に向け、身を低くした。6
2012-08-29 22:22:42なぜ彼は死を前にしてここまで冷静なのか?ディセンションが始まっていたのだ。生への渇望が遥か平安時代のニンジャソウルを呼んだ?違う、そうではない。彼は既に死を受け入れていた。偶然か必然か、いずれにせよ彼はニンジャとなった。直後爆風がナノカーボンフスマを撫でた。7
2012-08-29 22:27:54ガレキと化した地下メインUNIXセンターからの脱出は、ドトンを駆使しても30時間を要した。体感時間はそれより遥かに長かった。極限まで消耗しつつ地上に顔を出した彼が見たものは、炭化したナラ市であった。背後で動力を失ったゴールデンモビルダイブツが崩れた。灰が舞った。8
2012-08-29 22:31:40ドレッドボンズはそこで瞑想を止め、目を開いた。眼前には錆だらけのモビルダイブツ。戦時中、ナラに点在するダイブツは徴用により片端から巨大戦闘ロボットへと改造され、敵戦車を叩き潰して回った。今となってはその殆どが、再びアグラを組んでブッダスタチューとしての役目に戻っている。10
2012-08-29 22:36:33眼前のそれは関節を破壊され二度と歩かないが、ジェネレーターはいまだ火を灯している。かつて300トンの大ブッダを高速機動させていたこのジェネレーターは、ミノル村全体の電力を賄うのに十分な出力を有していた。ヌーン…。低周波を発しつつ、背後のケーブルからエネルギーを送り続ける。11
2012-08-29 22:39:42ナラ防衛戦に参加した部隊は字義通り全滅したと記録されている。実際には10に満たぬ生存者が存在し、全員がニンジャであった。その後は様々である。籍無き兵士として軍の暗部に回った者、ザイバツ・シャドーギルドへと身を寄せた者、行方の知れぬ者も居る。ドレッドが選んだのは仏門であった。12
2012-08-29 22:45:24「ボンズ様!お食事ができました!」シギが堂のフスマを開くと、光が差し込んできた。ドレッドボンズはプロセスを中断する。プレートには粥と煮たタケノコ、よく焼いたバイオキジの脚が盛られている。彼に戒律を守るつもりはさらさら無かったが、シギは膳に四足獣と魚類を乗せたことはない。13
2012-08-29 22:48:33シギが見守る中膳を平らげたドレッドボンズは、ゲタを履いて外に出た。重金属酸性雨は小降り。この程度なら直接の死には至らないが、毒は確実に蓄積する。忙しく働く村人たちは、彼を目にするや深々とオジギをする。ボンズはいちいち立ち止まり、手を合わせてオジギを返すのだった。14
2012-08-29 22:52:22山賊を壊滅させた翌日、ボンズはすぐに村を発とうとした。しかし村人たちは彼を引き留めた。恩人に礼をしたいという素朴な心もあるが、何より彼らは未だボンズを必要としていたのだ。実際すべき事はあった。長期に渡る山賊の支配によって荒んだ村人の心は、高潔なボンズにしか癒せなかった。15
2012-08-29 22:58:14発つ、いや残ってくれの問答は何度繰り返されたか。ボンズの心も変わる。ザゼンを組み、説法し、打ち捨てられていた寺を直し、少し眠る。生活リズムが定まってきた。今日はあれから49日目、ビニルハウスのプロセッサは再び基盤色の花を咲かせている。ならば、このまま腰を落ち着けてしまおうか…16
2012-08-29 23:02:55午前のアイサツ回りは彼にとって特に重点されるべき日課である。村人は皆笑顔だ。もし沈んでいる者が居れば、ドレッドボンズは座り込んで彼あるいは彼女の話を聞き、カウンセリングを行うだろう。今や彼の果たすべきは弔いのみではない。心理的ケアは聖職者のプリミティブな存在理由である。17
2012-08-29 23:07:13ボンズもまた救われた。果てるとも無い葬送は彼の心を蝕み続けていた。村への逗留は、戦後彼が始めて味わった安らぎの時であった。寺へ戻ると湯が湧いていた。タオルを浸し体を拭く。「…遥かに良い」そう、遥かに良かった。充実感が彼を満たした。18
2012-08-29 23:11:37だが忘れるなかれ。今日は49日目、すなわち死と苦が訪れる不吉の日。そしてここはブッダ亡きマッポーの世。ショッギョ・ムッジョ、万物は流転するのだ。19
2012-08-29 23:14:59ウォーン…ウォーン…。ただならぬ音を遠くに聞き、ドレッドボンズは跳ね起きた。バイオ生物の鳴き声か?違う、これはエンジン音だ。徐々に、徐々に近づいてきている!ボンズは寝マキをオケサに着替え、近頃は使うこともなかった錫杖を手に取る。ナムアミダブツを三度唱え、寺を飛び出す!21
2012-08-30 00:18:43夜の村は無数に光るバイクのライトに照らされていた。「ゲハハーッ!」「ゴヘヘーッ!」囃し立てるかのような嘲笑!山賊だ、山賊が再び現れたのだ!「ボンズを出せ!ブラックゴート=サンを殺したボンズだ!出さなければこの村はファック&サヨナラだッ!」野太い声は一際巨大なバイクから響く!22
2012-08-30 00:23:48