2012年8月30日

山本七平botまとめ/「仮名(かな)が日本を作った」/~漢字文化に圧殺された韓国、圧殺されなかった日本~

山本七平著『日本人とは何か(上巻)』/2 文字の創造/65頁以降より抜粋引用
15
山本七平bot @yamamoto7hei

1】前略~「平安前期までの日本は、ほとんど中国文化のとり入れに明け暮れた。その中で本当に創造的な仕事といえるのは、仮名の発明ぐらいである」(東野治之著『木簡が語る日本の古代』)。…このことの意味は大きい。<『日本人とは何か(上巻)』

2012-08-27 17:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

2】日本人は自らの言葉を記す自らの文字を創造し、それによって自らの古典を記し、それと並行して組織的な統一国家を形成した。この時に日本ができたと言っても過言ではない。もちろん文字なき文化はあるし、言葉なき思想もありうる。

2012-08-27 18:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

3】だが『古事記』『万葉集』から『竹取物語』や『源氏物語』『伊勢物語』『平家物語』さらに歌集・日記類から随筆『徒然草』に至る膨大な「かな古典文学」ともいえるものが創造されなかったら、現代の日本文化は無かったといってよい。日本人は「かな」をつくり「かな」が日本文化をつくった。

2012-08-27 18:57:51
山本七平bot @yamamoto7hei

4】この意味で日本を考える場合「かなの創造」は、忘れることのできない画期的事件、「かなの創造」がそれ以後の日本に与えた影響は計り知れない。自分の考えを自分の言葉と自分の文字で、何の束縛もなく自由自在に記しうる事、それが広く庶民にまで普及して識字率を高めた事、(続

2012-08-27 19:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

5】続>また和歌・俳句を生み出して日本的な感性を育んだ事、この重要性は幾ら強調しても強調し足りないが…問題はそれだけではない。簡単にいえば「かな」がなければ日本は無く、そうすれば日本文化は当時の超先進大国中国の漢字文化の中に包摂され埋没してしまったかも知れないという事である。

2012-08-27 19:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

6】~中略~このように複雑なものを簡単に説明するのはむずかしいが、源為憲『口遊(くちずさみ)』…を見るとその原則が理解しやすいので次に記そう。【大為尒伊天。奈徒武和礼遠曾。支美女須土。安佐利□(追?)比由久。也末之呂乃。宇知恵倍留。古良毛波保世与。衣不禰加計奴】

2012-08-27 20:28:06
山本七平bot @yamamoto7hei

7】これを表意文字として読んでも、何の意味もなさない。中国人に読ませたら「狂人の文章」というかも知れない。というのは、多少意味が通る「古良毛波保世与」でも「古き良き毛、波保ち世与う」の意味になってしまうからである。

2012-08-27 20:57:48
山本七平bot @yamamoto7hei

8】そこでまず前の源為憲の記した漢字の数を数えてみる。四十七文字。これはロドリーゲスが記している「かな」の数であり、同じ字が一つもないところから見ると、万葉がなで記した一種の「いろは歌」であることがわかる。

2012-08-27 21:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

9】~中略~この他にも様々な「いろは歌」があったらしいが、もし万葉がなと現代のかなとの関係が…すっきりしていたなら『古事記』の解読などはたいして難しい問題ではなかったであろう。ところが…一字一音に用いられた万葉がなの数は、記紀・万葉を通じて973字に達するという。

2012-08-27 21:57:51
山本七平bot @yamamoto7hei

10】いわば一音に幾通りもの漢字があてられているわけで、…「万葉仮名一覧」表を見ると、その複雑さに驚く。…なぜこのように複雑になったのであろうか。まずその期間が四百年にわたること、また『万葉集』では多く地方の歌も集められたこと、(続

2012-08-27 22:28:06
山本七平bot @yamamoto7hei

11】続>記紀ではおそらく、中国にならって同一の漢字の反復を避けたためなどの理由があると思われる。このような混乱がある上に、漢字をそのまま表意文字として用い、それが万葉がなと混在し、その上、音で読んだり訓で読んだりしているから、その複雑さは少々救いがたいという気がする。

2012-08-27 22:57:51
山本七平bot @yamamoto7hei

12】更にこれに漢文の引用がまじったり、また日本的な変な漢文が入ったりしているとまるで解読不能な暗号のようになる。…その複雑さは万葉の有名な歌を二首あげれば十分であろう。【春過而/夏来良之/白妙能/衣乾有/天之香米山】【春すぎて/夏来るらし/しろたえの/衣乾しおり/天の香具山】

2012-08-27 23:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

13】誰でも知っている持統天皇の歌である。この歌はそれを知る者には万葉がなだけを見て読んでもある程度は読める。しかし大伴旅人の「酒を讃むる歌十三首」の【痛醜/賢良乎為跡/酒不飲/人乎熨見者/猿二鴨似】になると、そういえば面白い歌があったなあ、とは思っても、なかなか(続

2012-08-27 23:57:50
山本七平bot @yamamoto7hei

14】続>【あな醜(みにく)/賢(さか)しらをすと/酒飲まぬ/人をよく見ば/猿にかも似る】とはなかなか出てこない。この場合「酒不飲」はいうまでもなく漢文である。

2012-08-28 01:41:15
山本七平bot @yamamoto7hei

15】まことに混沌とした感じだが、これは自分の心の中にある歌を、何とかして、その当時の日本の周辺世界にあった唯一の文字で書き表わそうという苦闘の結果だった。日本語が中国語だったら、だれもこんな苦労はしない。

2012-08-28 03:54:09
山本七平bot @yamamoto7hei

16】そこにあった苦闘は、漢字に圧倒されて日本語を殺すか、漢字を手なずけて日本語の文字にしてしまうかという苦闘だった。そしてもしそれができなければ最初に生命を失うのは詩と歌だったはずである。和歌を漢文にすれば死んでしまう、それはもう歌ではない。

2012-08-28 04:45:56
山本七平bot @yamamoto7hei

17】~中略~万葉がなが「いろは歌」のような形で『かな』として成立すると、日本人は、百花燎乱ともいいたい古典文学の世界を生み出した。『古事記』、『万葉集』、『源氏物語』、『古今和歌集』、『平家物語』といった著名な作品だけでなく、(続

2012-08-28 05:28:11
山本七平bot @yamamoto7hei

18】続>ドナルド・キーン博士が『日本人の日記』の中で取り上げた膨大な日記文学にいたるまで、そこには、自国語を漢文の拘束から解放し、自由自在に自国の文字で語っていける喜びと豊饒さが現われている。

2012-08-28 05:57:51
山本七平bot @yamamoto7hei

19】私は韓国にこの様な自国語の古典文学がない事を知った時、一種の衝撃を感じた。もっとも『三代記』という『万葉集』のような歌集があったらしいが、それは失われ、はるか後代の十二、三世紀の『三国遺事』の中にその一部が漢字で集録されている事を知った時、一体なぜその様になったのか、(続

2012-08-28 06:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

20】続>小林秀雄が『本居宣長』の中で記しているように「文化の中枢が漢文で圧死させられた」のか、との何ともいえぬ不思議な感じに打たれた。「万葉集という歌集はとにかく我々が無条件に楽しめる文化遺産である」(岩波版日本古典文学大系「解説」の冒頭)といえる遺産をもつ我々は幸福である。

2012-08-28 06:57:49
山本七平bot @yamamoto7hei

21】万葉は今も生きつづけている。…だが、この『万葉集』が成立していく四百年間こそ、同時に日本国家の基礎が確立して行った時期であった。日本は自らの文字を創出しつつ、自らの文学と国家を創作していったわけである。

2012-08-28 08:28:21
山本七平bot @yamamoto7hei

22】この点でも日本人は、相も変わらぬ駆け足民族である。自らの文字を造ると、いきなりその文字で自らの言葉の自らの文学を創作した民族は珍しい。自らの文学を創作するにあたって、ローマ人は長い間ギリシア語を用い、ヨーロッパ人は長い間ラテン語を用いても、自国語は用いなかった。

2012-08-28 08:57:54
山本七平bot @yamamoto7hei

23】この点では、自国の文学をあくまで漢文で記そうとした韓国人の方が普通なのかもしれない。李朝の世宗がハングルを造ったのは1443年すなわち足利時代だが、ハングル文学の出現は17世紀といわれる。

2012-08-28 09:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

24】「かな」ができても日本人は漢文を捨てたわけではない。漢文は中国及びその周辺民族にとって一種のエスペラントであった。…いわば日本人は「かな」による自国語の世界に生きつつ、同時に漢字という当時の東アジアの「世界文学」につながって生きていた。~後略

2012-08-28 09:57:50

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?