味噌作りで活躍する微生物の働き by タケヤみそ 【麹→酵素、酵母、乳酸菌】

弊社に入社した社員は、当然みその基礎を学ばなければなりません。みその発酵メカニズムも学ぶことになるわけですが、そこで非常に面食らう(わかりにくい)話を聞くことになります。
2012-07-02 12:48:52
それは「コウジ菌が生産したコウソによって糖やアミノ酸ができ、それをコウボが発酵してみその香りが生まれる」というお話。カタカナ部分は順に、麹、酵素、酵母なのですが、発音が非常に近いので聞いているだけだとわかりにくいのです。
2012-07-02 12:49:45
ちなみに生き物なのは麹菌と酵母。酵素はたんぱく質で、生物ではありません。ちなみに弊社は「酵素が生きている生みそ」を販売していますが、酵素は生物ではないので、正確に言うと誤解を招く表現かもしれません。このあたりの話もおいおいしていきたいと思いますが。
2012-07-02 12:50:30
リクエストもありましたので、微生物のお話をこれからしたいと思います。最初は麹菌の話から。この麹がないと、みそはもとより、醤油も日本酒も作れません。まさに日本の食生活を支えているのが麹菌で、2006年には「国菌」に認定されています。日本を代表する菌ということですね。
2012-07-02 12:51:08
麹菌は学問的にいうとコウジカビというカビ類になります。カビなので、種子ではなく胞子で増殖します。私たちみそメーカーは麹菌の胞子を購入して麹を作るわけですが、この胞子のことを通称「モヤシ」と言います。
2012-07-03 18:14:44
後で説明する酵母や乳酸菌などは自社で作っているみそメーカーもあります(タケヤみそも自社培養しています)が、麹菌の胞子=モヤシを自社製造しているみそメーカーはほとんどありません。モヤシを作るには専門技術が必要なので、専門のメーカー(通称「モヤシ屋さん」)から購入します。
2012-07-03 18:15:20
農大を舞台として、菌類が見える主人公が登場する石川雅之さんの漫画は『もやしもん』というタイトルですが、これも(八百屋さんで売っているモヤシではなく)麹菌の胞子のモヤシに由来しているのではないかと思います。
2012-07-03 18:15:54
漫画『もやしもん』の菌類代表も、やっぱり日本の国菌・麹菌です。菌の「顔」の周りに5本付いている、球が連なったようなものが胞子を表しています。参考画像はこちら。http://t.co/ZKUPlPWM
2012-07-03 18:16:46
昨日は漫画『もやしもん』の主役、麹菌の画像(イラスト)をご紹介しましたが、こちらが本物の麹菌の顕微鏡写真です。いかにも微生物らしい画像になっております。 http://t.co/rfriEsY8
2012-07-04 12:27:39
顕微鏡写真だとよくわからないので、模式図にしたのがこちら。『もやしもん』の麹菌とよく似た絵になっています。(出所)全国味噌技術会『みそ技術ハンドブック』1995年、p.45。 http://t.co/fhQJ9eS9
2012-07-04 12:28:52
先ほどの画像の下にA.oryzaeと書いてありますが、これは麹菌の学名Aspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼー)の略記です。麹菌の菌体自体は白い(ので、できた麹も白い)のですが、胞子は黄色から緑色をしており、みそメーカーが買う麹菌も緑がかった色をしています。
2012-07-04 12:29:43
@cowonetigers 感想ありがとうございます。なぜ「モヤシ」と呼ぶかについては、まさにモヤシ屋さんのホームページに詳しく書いてあります。『もやしもん』についても触れられています。http://t.co/SAlRtTQ8
2012-07-04 12:40:06
さて、それではみそ工場で行われている麹づくりの話に入ります。麹にする穀物はいろいろありますが、信州みその場合は米を麹にするので、水に浸した米を蒸すことから作業が始まります。簡単に言うと「おこわ」を作るわけです(「ごはん」ではありません)。
2012-07-06 15:09:12
麹にするのに適した米の状態を「外硬内軟(がいこうないなん)」と言います。米の表面は硬いが、中心はきちんと火が通って軟らかくなっていること。米を直接煮てしまう(=ごはんを炊く)と、外も軟らかくなってしまうので麹には向かないのです。
2012-07-06 15:10:04
米がきちんと蒸せたかどうかのチェック方法として職人がやるのが、蒸米を「ひねり餅」にすること。蒸した米を手のひらで潰し、芯が残っていないかを確認するのです。その後、蒸した米を35℃程度に冷却し、いよいよ麹菌(モヤシ)が登場します。
2012-07-06 15:11:21
蒸米に麹菌を付けることを「種付け」と言いますが、大量生産の場合は専用の「種付機」で均一に麹菌を付けます。一方、手作りの場合には冷ました米に手作業で一粒一粒麹菌を付けていくことになります。
2012-07-06 15:11:59
こちらが手作業による「種付け」の様子。米にまんべんなく麹菌を付けなければいけないので大変な作業ですが、苦労した分、質の良い麹ができます。 http://t.co/GxvCgXoz
2012-07-06 15:12:44
@ike_nao_twitte ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通りです。麹菌は「菌類の中では主役級」と気をつけていたつもりなのですが、つい書いてしまいました。また、『えほん もやしもん』については知りませんでした。ぜひ入手したいと思います。ありがとうございました。
2012-07-06 15:14:44
麹づくりのお話の続きです。麹菌が付けられた米は、製麹室に搬入されます(これを「引込み」と言います)。種付けの4時間後くらいから麹菌は発芽し、徐々に成長していきます。
2012-07-09 16:19:11
麹菌は成長するに伴って熱を出し、約18時間後(だいたい蒸米作業をした翌日の朝)には40度以上になります。このまま放置すると麹菌は自分の出した熱で弱ってしまいます。なので、米をほぐして空気に触れさせ、熱を下げてやる必要があります。
2012-07-09 16:20:03
その後も麹菌の成長は続くので、その後の24時間に3回程度、熱を冷ます作業が必要になります(テレビなどで麹づくりの様子が紹介されるときは、だいたいこの作業が放映されます)。そして蒸米作業をした日から数えると、3日目の朝にようやく麹ができあがる、という流れになります。
2012-07-09 16:21:16
機械による麹づくりであれば、コンピュータで温度管理をし、麹が設定温度になったら自動的に冷ましてくれるので、人間は楽です。しかし手づくりで麹を作る場合には、麹の様子を見て温度を測りながら、適切な時期に冷ましてやらなければなりません。
2012-07-09 16:24:13
例えば、麹菌が必ず夕方5時に高温になる、と決まっていれば楽なのですが、麹の温度経過はそのときの環境によって様々に変化します。「オレにも都合がある。まだ温度はそれほど上がっていないけど、もう家に帰りたいから冷ましてしまえ」と、温度が上がりきらないのに冷ましたりすると・・・
2012-07-09 16:27:12
そういうことをすると、やはり麹の出来は悪くなります。麹菌が「冷ましてほしい」と思っているときに冷ましてやらないといい麹はできない。これが微生物管理の難しいところです。
2012-07-09 16:28:11
@wikiTORORO ご質問ありがとうございます。実際に冷たい空気を送って麹の温度を下げます。狭い製麹室の中でやることなので、エアコンというのとは少し異なりますが、原理的には同じです。
2012-07-09 16:31:01