火車

怪奇の種の小泉より、2話目の『火車』で御座います。
4
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

今からする話は、私が小学生の頃に祖母を亡くした時の話だ。 お婆ちゃん子だった私は、大変悲しくてずっと祖母の棺の前で泣きじゃくっていた。

2012-08-29 01:30:04
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

それを見かねた母から「お前がずっと泣いていたら、お婆ちゃんも心配で天国に行けなくなってしまうから、きちんと見送ってあげましょう。」 などと宥められていたのだが、一向に泣き止む事が出来なかった。

2012-08-29 01:30:25
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

しばらくして泣き止んだ私に、母は 「これから、通夜や葬儀の事で親戚の方のところに行ってくるから、お前はお婆ちゃんの側で留守番をしておいておくれ。」 と言い、私も祖母の側から離れたくなかったので解ったと頷いた。 母が家を出る前に、私にこんな事を言った。

2012-08-29 01:31:02
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

「そうそう、留守番をしている間は家の電気をつけっぱなしにしておいてね。特に、お婆ちゃん部屋の灯りは絶対に消しては駄目よ。」 疑問に思った私は「それは解ったけども、どうして?」と尋ねた。

2012-08-29 01:32:47
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

すると母は「灯りを消してしまうと火車と言う妖怪が来て、お婆ちゃんを連れ去って行ってしまうからよ。」と話すのだ。 子供だった私は母の言葉を信じきっており、「解った絶対に灯りは消さないよ!」と、返事をした。

2012-08-29 01:34:18
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

母が出かけて、私は一人家の中で祖母の棺の側にいた。 その時である、家の呼び鈴が鳴ったので玄関の方へ向かった。 玄関の内側から誰なのか尋ねてみると、「葬儀会社の者ですが~。」と返事がきた。

2012-08-29 01:34:54
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

私はまた「今は父と母が居ないので開けられません。また後で来てください。」と返事をした。 すると、私の返事を聞いているのかいないのか、玄関の外にいる人物は「灯りを消してくれないと、中に入れないんですよね~。」と言ってきたので、私は母の話を思い出し、背筋が凍りつきそうになった。

2012-08-29 01:37:03
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

私が「今は父も母も居ませんので、また後で来てもらえますか?」と返すと、玄関の外から「すみません~。葬儀会社の者ですが、お婆さんの遺体を預かりに来たので開けて貰えませんか~。」と言ってきた。

2012-08-29 01:35:16
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

何度も帰ってくれと言っても、玄関の外にいる人物は「灯りを消してくれませんか~?」とずっと言ってくるので怖くなり、祖母の棺が置いてある部屋まで走って逃げた

2012-08-29 01:38:24
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

すると今度は、家の中から「灯りを消してくれませんか~?」という声が聞こえてきた。 恐る恐る襖を開けて様子を伺ってみると、玄関の灯りが消えていた。 すると、もう一度「灯りを消してくれませんか~?」という声がして廊下の灯りが消えた。

2012-08-29 01:38:57
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

その声は灯りを消しながら、私のいる部屋へと、どんどん近づいて来ていた。私は恐ろしくなり、すぐ部屋の襖を閉めた。すると、襖のすぐ向こうから「灯りを消してくれませんか~? 中に入りたいんですけども…。」と、こちらに声をかけてきた。

2012-08-29 01:40:37
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

それと同時に、部屋の電気がチカチカと点滅し始めて、もう駄目だと思った瞬間。 「出て行け!!」と凄まじい怒鳴り声が家中に響いた。 気が付くと、点滅していた蛍光灯も元通りに部屋を照らしており、廊下や玄関の灯りも何事もなくその場を照らしていた。

2012-08-29 01:41:27
小泉怪奇@怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

呆然としつつも、どこかで聞いた事のある声だと考えていると、ハッとした。 あれは去年亡くなった祖父の声だったのではないか、と頭をよぎったのだ。 あの時、祖父は祖母を守るためにココに来ていたのでは無いのかと、今でも思っている。

2012-08-29 01:42:02