【あやかし草紙】まとめ 2012年長月/神無月

タグ #あやかし草紙 #妖草紙 のまとめ、9月、10月分。
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@sktkx

お天気雨は狐の嫁入りとも言うらしい。ならば、狐が見えるだろうか。半分狐の和泉は外へ飛び出した。母は妖狐だったが人の姿を解いたことはなかった。時折耳や尻尾が出る和泉は、母と同じ妖狐を見てみたかった。遠目でいいから自分の半分を確認したかった。 #書き出し #妖草紙 #twnovel

2012-09-02 20:39:53
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

お天気雨は狐の嫁入りとも言うらしい。ならば、思いきって…!「私と夫婦になれ!」妖狐のプロポーズ(?)に思わず飲んでいたお茶を吹き出す。「いきなり何を言い出すんだよ!お前は!」「ずっと一緒にいたいと思うのは当然のことだろ?」「…僕ら、同棲してるでしょ」 #妖草紙 #書き出し

2012-09-02 21:06:24
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

もう少しで秋がやってくる。数日前の暑さが嘘のようだ。稲穂を揺らして渡る風が涼しい。「…早く"あの人"来ないかな〜」田んぼの真ん中に少年がひとり立っている。「…約束したんだ。また会おうって…」思わず隠していた狸の耳としっぽが出てくる。 #一文 #妖草紙

2012-09-05 21:19:52
@sktkx

永の生よりあなたとともに死ぬる夢見た夜明け前 #都々逸 #妖草紙

2012-09-12 12:50:05
@sktkx

桜の下で消え入りそうに笑うあなたに届かない #都々逸 #妖草紙

2012-09-12 12:51:33
@sktkx

俺に預けた涙にかけて お前を守る いつまでも #都々逸 #妖草紙

2012-09-12 12:54:11
@sktkx

雪兎といっても雪でできたものではない。雪女と同じで冷気を操る兎を雪兎と称する。妖狐は部屋の隅にいつの間にか入り込んでいた雪兎を見つけて首根っこを掴んだ。「部屋が冷える」雪兎は雪の兎そっくりの愛らしさで妖狐を見つめた。「けちくさいなあ」「言葉を選べよ」 #twnovel #妖草紙

2012-09-13 12:49:20
@sktkx

「可愛い外見に生まれたからって、ずっとかわいこぶってたら疲れんだっつうの」「柄悪いぞ。まあ、営業だと思って頑張れ」妖狐は苦笑すると、ぽい、と外に放り出す。「可愛い奴が大半なのに、何でうちに来るのはあんなのなんだ?」自分の面倒見は棚にあげてぼやいた。 #twnovel #妖草紙

2012-09-13 12:55:47
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

「来ないかな〜あの人…」狸の尻尾が揺れている。「会いたいよう…」今日も田んぼの真ん中で、少年の姿に化けた狸は誰かを待っていた。「…いつになったらあの人に会えるの…」知らないうちに涙が流れ落ちる。 #一文 #妖草紙

2012-09-15 22:49:06
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

「…お腹、空いたな…」草むらで狸がグッタリしていた。「…なんか気配すると思ったら狸か」狸の目の前に旅人が現れた。「食べる?」「…」旅人がくれたおにぎりを狸は美味しそうに食べる。「もう一個食べる?」狸は首を振る。おにぎりをひとつもらえば、それで満足。(ありがとう) #一文 #妖草紙

2012-09-17 21:18:11
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

@3zaru (ねぇ…いつになったら貴方に会えるの…?)狸は泣いていた。(俺…ずっとここで待ってるよ?)寂しくて悲しくて…。(会いたい…会いたいよう…)涙が止まらない…。("約束"したんだ。ここで会おうって…) #twnovel #妖草紙

2012-09-18 01:06:30
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

@3zaru 狸はそっと旅人の後ろをつける。気づかれないようにそっと…。「…また付けてきちゃったか」苦笑しながら旅人は振り返る。(…また気づかれた)「…ただの狸じゃないなとは思ってたけど」狸の頭に撫でる。 #twnovel #妖草紙

2012-09-18 01:49:38
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

狸は星空を眺めていた。人は死んだら星になるって聞いたから…。(あの人のは…どの辺にあるんだろ…)脳裏にあの人の笑顔が浮かぶ。もし願いが叶うなら…貴方の名前を…「もう一度、呼んでもいいですか?」そしたら…きっと貴方は、振り返って…。「…もっと、側にいたかった…」 #一文 #妖草紙

2012-09-20 20:04:06
@sktkx

それは誘う。ゆったりと目の前で動くとついぱくりとしてしまうのは、犬神の性というより狩りをする本能のせいであって、正しく反応しているのだから責めるのは筋違いだ。「僕の尻尾に噛みつかないでってば!」「目の前で揺らすのが悪い」 #猫又と犬神 #妖草紙

2012-09-20 20:12:17
@sktkx

「がんこ犬!」「・・・馬鹿猫」毛を逆立ててにらみあう子供たちの背後で、それぞれの尻尾がぶわりと太くなって揺れている。「今日はなんのケンカだ?」あきれて口を挟んだ妖狐に二匹は一斉に叫んだ「僕の大福を!」「俺の煎餅を」そしてまた、取っ組み合いが始まる。 #猫又と犬神 #妖草紙

2012-09-21 06:52:40
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

まだ、雪がちらつく筈はなかった。雪のような白い花びらが宙を舞う。あの人と見た時は幻想的でとても綺麗だった。今これを見てるのは…。「綺麗なのだ」「数百年間生きてるけど初めて見た」「まるで本物の雪みてぇ」「…優美だな」自分と妖狐達だけ。 #書き出し #妖草紙

2012-09-22 02:06:34
@sktkx

#妖草紙 「小さな猫の姿にこだわって、それで主の役に立つのか?」怒りをにじませて自分をにらみつける鴉を、九夜月はいつも通りの無表情で見返した。鴉は人の形をとっている。その気になれば翼を生やして空も飛ぶ。「何故主はこのような役立たずを飼うておるのか」「確かにな」 #九夜月

2012-09-25 12:45:49
@sktkx

#妖草紙 「馬鹿にしておるのか!」激昂する鴉に、九夜月は尻尾を揺らして見せた。「人にはならぬ。妖力もたいしてない猫又を飼う意味などわからん。聞きたくば主に聞け」それきり九夜月は目を閉じて黙る。そしてこっそりとため息をついた。理由などこちらが聞きたいくらいなのだ。 #九夜月

2012-09-25 12:54:32
@sktkx

秋風に吹かれ、日毎に輝きを増す月を見上げる。満ちていくにつれて体にその光が流れ込むようで、伸ばしたいと願えば前肢は人の手に、体は人の形に変じた。生来、あやかしは孤独なもの。なにかに焦がれるならば人であれということか。月に焦がれ、寂しさを知る、秋。 #妖草紙 #twnovel

2012-09-28 17:11:51
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

観覧車が月に近づくと、月姫は言った。「ここでキスして。月にいるお父様とお母様に見せびらかしてやるのよ」そんな月姫に烏天狗は不敵な笑みを浮かべる。「悪りーな嬢ちゃん、俺はガキに興味はねーんだ。十年経ったらまだ来な」幼い月姫はキョトンとした。 #書き出し #妖草紙

2012-09-28 23:07:29
@sktkx

風のせいで耳がうるさい。雨のせいで鼻がきかない。暴れる雨師、風伯に呼応して、あやかしたちがざわついて、落ち着かない。「あれ、犬神の旦那。どうしたんですかい?」ずぶ濡れで現れた俺に烏天狗が目を丸くした。「嵐で血が騒ぐ。付き合え」一升瓶を置くと苦笑された。 #twnovel #妖草紙

2012-09-30 16:45:12
@sktkx

「今夜は一晩付き合え」一升瓶を持ち込んだ俺に、天狗は笑って酒をつぐ。普段は奴ばかり飲みに誘ってくるから、俺が誘ったのが嬉しかったとみえる。烏天狗は苦笑して、それでも酒肴を用意してくれたが、天狗に飲まされて寝てしまった。憂さ晴らしに付き合わせてすまん。 #twnovel #妖草紙

2012-09-30 21:17:08
@sktkx

神社の中で、二匹の狐が笑ってる。「またニンゲンが来た」「ヌシ様居ないのに」クスクス笑う狐たち。賽銭投げて、がらんがらんと大きな音をたてたって、神様に聞こえはしないのに。ぽろんと社にお願いの結び文。それを拾って箱にしまう。今は神無月。神様はお出掛け中。 #twnovel #妖草紙

2012-10-03 17:13:12
神威 鴉魔@テラー民🫠 @crow0404

河童が川の淵で文句を言っていた。烏天狗が訳を聞くとどうも川に不法投棄する輩がいるらしい。「全くあとが絶たねーんだよ」辺りを見回せばゴミの山。「そりゃ元の持ち主に返さないとな」 翌日とある工場はゴミの山に埋もれ騒ぎになっていた。 #twnovel #妖草紙

2012-10-27 18:20:31