尊属殺重罰規定違憲判決と適用違憲 by たけるさん

まとめました。
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shoya @sho_ya

批判はあるかもしれませんし,「好きな判例」というと語弊があるかもしれませんが,私の場合,高1の授業で教えていただいたこの判決です。 / 最高裁大法廷判決昭48年4月4日刑集27巻3号265頁 http://t.co/w4afWpwO #好きな判例

2012-09-04 23:25:31
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

尊属殺人重罰規定違憲無効判決だね。この判決は、尊属殺人は普通殺人よりも高度の社会的道義的批難を受けるべきだから、立法目的は不合理ではないとしたけど、減軽によっても執行猶予がつけられないという手段の強さが均衡性を欠くとして、憲法14条1項に違反するとしたんだよね。

2012-09-04 23:56:27
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

それで、田中裁判官ほかの意見では、尊属殺人に関する規定を設け、差別的取扱いを認めること自体が違憲であるとしたのまでは有名だね。さらにマニアックなお話だと、田中裁判官は、多数違憲のロジックでは、法令違憲ではなく、憲法36条の残虐刑禁止に反する適用違憲にすべきと述べてるんだよね。

2012-09-05 00:01:16
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

これ、じつはかなり難しい議論なのよ。要するに、尊属の尊重という立法目的が不合理でないなら、区別があるのは当たり前でしょ。「親殺しはけしからんので執行猶予がなくとも不合理でない」という一般論があるのよね。ただ、執行猶予をつけないと酷な事案の場合、手段の均衡性を欠くことになるだけ。

2012-09-05 00:05:47
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

つまり、一般論から言えば、執行猶予つけないと酷な事案なんて少ないんだから、尊属殺人重罰規定は大部分で合憲のはず。執行猶予つけないと酷な稀な事案は、むしろそのような刑法の適用が、憲法36条の残虐刑に当たり、適用違憲第三類型で処理すればいい。

2012-09-05 00:07:54
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

だから、田中裁判官からすれば、多数意見のように目的は合憲というロジックによると、手段が「法令全体で違憲」というのは無理がある。できても適用違憲。法令違憲にするなら、私のように目的違憲とするべきだ、という主張なのですね。

2012-09-05 00:10:13
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

まぁ、田中裁判官意見は、「残虐な刑罰」を量的な問題とする点で、ちょっと賛同しかねるのよね。「残虐」ってのは、執行方法すなわち質的な問題だと思うのよね。ま、憲法14条1項の適用違憲なら、理解できなくもない。そもそも、適用審査優先なら、そうするべきだったのにね。

2012-09-05 00:12:53
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

まぁ、憲法14条1項を主観的権利ではなく、客観原則だから、適用審査優先ではないとか、違憲の理由が法令そのものに存在するからとか、法令違憲でもよいと考えることもできるのよね。

2012-09-05 00:14:03
もしもし @moshimo_sic

@itotakeru お伺いしたいんですが、適用違憲との見解は、「平等権審査は端的に区別の合理性を問題にするべき」という議論と重なるのでしょうか。つまり、目的が合理的であれば法令としては合憲だが、具体的場面において必要性相当性を欠くようであれば適用違憲で処理するということですか?

2012-09-08 05:35:44
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

@moshimo_sic 遅れてごめんね。鋭い指摘で回答に困ってて笑。もしかしたら重なるかもしれないね。田中意見は、典型的な適用審査優先原則を採用してるから、法令違憲となるのは、①目的違憲、②手段が全適用事例で違憲、③過度の広汎性、不明確性の法理が妥当するケース等に限定される。

2012-09-13 01:38:43
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

@moshimo_sic 本件は、①目的が合憲であるし、②尊属殺人の典型的な事案では手段の相当性を欠かないし、③の法理の適用場面でもないから、適用違憲となる。で、適用審査だからこそ、比較の対象を具体的に定められるんだろうね。本件事案と本件類似の尊属殺人でない架空事案との比較だね。

2012-09-13 01:41:26
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

@moshimo_sic 端的に区別の合理性が問題なんだけど「何と何とを比較するか」が難しい。適用審査優先原則だと、そこまで細かくできるんだけどね。対する多数意見は、尊属殺人と普通殺人という抽象的な比較しかしてないのよね。これは、適用審査優先原則ではないからかもしれない。

2012-09-13 01:43:28
弁護士社長 伊藤たける|憲法マニア|法律事務所Z@寿司といえば富山! @itotakeru

@moshimo_sic 小難しい議論をしちゃったけど、君の感じてる疑問は極めて鋭いもので、本当に考えさせられたね。この議論を続けたいから、僕の議論はさておき、もう少し何が気になるか突っ込んでみて欲しいな。

2012-09-13 01:44:58
もしもし @moshimo_sic

たけるさんに尊属殺違憲判決における適用違憲の手法による解決の可能性について聞いてみたところ、丁寧に御返事をいただいたのでリツイート。

2012-09-13 11:13:34