宮沢賢治『なめとこ山の熊』(彦一彦:画 ベネッセ)

「人間」と「熊」の善悪を超えた哀しい<いのち>の物語を読んでいきます。
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クマの『論点』 #みんくま草 @greenminkuma

宮沢賢治『なめとこ山の熊』(彦一彦:画 ベネッセ)

2012-09-10 11:05:43
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”なめとこ山(注1)の熊のことならおもしろい。なめとこ山は大きな山だ。淵沢川はなめとこ山から出て来る。なめとこ山は一年のうち大ていの日はつめたい霧か雲を吸ったり吐いたりしている。まわりもみんな青黒いなまこや海坊主のような山だ。山のなかごろに大きな洞穴(ほらあな)が:続

2012-09-10 11:07:22
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がらんとあいている。そこから淵沢川がいきなり三百尺ぐらいの滝になってひのきやいたや(注2)のしげみの中をごうと落ちて来る。”:宮沢賢治『なめとこ山の熊』(彦一彦:画 ベネッセ):続

2012-09-10 11:07:37
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(注1)ナメトコ山(ナメトコやま)は、岩手県花巻市の西方、岩手郡雫石町との境にある奥羽山脈に属する標高860mの山である。宮沢賢治の『なめとこ山の熊』に描かれる「なめとこ山」をめぐって調査が進められた結果、明治初期の「岩手県管轄地誌」に「那米床山」「ナメトコ山」という記述が:続

2012-09-10 11:08:34
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あることがわかり、同山が実在のもので位置が特定されたため、宮沢賢治の生誕100周年である1996年を機に国土地理院が2万5千分1地形図「須賀倉山(秋田)」に山の名を記した。(Wikipedia)

2012-09-10 11:08:45
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(注2)いたや:「イタヤカエデ(板宿楓)のこと。カエデ科カエデ属の落葉高木。・・堅くて粘りがあるため、加工は困難ではあるが仕上がりは絹糸光沢がある美しい物となる。曲木にも使われる。:続

2012-09-10 11:09:23
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家具材、内装材として使われ、美しい縮杢や鳥眼杢が現れるものは工芸材料としても珍重される。」(kotobank.jpより)

2012-09-10 11:09:39
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「山」(森)があり、「洞穴」があり、「川」がある。そして川は「海」に帰って行く。そんな自然環境の中の、「人間」と「熊」の善悪を超えた哀しい<いのち>の物語。彦一彦さんの画が、ワイルドな迫力があっていい。しばらく(気まぐれに)この物語を読んで行く。(自分のあだ名の由来でもある・・)

2012-09-10 11:10:03
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続:”中山街道(注3)はこのごろは誰も歩かないから蕗やいたどり(注4)がいっぱに生えたり牛が逃げて登らないように柵をみちにたてたりしているけれどもそこをがさがさ三里ばかり行くと向こうの方で風が山の頂を通っているような音がする。:続

2012-09-10 21:10:32
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(注3)中山街道:岩手県の花巻市と西和賀町沢内を結ぶ県道12号花巻・大曲はなまき・おおまがり線を、古くから中山街道(なかやまかいどう)と呼んでいました。/http://t.co/z5TC7f6O 昭和30年頃の花巻市湯口/http://t.co/uuKDEPuR

2012-09-10 21:13:44
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(注4)いたどり:自分の地域では、スカンポと呼んでいた。茎を折るとポコッと音が鳴り、食べると酸味がある。スッパイ+ポコッ=スカンポ?けっして美味しいものではなかったが、友達と一緒に食べることで(小学生の頃)、なんとなくいい気分になったのだと思う。

2012-09-10 21:14:16
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気をつけてそっちを見ると何だかわけのわからない白い細長いものが山をうごいて落ちてけむりを立てているのがわかる。それがなめとこ山の大空滝だ。そして昔はそのへんには熊がごちゃごちゃ居たそうだ。ほんとうはなめとこ山も熊の胆(い)(注5)も私は自分で見たのではない。:続

2012-09-10 21:15:34
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人から聞いたり考えたりしたことばかりだ。間ちがっているかも知れないけれど私はそう思うのだ。とにかくなめとこ山の熊の胆(い)は名高いものになっている。 腹が痛いのにも利けば傷もなおる。鉛の湯(注3)の入口になめとこ山の熊の胆(い)ありという昔からの看板もかかっている。:続

2012-09-10 21:16:53
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だから熊はもうなめとこ山で赤い舌をべろべろ吐いて谷をわたったり熊の子供らがすもうをとっておしまいぽかぽか撲りあったりしていることはたしかだ。熊捕りの名人の淵沢小十郎がそれを片っぱしから捕ったのだ。” :宮沢賢治『なめとこ山の熊』(彦一彦:画 ベネッセ):続

2012-09-10 21:17:06
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(注5)「熊の胆(い)」:クマの胆嚢(たんのう)。古来より中国で用いられ、日本では飛鳥時代から利用されていた。健胃効果や利胆作用など消化器系全般の薬として用いられる。苦みが強い。・・北海道先住民のアイヌ民族にとってもヒグマから取れる熊胆や脂などは欠かせない薬であった。:続

2012-09-10 21:17:40
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倭人の支配下に置かれてからは、ヒグマが捕獲されると松前藩の役人が毛皮と熊胆に封印し、毛皮は武将の陣羽織となり、熊胆は内地に運ばれた。アイヌ民族に残るのは肉だけであった。(Wikipedia)それにしても、「なめとこ山の熊の胆(い)は名高いもの」だったんだ・・・

2012-09-10 21:18:11
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”淵沢小十郎はすがめの赭(あか)黒いごりごりしたおやじで胴は小さな臼くらいはあったし掌は北島の毘沙門さんの病気をなおすための手形くらい大きく厚かった。小十郎は夏なら菩提樹(マダ)の皮でこさえたけらを着てはんばきをはき”:続

2012-09-13 14:41:57
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生蕃(注6)の使うような山刀とポルトガル伝来というような大きな重い鉄砲をもってたくましい黄いろな犬をつれてなめとこ山からしどけ沢から三つ又からサッカイの山からマミ穴森から白沢からまるで縦横にあるいた。”:続

2012-09-13 14:42:33
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:宮沢賢治『なめとこ山の熊』(彦一彦:画 ベネッセ):続 (注6)1 中央の教化に従わない原住の人々。2 第二次大戦前の日本統治時代、台湾の高山族(高砂族(たかさごぞく))のうち、漢民族に同化していなかったものをさして用いた語。(goo辞書より)

2012-09-13 14:43:13
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”木がいっぱいはえているから谷を遡(のぼ)っているとまるで青黒いトンネルの中を行くようで時にはぱっと緑と黄金(きん)いろに明るくなることもあればそこら中が花が咲いたように日光がおちていることもある。そこを小十郎(こじゅうろう)が、まるで自分の座敷の中を歩いているという風で:続

2012-09-15 11:55:36
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”ゆっくりのっしのっしとやって行く。犬はさきに立って崖を横這いに走ったりざぶんと水にかけ込んだり淵ののろのろした気味の悪いところをもう一生けん命におよいでやっと向こうの岩にのぼるとからだをぶるぶるっとして毛をたてて水をふるい落しそれから鼻をしかめて主人のくるのを待っている。:続

2012-09-15 11:56:19
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”小十郎は膝から上にまるで屏風のような白い波をたてながらコンパスのように足を抜き差しして口をすこし曲げながらやってくる。そこであんまり一ぺんに言ってしまっては悪いけれどなめとこ山あたりの熊は小十郎が好きなのだ。その証拠には熊どもは小十郎がぼちゃぼちゃ谷をこいだり谷の岸の:続

2012-09-15 11:58:01
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”細い平ないっぱいにあざみなどの生えているとこを通るときはだまって高いところから見送っているのだ。木の上から両手で枝にとりついたり崖の上で膝をかかえて座ったりしておもしろそうに小十郎を見送っているのだ。:続

2012-09-15 11:58:34
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”まったく熊どもは小十郎の犬さえ好きなようだった。”:宮沢賢治『なめとこ山の熊』(彦一彦:画 ベネッセ):続 小十郎はどうしてこんなに熊たちに好かれていたのだろう?自分たちの熊の胆(い)が欲しいばっかりに、次々と自分たちの仲間を撃ち殺している小十郎が・。熊たちは何かを感じていた。

2012-09-15 12:02:41
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”小十郎はぴったり落ち着いて樹をたてにして立ちながら熊の月の輪めがけてズドンとやるのだった。すると森までががあっと叫んで熊はどたっと倒れ赤黒い血をどくどく吐き鼻をくんくん鳴らして死んでしまうのだった。小十郎は鉄砲を木にたてかけて注意深くそばへ寄って来てこういうのだった。”:続

2012-09-21 12:03:17
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