ニンジャスレイヤー第2部「キョート殺伐都市」エピローグ

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キョート:ヘル・オン・アース」エピローグ

2012-09-11 22:08:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

天守閣から城の地下・琥珀ニンジャ像の広間まで、真っ直ぐに竪穴が貫通している事は、皆さんがご存知の通りである。崩壊した天守閣の穴から滑り落ちたデスドレインは、真っ逆さまにこの竪穴を落ちて行った。 1

2012-09-11 22:15:52
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行き着く先、琥珀ニンジャ像の間は、既に少し前までの豪壮な面影既になく、アンコクトンによって蹂躙され、その床にはめちゃくちゃな亀裂と大穴が穿たれていた。デスドレインは真っすぐに落下した。やがて、城の底部、吸魂クリスタルの隙間から、地上へと墜ちて行った。 2

2012-09-11 22:18:51
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墜ちながら、デスドレインは巨大な浮遊キョート城を見上げた。彼の落下に従ってどんどん視界の中で小さくなる城は、分離したアンコクトンの竜巻めいた濁流に包まれつつあった。デスドレインは目を細めた。彼の身体には今なお、身体を繋ぎ止めるだけのアンコクトンが残存している。他を切って捨てた。3

2012-09-11 22:31:36
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「ざまァ見ろ」デスドレインは呟いた。「早く無くなっちまえ」黒い渦。不思議と今の彼の心の中には、焦りや怒りは無かった。「さすがに終わりかァ?しょうもねェな、ハ、ハ、ハ!」彼は墜ちて行った。墜ちて行った。咎。咎咎咎咎笑って死ねると思うなよ咎咎咎 4

2012-09-11 22:37:36
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……「冷てェ!」自らの叫びで彼は目を覚ました。「ンだァ、ここは」起き上がろうとした。そこで彼は己の両腕両足に繋がれた枷に気づいた。無骨で、錆が浮き、何か嫌な感じがする。鼻をひくつかせた。頭上に光が見える。ここはどこか洞窟じみた場所であり、遥か上の裂け目から空が覗いているのだ。5

2012-09-11 22:41:33
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「ナメたクチききやがって」デスドレインは唸った。己のニューロンをざわつかせる怨嗟の声は常に、はっきりと聴き取れぬざわめきに過ぎない。あのとき不意に、ざわめきはユニゾンとなって、呪詛を吐いた。「クソが」アンコクトンを染み出させるが、期待した量が生まれない。もっと殺さないとダメだ。6

2012-09-11 22:46:22
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どうする。誰だ。ここに繋ぎやがったのは。デスドレインは眼前の壁を睨んだ。断崖めいた壁に、消えかかった文字がある。「反省房」。……「反省?ナメんなよ……」「そう。反省です」凛とした声が響いた。デスドレインはそちらを睨んだ。不快な声だ。現れたのは、粥を手に持ったボンズだった。 7

2012-09-11 22:49:39
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「おォォ!」デスドレインは襲いかかろうとした。鎖がピンと張り、彼は跳ね返って後ろの岩壁に叩きつけられた。「グワーッ!」「ニンジャとなった直後、私はこのハンセイボウ・マウンテンに籠もり、己を律する修行をしました」若いボンズはよく通る声で言った。「その鎖に、自らを繋ぎ、ザゼンした」8

2012-09-11 22:56:02
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ボンズは粥をデスドレインの目の前に置こうとした。デスドレインは再び襲いかかった。「オォォ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」容赦なき正拳突きがデスドレインの顔面に叩き込まれた!背中から再び壁に激突!「グワーッ!」粥を片手に持ちながら、なんという打撃!ボンズは平然と椀を置いた。 9

2012-09-11 22:59:50
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「オゲーッ」デスドレインは口からアンコクトンを吐いた。椀の中の粥に黒い粘液がピシャリと被さり、汚染した。デスドレインはボンズを睨んだ。「反省だァ?」「反省です。それはジツを封じる鎖です」「反省です、じゃねェー!殺してェなら殺せ!楽しい人生だったぜ、アァ?」「ゆえに殺しません」10

2012-09-11 23:06:07
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ボンズは言った。「これは私に課せられた試練と考えています」「試練だァ!?てめェ、ふざけるなよ……おい!チンケな鎖だァ!とっとと引きちぎって、口から腕を押し込んで心臓を潰してやる!アア?それともテメェの内臓を鏡で見ながら死ぬか?絶対に許さねェ!」「私は絶対にやり遂げます」11

2012-09-11 23:15:37
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「オオォォォ!」デスドレインは再び飛びかかろうとした。ボンズの鼻を噛みちぎろうとした。「イヤーッ!」「グワーッ!?」ショートアッパーめいた拳が顎に叩き込まれ、デスドレインは仰け反った。「ボンジャン!イヤーッ!」さらに手加減無しのミドルキックが腹部に叩き込まれる!「グワーッ!」12

2012-09-11 23:20:17
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咎咎咎咎笑って死ねると思うなよ咎咎咎咎デスドレインは思い出そうとした、墜落直後、彼に襲いかかろうとした暴徒を殺してアンコクトンを養い、避難しようとする何組かの家族を殺し、そしてこのボンズと遭遇した、ボンズは名乗った……アコライト……「明日また来ます」彼は立ち上がった。 13

2012-09-11 23:27:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……時系列はロード消滅直後へと遡る。崩壊が始まったキョート城内で、IRC誘導を受けながらニンジャスレイヤーたちは合流地点へと急いでいた。そこにはナンシー・リー、ディプロマット、キンギョ屋が待つ。 15

2012-09-11 23:48:07
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「ホンマルを下っている」「そのまま直進、カドマツの十字路を右へ……」ニンジャ千年紀を描き出す荘厳な油絵が廊下に転がり、無残に踏みしだかれている横を、ニンジャスレイヤーたちは駆けた。どれが真実で、どれが嘘で塗り固められた紛い物なのか、もはや誰もそれを気に留める者はいなかった。 16

2012-09-11 23:55:22
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「遅いな」ディプロマットは頭痛を堪えるように言った。酷い冷汗だ。「ええ」ナンシーらは城内のヘリポートで整備資材の陰に隠れ、ニンジャスレイヤーたちの到着を待っていた。床が揺れ、ひび割れ、そこかしこが陥没している。崩壊が近い。ここがナンシーの導き出した、ベストな合流地点だった。 17

2012-09-12 00:08:57
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既に大半はザイバツニンジャを乗せて離陸したか、あるいは落下してきた天井によって砕かれた後だったが、幸いにも黒塗りの中型武装ヘリが無傷のまま一機残されていた。「来たわ」ナンシーは壁のLAN端子に直結していたケーブルを抜き、ゲートを見やる。直後、ニンジャスレイヤーたちが現れた。 18

2012-09-12 00:16:33
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「まったく、生きた心地がしねえ」キンギョ屋は立ち上がり、ナンシーや重傷のディプロマットとともに整備資材の陰から駆け出す。お互いを認めた彼らは、地下駐車場めいた構造のヘリポートを駆け抜け、中間地点にある中型武装ヘリへと向かった。その時、天井の大穴から不意に黒い濁流が溢れ出す。 19

2012-09-12 00:24:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

反応する暇は無かった。武装ヘリが直撃を受け羽がひしゃげる。「DAMN IT!」ナンシーが叫ぶ。他の穴からも大黒柱めいて暗黒物質が勢いよく溢れ出し、彼らを巨大な檻の如く囲んだ。自我無き災厄と化しキョート城を蝕むアンコクトンは、生存者たちの希望を嘲笑うかのように押し寄せてきた。 20

2012-09-12 00:31:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

満身創痍のニンジャスレイヤーも、その片腕に覚束ないナラクの炎を纏い振るった。松明で獣を追い払おうとするかのようにカラテを振りしぼったが、相手は津波のように無情であった。ディプロマットも半ば諦め、ニヒルな諦観の表情を浮かべる。……その時、エーリアスの髪が逆立ち赤色に変わった。 21

2012-09-12 00:40:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「辛気臭いんだよ!この便所野郎!」それは確かにイグナイトの声!ニンジャスレイヤーたちを取り巻くように、盛大な炎の円弧が描かれる!発火したアンコクトンは下卑た獣のように恐れおののき、燃焼部分を切り捨てて、床の亀裂から逃走していった。イグナイトはまた黒髪に戻り、へたりこんだ。 22

2012-09-12 00:46:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンコクトンは去った。城内の別な場所を蝕みに行ったのだろう。だが床の揺れは一層激しくなり、ナンシーやキンギョ屋は立っていることすらままならなくなった。「こいつぁもう、使い物になんねえぞ」ガンドーが玩具のように捻じ曲がってしまったヘリのローター部を見た。内部も汚染されている。 23

2012-09-12 00:51:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こうなるような気がしていた」ディプロマットが言った。その顔は悲壮感に満ち溢れ、ジツのための精神集中でさらに蒼白していた。何をしようとしているのか、全員が理解していた。ガスの切れかけたライターを擦るように、ポータル展開は四回続けて失敗し、五回目にようやく脱出路が開かれた。 24

2012-09-12 00:57:23