やくもさん(@yakumo_p)による司法試験における3つの『嘘っぽい』もの

平成24年度合格者のやくもさんによる司法試験の勉強法についてのツイートをまとめました
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八雲(やくも) @yakumo_p

一般的な事ならちょっとだけ。各所から反感買いそうだけど、私個人の感覚で、誰もに通用する話じゃないです。全般的にはこの三つに集約されるかなって1:たくさん書けば論文の実力がつくは嘘っぽい 2:権威ある教科書、みんな使う演習書が良いは嘘っぽい 3:択一やりまくると点上がるは嘘っぽい

2012-09-12 23:32:19
八雲(やくも) @yakumo_p

1:毎日沢山起案すると実力が上がるって話があるけれど、あれは文字通りの受け止め方をするならばおそらく嘘。「何度も書くうちに文がこなれ新しい発見がある」という点はその通りなんだけど、そもそも起案するために必要な基礎知識があることと、起案を見直す時間が潤沢にあることが前提。(続

2012-09-12 23:35:25
八雲(やくも) @yakumo_p

続)門前の小僧のように延々と書き続けても身につくのは言葉尻であって、中身の理解が伴っていないのであれば、その文書はどっかのコピーであって書き手のモノじゃない。特に知識のあやふやな早いうちから時間は買って答練し続けることは、「書けなかった」という事実を積み上げるだけのような。(続

2012-09-12 23:37:16
八雲(やくも) @yakumo_p

続き)起案することの意味は、思考を整理し、吐き出しと観直しを繰り返すことで、手にした知識を体系化・パターン化することにあるはず。だから、その効果がでる形であれば、毎日じゃなくてもいいし、制限時間なんてなくて初めはいい。変な話、教科書判例写しながらで全く問題ないと思う(1終わり

2012-09-12 23:40:44
八雲(やくも) @yakumo_p

2:権威ある教科書、みんな使う演習書が良いは嘘っぽい。というか多分嘘。権威のある教科書って、著者が研究を始めた頃には読み手は物心ついてなかった、あるいは生まれてなかったというものが結構ある。そのせいか、著者が感じてきた空気がわからなくて、若い読み手には難しいことがあるとおもう(続

2012-09-12 23:43:47
八雲(やくも) @yakumo_p

続き)そんなことない私は読めると言う人も沢山いると思う。でも本当に教科書の行間や、書かれている議論が生まれた理由・当時の気配を感じてられているだろうか。概念装置は社会を一定の角度で切り取るもの。だから、そもそも対象とした社会や装置設計者の意図を読み違えると全然違う結果が出る(続

2012-09-12 23:46:39
八雲(やくも) @yakumo_p

続き)だからこそ、概念装置を使う時には、作られた経緯や当初の目的を知ることが大切になるんだと思う。けれども、権威ある著者さんは当時の空気をそのまんま感じて当然の前提として文章を作ってしまう。だから、その文章には理論の前提となる「社会」についての記載がない。(続

2012-09-12 23:49:05
八雲(やくも) @yakumo_p

ちょっと余談)近年の基本書で前提を削っていた本としては山口刑法総論(補てい)とか。あれは、刑法理論のエッセンスだけ取り出すという意向でもあったのか、歴史的な記載があまりない。深い知識がないとよくわからない。おそらく当時の山口理論は使いにくいのではなく伝わりにくい代物なのだと思う。

2012-09-12 23:54:00
八雲(やくも) @yakumo_p

再び続き)背景の記載がない本を背景を知らない者が読むとどうなるか。正しく読める人は一握りで後は表面をなぞるか曲解する。その果てにあったのは記述を貼り付けただけの答案であって、応用の利かない妙な技術だった(経験)。これを避けるためには結局教科書の外の背景を集めなければいけない(続

2012-09-12 23:57:12
八雲(やくも) @yakumo_p

続き)法という概念装置を振り回すのが法学徒のお仕事だと思う。だから概念装置を知る必要があるし、知るために背景知識も求められる。けれど、作者の生きた時代と今の感覚は大概異なる。権威のある本はこの辺りに対応できない。だから、権威ある教科書は今を生きる私たちには不向きなんじゃないか(続

2012-09-13 00:03:01
八雲(やくも) @yakumo_p

続き)そういう理由があって、権威ある教科書はゴミとは言わないけれど(先行研究として価値が高い)、勉強には良い本じゃないと思う。初学者向けで背景知識も載ってる本の方がよっぽどいい。それが恥ずかしくて権威あるモノを使いたいなら、背景獲得のため法解釈学の外まで手を伸ばすべきなんだ(続

2012-09-13 00:06:37
八雲(やくも) @yakumo_p

続)権威ある教科書が良いは嘘って話がここまで。そして「皆が使う演習書が良い」が嘘だと思うのもほぼ同様の理由。権威ある教科書の話とちょっと違うのは、書き手と読み手の問題ではなく、読み手同士の落差が問題であることと、学生は皆同じレベルに到達したいと思っていることが問題になる点。(続

2012-09-13 00:14:34
八雲(やくも) @yakumo_p

続)実は法学部の学生には、「隣のあの子が『この本が良い』と紹介したことは、『この本があの子の知識レベルにあっていたこと』を示すにすぎないこと」、「隣のあの子は決して私ではないこと」の二点を忘れて、皆が良いという演習書を買い求める傾向があるような気がしてる(私も含め)。(続

2012-09-13 00:21:49
八雲(やくも) @yakumo_p

続)そういう疑問が湧いたのは、「「憲法上の権利」の作法」と「憲法の急所」がバカ売れしていたとき。(※二つが悪いとは言わないけれど)当時憲法が得意な友達がしきりに言っていたのは「ドイツ憲法の系譜を引く三段階審査を素地が違う日本で使うのが難しいのに何で売れる」という言葉だった(続

2012-09-13 00:25:02
八雲(やくも) @yakumo_p

続)私は憲法が苦手なのでよくわからないけれど、「作法」の取る三段階審査は、ドイツ憲法の発想が前提になるから「権利」として認められないものは切り捨てられるのに対し、日本の判例は「権利」とまで呼べない利益まで広く憲法上の議論の俎上に載せる発想に立っているはず(続

2012-09-13 00:27:36
八雲(やくも) @yakumo_p

続)判例と三段階審査が一致する箇所が仮にあるとすれば、それは定義付け衡量論が議論になるわいせつ概念のところとか、あるいは加持祈祷事件のようなケースなんじゃないかと思う。こういう理解を前提にすると、実は作法は判例との噛み合わせが良くない。というかそこにあるのは素朴な理論じゃない(続

2012-09-13 00:29:16
八雲(やくも) @yakumo_p

続)ところが、作法は憲法の答案作成法をプッシュした数少ない演習書だったのも相まって口づてに伝わっていったように思う。もちろん作法と日本の判例の距離感や関係性を自分なりに考えて使う分には何にも問題がない。変だったのは、そこを気にせず良書らしいから買う人がちまちまいたことだ(続

2012-09-13 00:32:32
八雲(やくも) @yakumo_p

続)そのちまちまいた学生(もちろん私にもそういう傾向がある。ミーハーだし)は、きっと噂に良い本で皆が使っていると聞いてなんとなく買って、なんとなく読み始める。けれど、そこで書かれている話は、憲法に詳しくないと実は良くわかんない話だったりする。そしてどんどん混迷に陥っていく。(続

2012-09-13 00:34:22
八雲(やくも) @yakumo_p

続)混迷に陥った学生がやることはおおよそ同じ。読むのをやめるか、歪曲するか、外側をなぞるか。立ち止まって考える(ある意味暇な)学生がほとんどであるなんて話はちょっと信用ならない。結局、ここでも権威ある教科書を使う時と同じ壁が出現してしまう(続

2012-09-13 00:36:10
八雲(やくも) @yakumo_p

続)私がそのとき反省したのは、自分の身の丈にあった本を探そうということ。皆が良いと言う本はわかりやすい事も多い(現に友達に薦められて買った本は良い本多いし)。だから相対的に当たりを引きやすいしその意味では本選びの参考になる。けれども、私にも良い本だとは誰も言ってない。(続

2012-09-13 00:39:25
八雲(やくも) @yakumo_p

続)だから、皆が持ってても必ず買う必要はないし、皆が良いと言うから良いわけでもない。それに、千差万別の学者がいるったって、極端に誤りだらけの演習書は早々ない。どんな本も似たようなことを言ってたりする。そういうわけで、皆が良いといった異に引きずられず演習書を探せばいいと思う。(2終

2012-09-13 00:44:01
八雲(やくも) @yakumo_p

最後に3.択一やりまくると点上がるは嘘っぽい。これは本試験前にしゃけさんとかが肢別捨てよう!って後輩に教えてるみたいな話をしてたと思うけど、私も嘘だと思う。択一やりまくっていれば自然と答えが覚えられるレベルっていうのは、今私が勉強してる仮免の試験みたいなことをいうのである(続

2012-09-13 00:45:36
八雲(やくも) @yakumo_p

続)そもそも、司法試験の択一は別に条件反射の検査とかアメリカ横断のための身体を張った○×クイズではなく、各法分野の基礎知識(読んでおくべき条文の意味、条文間の適用関係、事例解決の方法、法解釈論の基礎およびそれに伴う判例の理解)を尋ねているわけであって、暗記ゲームじゃない(続

2012-09-13 00:47:34
八雲(やくも) @yakumo_p

続)何度も見てれば自然に覚えることはある。未だに94条2項の第三者の話を覚えてるのは、学部の初めに聞いてから幾度も見かけたからだと思う。けれども、先に述べたように択一が確認したいのは理解、つまり当該条文が存在する意味、規律の目的、対象、方法についてを把握していることだろう(続

2012-09-13 00:49:46
八雲(やくも) @yakumo_p

続)何度も見てれば自然に覚えることはある。未だに94条2項の第三者の話を覚えてるのは、学部の初めに聞いてから幾度も見かけたからだと思う。けれども、先に述べたように択一が確認したいのは理解、つまり当該条文が存在する意味、規律の目的、対象、方法についてを把握していることだろう(続

2012-09-13 00:49:46