ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
2
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「こんなところで乱闘騒ぎか?うちの客に迷惑がかかっているぞ」スシシェフ装束の男は鼻下を白い覆面で覆い、凶悪な眼光をギラつかせている。白い覆面は一見、衛生マスクめいているが、それは偽装である。メンポ(面頬)だ。即ち、ニンジャである!フジキドは眉根を寄せた。ニンジャの……スシ屋!◆

2012-09-15 14:50:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター」 #2

2012-09-15 14:51:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは無雑作にバイカー・ボスを解放し、このスシシェフに向かい合う。不可視の稲妻めいて、二者の敵意が衝突した。バイカー・ボスは部下に抱えられるようにしてチョッパーバイクに跨り、這々の体で退散した。スシシェフが手の平に隠し持ったスリケンを懐に戻すのをフジキドは見逃さなかった。 1

2012-09-15 15:00:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フン」スシシェフのニンジャは走り去るバイクを冷たく見やった。あれ以上に自白を続けようとすれば、バイカー・ボスは口封じに放たれるスリケンで命を奪われた事だろう!「……ドーモ。メイヴェンです」スシシェフのニンジャはフジキドにアイサツした。互いをニンジャ存在と認識しての行動である。2

2012-09-15 15:17:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

いまや大勢の群衆がこの立会いを見守っている。「……ドーモ。イチロー・モリタです」フジキドはアイサツを返した。エーリアスが進み出た。「エーリアス・ディクタスです」「フン!」メイヴェンはより強く鼻で笑った。「偽名に、偽名か。胡乱のきわみ!」だが、メイヴェンからそれ以上の追求は無い。3

2012-09-15 15:24:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

仮にこの場で即座にニンジャ同士が互いに殺意を隠さず、カラテ戦闘を開始すれば、群衆は重篤な急性ニンジャ・リアリティ・ショックをまず間違いなく引き起こす。失禁、気絶、最悪死ぬ。これ以上の混乱はこのメイヴェンにとっても本意でないと見えた。 4

2012-09-15 15:27:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「社長!シャッチョ=サン?どうなさったんで?」ウェルシー・トロスシの中からサラリマンが現れ、メイヴェンとフジキドらを交互に見た。「店外で騒ぎだ、支店長。原因は向かいの店だ」「嫌ですねェー!営業妨害ですか?この期に及んで!」出っ歯支店長はセンスをパタパタと扇いだ。「ヨタモノ!」5

2012-09-15 15:36:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そりゃねえだろ!」エーリアスが人差し指を突きつけた。「こっちが平和にスシを食ってたら、今の連中が因縁つけてきたんだ!」「知りませんよそんな事は!」支店長は突っぱねた。「それはそっちの都合でしょッ!ダラダラ口答えするならマッポを呼びます!全く……おやおや」支店長が目を細めた。 6

2012-09-15 15:51:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ご本人の!お出ましだ!」支店長は唾棄めいて呟いた。フジキド達は振り返った。ワザ・スシの戸を引き開け、中から老店主が出て来た。「アンタ達。ちょっとやめないか」「やめてもらいたいのはこっちですよ」支店長が声を荒げた。「アンタのその営業妨害的な店舗経営をね!しばしば迷惑だ」7

2012-09-15 15:58:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」老店主はやや俯いた。支店長はセンスを威嚇的に開いたり閉じたりした。「ウチはね!実際安い反面、高級でオイシイなの!開店セールなの!今週いっぱい社長みずからスシを握ってるの!ウチが何店舗あると思ってるんです?その社長が直々に握る!事件ですよ?それをねぇ……」「店は畳まんぞ」8

2012-09-15 16:08:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あン?」「店は畳まん。もう沢山だ。腹が決まった」老店主は顔を上げた。老いた目には闘志の炎が燃えていた。「正直、これも時代の流れかと思うとったが……貴様らの有形無形の嫌がらせ!そんなものを理由に引退なぞ、まっぴらごめんだ!ここで引き下がるくらいなら、戦って死んでくれるわ!」 9

2012-09-15 16:17:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

インガオホー!「アイエ!」支店長は後ずさった。群衆が互いに言葉を交わす「何?どうなってるの?」「争いじゃない?」「あっちもスシ屋なワケ?」「……」メイヴェンは腕を組み、老店主を睨み据えた。惰弱な精神の持ち主であれば心折れ、失禁したであろう。だが老店主の闘志はもはや強固である。10

2012-09-15 16:23:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴様の経営など、どう転んでも半年保たん」メイヴェンは言った。「言っておくが我がウェルシー・トロスシをドンブリ・ポンのような安かろう悪かろうと混同しておるようなら、甘い。甘過ぎる。流通、技術、経営、圧倒的物量で叩き潰すだけだ」「フン!圧倒的物量とはさっきのヨタモノかね!」 11

2012-09-15 16:34:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは老店主を見やった。……彼のニンジャ洞察力は、老店主の勢いの後ろに隠された、ある種の絶望、負けイクサの予感を、残酷にも読み取らざるを得なかった。彼は状況判断した。メイヴェンによる「有形無形の嫌がらせ」は、単なるタイムイズマネー、より低コストな解決を狙っただけであろう。12

2012-09-15 16:54:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

闇雲に抵抗する事が、果たしてこの老店主の本当の利益になるのだろうか?だが、賽は投げられた。今更老店主は引き下がりもすまい。怒りと誇りが老店主を動かしている。その末路は……フジキドの脳裏に蘇ったのは、ゼンダという男が刑務所で語った身の上……その結末。彼が手にかけたニンジャ。 13

2012-09-15 17:05:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「たいした自信だ。メイヴェン= サン」フジキドは口を挟んだ。メイヴェンは目を細めた「自信?否。単なる事実」彼は腕組みしたまま答えた「冷徹な事実。オーバーウェルミングな超優良企業たる我が社が、泥縄経営の個人店に淡々と突きつける無味乾燥の事実に過ぎない」「ならば断らんな」「何?」14

2012-09-15 17:13:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは老店主を見た。「やりあうならば、これ以外に無し」「あんた」老店主は逡巡し、やがて頷いた。フジキドは群衆を見渡す。そしてメイヴェンを見た。「ワザ・スシはウェルシー・トロスシにスシ勝負を申し込む。当然断わらぬ筈!」「何だと」メイヴェンの声を、群衆のどよめきがかき消した。15

2012-09-15 17:21:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何を馬鹿な。我が社に何のメリットも無い」「皆!スシ勝負だぜ!」エーリアスが空気を読み、群衆を煽り立てた。「勝負だとよ!」「こいつはイベントめいてるぜ!」「俺たちもスシが食えるかな?」「いつやるんだ?」人々が思いがけぬ突発的出来事に沸いた。彼らは日常の閉塞に倦んでいるのだ! 16

2012-09-15 17:34:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「確かにオヌシには一片のメリットも無い」フジキドはメイヴェンの敵意に満ちた視線を真っ向受け止めた。「だが、これだけの衆人環視下!味をウリにしたスシ・チェーンが泥縄経営の個人店の挑戦をおめおめ断れば、デメリットは大きかろう」「貴様ァー!」「アーッ!」支店長が殺気にあてられ失禁!17

2012-09-15 17:45:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワオオーッ!」群衆は既に異常興奮し、口々に叫びあっている。メイヴェンはへたり込む出っ歯支店長の肩に手を置いた。「軒先を汚したゆえ、貴様は一時間後にセプクだ」「アイエエエエ!」そしてメイヴェンはフジキドに近づき、言った。「名を名乗れ。まことの名を」「……ニンジャスレイヤー」 18

2012-09-15 18:02:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「では、貴様がネオサイタマの死神か」メイヴェンの眉が微かに動いた。「キョートで死んだとも、アマクダリ・セクトに仕留められたとも聞いておったが。噂とはアテにならんものよ」「そうだな」「いまさら貴様の居場所など、もはやこの街には無し。私が引導を渡してくれよう。恥辱のうちに死ね」 19

2012-09-15 18:21:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドは群衆にも聴こえる声で言った。「誓え。スシ勝負に我らが勝てば店舗を撤退し、このストリートに、以降、出店せぬと」「よかろう。負ける事など100%有り得ぬ。我らが勝てばワザ・スシの土地店舗は無償で頂く」「ワオオーッ!」群衆が叫んだ。「勝負は二週間後!この通りで行う」20

2012-09-15 18:33:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヤッター!」群衆が和した。メイヴェンはフジキドに囁いた「当然、負ければ貴様に命は無い。貴様を担保できるのは貴様の命だけだ。それだけの覚悟はあろうな」「よかろう!」フジキドは……ニンジャスレイヤーは即答した。 21

2012-09-15 18:41:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」支店長は手渡されたドスで己の腹を切り裂き、うつ伏せに倒れ伏す。「アバ、カカッ……」「イヤーッ!」痙攣する支店長の後頭部にメイヴェンの容赦なき踵落としが振り下ろされた。カイシャク!取り囲む白装束のイタマエ社員達は社長の決断に感動し涙する。彼らの自我は研修済なのだ。23

2012-09-15 19:16:11