かおるさとーさんの『氷菓』#21 解説

かおるさとー @kaoru_sato

『氷菓』２１話を観て気づいたことをいくつか。

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『手作りチョコレート事件』です。最終回直前です。季節は冬。ここ３週ほど奉太郎と千反田さんの関係を中心とした話ばかりでしたが、今回は福部里志と伊原摩耶花、２人の関係にスポットが当てられます。とはいえもちろん頭を働かせるのは、主人公・折木奉太郎なわけですが。

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里志と摩耶花の関係が描かれる一方で、奉太郎と千反田さんの関係にも地味に触れられる話です。どちらもまわりくどい関係で、モヤモヤとかイライラとかすっきりしない気持ちを抱く方も多いかもしれません。しかし、私はこの話大好きです。

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（〈古典部〉シリーズで嫌いな話がないというのはおいといて）

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冒頭、摩耶花が里志の前に仁王立ちするシーン。これ凄いですね、いろいろと。包装紙を破り捨てるところとか、チョコの破片が飛び散るところとか、細かいなあと思いました。摩耶花のヒートアップした感情がわかりやすく描かれていて、いいですね。中学時代の摩耶花は今よりもっと熱しやすかったのかも。

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１年過ぎて現在。バレンタインデーを控えて、摩耶花がチョコレート作りに悩んでいます。「型に流し込んで固めただけのチョコなんて手作りとは言えない（意訳）」という理由でチョコレートを受け取ってもらえなかったので、なんとか「手作りチョコレート」を作ろうとするわけですが……まあ無理ですね。

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原作ではきちんと言及されているのですけど、一般家庭でカカオ豆からチョコレートを作るのは非常に困難です。なぜなら粒子が小麦粉よりも小さく、普通の道具では細かく潰すことが難しいのです。そこまでわかった上でチョコを拒否したわけではないと思いますが、里志も無茶を言ったものですね。

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（不可能とまでは言いませんが）

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ではどうするか。真心を込めた最高のチョコレートを作るしかありません。拒否したときは無理やり口に押し込んでやるとさえ言います。奉太郎がすくんだように目をつぶるのがいいですね。恨みは買うものではありません。千反田さんはその様子を見て「応援します！」と言っていましたが……。

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（私も応援したいです）

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里志に言わないようにと奉太郎に厳命する際に、にっこり笑顔を浮かべる摩耶花。奉太郎には冷たい目を向けるのが常なんですけど、そのせいか笑顔が怖いですね。その後の顔も怖いですね。摩耶花さん怖いですね。

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帰り道、ゲームセンターで里志に一勝負どうかと誘われます。初代『バーチャロン』です。対戦の中で微かな違和感を覚える奉太郎。中学の頃は、勝つためには手段を選ばない、「勝ちにこだわる」戦い方をしていたはずなのに、今回はわざわざ真正面から白兵戦を仕掛けるという変わり様。

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（私は詳しくないのですけど、里志が操る「バイパーⅡ」という機体は、装甲が薄い分高い機動力を生かして戦うタイプらしく、一撃離脱が基本スタイルになるそうです。奉太郎の「ライデン」は重火力武装の機体なので、真正面から挑むのは愚策なのだとか）

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古典部員の中学時代は何度か描かれていますが、どれも断片的で、彼らが当時どのような性格だったのかまでは判明していません。奉太郎がずっと省エネ主義だったことは里志や摩耶花の言動から、または供恵姉さんの言葉から想像できますが、里志や摩耶花ははっきりしていませんでした。

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なんとなく、２人とも今の性格のままだったように思うかもしれません。しかし奉太郎の回想の中での里志は、明らかに今のこだわらない里志とは違います。勝負にこだわっています。台を叩いたり、声を荒げたりする里志というのも珍しいですね。それが元の里志なのだとしたら、確かに変わりましたね。

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一方、摩耶花はどうでしょう。１年前、里志にチョコレートを渡そうとした摩耶花は、受け取ってもらえないとみるや、怒りを隠そうともしませんでした。今でも結構いろんな場面で怒る摩耶花ですが、里志に対しては特に遠慮がないですね。一見変わっていないように見えますが、さあ、どうでしょう。

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摩耶花と千反田さんのお店での会話。“らしい”会話といえばそうなのですけど、今までこんなにもストレートに恋愛を話題にすることがない彼女たちだったので、ちょっと驚きました。もちろん見えないところでは、いくらでも交わしている会話なのかもしれませんが……。

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（「好きな人いないの？」という摩耶花の言葉に、不意を突かれたように顔を赤くする千反田さん。この反応を見る限りでは、今まで訊かれたことのない質問だったのでしょうけどね）

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翌朝、奉太郎の部屋の外には、供恵姉さんからのありがたいチョコが。ご丁寧に箱入りです。奉太郎は謹んで部屋の中に蹴っ飛ばします。外に向かって「いらね」とキックすることもできますが、受け取らないと何をされるかわからないので、仕方なく自室に向かって蹴ったと思われます。

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（忘れている方も多いと思いますが、供恵姉さんは合気道と逮捕術が使えるので、奉太郎は彼女に逆らうような真似はしません。そんな非効率的な（痛い目に遭うような）ことはしません）

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おっと、失礼。『翌朝』ではありませんね。

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２０１３年２月１４日は木曜日で、摩耶花と千反田さんがお店に行ったのは「今度の日曜日」ですから。

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登校途中で千反田さんと会う奉太郎。チョコのことを訊ねると、なかなか手ごたえのある様子。しかし漫研の用事があって直接は渡せないようで、放課後、部室に置いておくのだそうです。それを里志が受け取る。どちらかというと変化球を好む里志ですから、そういう渡し方もありなのでしょう。

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ところで、気になるのは千反田さん。奉太郎には何をあげるのかと思いきや、千反田家では本当に親しい相手には中元歳暮の贈り物を欠礼するのだそうです。バレンタインチョコ、これも贈り物ですから、まあそういうこともありますよね。（ないよ）

かおるさとー @kaoru_sato

（これは遠まわしに告白しているようなものではないかしら）