最近のNature誌に載っていた細菌のmRNAの局在に関する論文の紹介
前提の知識として、細菌は、動植物を含む真核生物とは違い、通常は細胞質に膜をもつ細胞内小器官をもたない。ただし、ゲノムDNAは核様体と呼ばれる凝集体として存在する。
2010-07-23 23:52:50メッセンジャーRNA(mRNA)はDNAを鋳型として作られる。mRNAはタンパク質を作る設計図として機能する。リボソームと呼ばれるRNA-タンパク質複合体がRNAの配列に従って正しいアミノ酸の並びのタンパク質を作る。この流れはセントラルドグマと呼ばれる。
2010-07-23 23:57:03真核生物ではゲノムDNAは必ず核の中にあって、脂質膜で細胞質と分けられた状態。mRNAは核で作られていろいろと加工を加えられた後に核の外、つまり細胞質に運ばれる。リボソームは細胞質にいて、やってきたmRNAの情報をもとにタンパク質を作るわけです。
2010-07-24 00:02:35一方で、細菌ではDNAは細胞質の中に凝集体(正しい整然と折りたたまれてはいますが)のような感じで存在していることがわかっていますが、mRNAがどこにいるのかについては漠然とした知識しかなかったと。
2010-07-24 00:05:04で、新規の手法で見てみたらで意外なことがわかったということでNature誌にのったと。実際の出発点はやや謎な感じですが、そこは置いておきます。
2010-07-24 00:10:33まず、細菌でmRNAの局在が正確にわかっていなかったことに驚いた。意外。理由は細菌のmRNAの存在量は小さくて、検出がなかなか難しかったそうな。最近ぼちぼちちゃんと見れるようになってきたのだと。
2010-07-24 00:07:31手法としては昔からあるin situ hybridization法をアレンジしたもの。原理はDNAやRNAがお互いに相補する塩基配列を持つ場合に二重鎖になるというもの。ここ五年ほどで広く使われるようになったRNAの改変体ちっくな(間違ってるかも)LNAという物質を使っています。
2010-07-24 00:15:14@kurinoshippo @drmaruyama locked nucleic acid の略でどこやらとどこやらが余分に結合して閉じた形みたいになってるらしいです。人工核酸と思います。(うろおぼえ
2010-07-24 00:48:27LNAはRNAやDNAに、そのものよりも強く結合するという性質があるそうで、それを使ってハイブリさせるとことで検出感度を上げていると。ここまでは普通ですね。
2010-07-24 00:17:47今回の論文の秀逸なところは、検出用の配列をめちゃくちゃたくさんタンデムに並べた構造をある特定の遺伝子の直後に組み込み、それに対したハイブリを行うことで、検出感度をさらに上げて実験しやすくしたところかと。とてもキレイなデータ写真でした。
2010-07-24 00:21:16それで観察して見ると、RNAは細胞質全体にいるのではなく、ある特定の領域だけに局在していることがわかったので筆者らはびっくりしたということです。
2010-07-24 00:22:50というのも、これまでの研究から細菌でのmRNAは転写されたあとも分解されるまで数分〜十数分は存在していて、DNAから離れたRNAがタンパク質翻訳に大きな役割を占めるだろう、それと移動速度から換算すると細胞質全体に均一に存在するだろうと想定されていたからです。
2010-07-24 00:25:49@drmaruyama ものによって違うらしいですが、3-13分くらいだったような。RNA合成自体は平均的な長さのもので20秒ほどだそうです。
2010-07-24 00:53:41@h_ehara その論文は引用してなかったかも。そういう報告があるんですね、なるほど。論文中では試験管内での拡散係数ではなくて、ゲノム由来でないmRNAの細胞内での動きから見積もられた拡散係数が使われていたと思います。元論文を理解し切れてないのではっきりしたことはわかりませんが
2010-07-24 11:28:52mRNAが特定の位置にしかいないということで、次にDNAのうちそのRNAの鋳型となる部分の位置と比較してみたところ、すごく近くにいるということがわかりました。
2010-07-24 00:28:09ここで地味にすごいなぁと思うのはRNAとDNAをin situ hybridizationで同時に見ているというもの。そういうことができるという発想はなかったな。まあその感覚は、分野によるかもしれないですが。
2010-07-24 00:29:57で、まあいろいろ調べた結果、リボソームの動きも普段は鈍くてRNAが細胞内にない状態にしてやるとうごくとか、RNA量が増えれば分布も拡大するとか、RNAを分解するのに働くタンパク質も核様体の近くにあるとかがわかりました。はしょりました。
2010-07-24 00:32:24@drmaruyama RNA分解酵素の存在位置は核様体の近くだけどドット状なので、ある瞬間にはある場所とない場所があって…というのを想像しつつも謎の部分ですね。なにしろそれに関する図が一つしかないので… 今後の展開に乞うご期待?
2010-07-24 00:51:34で、結局のところ細菌ではmRNAは鋳型となるDNAの近くに離れたあとも長く居座っていて、そこでタンパク質への翻訳もRNAの分解までも全部やっちゃって完結していると。
2010-07-24 00:34:39一箇所でいろいろやっているのは真核生物とはある意味逆の戦略。真核生物は生徒(DNA→RNA→タンパク質)が移動する欧米の学校っぽい感じ。先生(リボソームとかの酵素とか)はそれぞれの場所でスタンバイしている。
2010-07-24 00:37:43