ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター」 #3

2012-09-18 12:04:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:老店主が経営する個人スシ店「ワザ・スシ」は、向かいに開店した圧倒的スシチェーン店「ウェルシー・トロスシ」の手で廃業の危機を迎えていた。大規模経営のパワーを活かした確かなネタ、安さと旨味。だが、手間暇を惜しんだ営業妨害は蛇足であった。ワザ・スシの老店主は怒り、奮起した)

2012-09-18 12:05:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(だが、奮起しただけでどうにかなる程、ネオサイタマは甘くない。ワザ・スシが経営に行き詰まるのは確定的未来といえた。だが、客としてたまたま店を訪れていたニンジャスレイヤーの機転により、決して勝てない総力戦は回避。この地区での営業権を賭けたスシ勝負にイクサを持ち込む事に成功した)

2012-09-18 12:15:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(スシ勝負に勝ちさえすれば、万事解決だ。…ウェイッ!ちょっと待て。そう簡単に行くのか?なにしろウェルシー・トロスシの社長は自らがイタマエであり、なおかつニンジャなのだ!オーガニック・アナゴの養殖もできる。勝算はあるのか?負けたらセプクってどういう事だニンジャスレイヤー=サン!?)

2012-09-18 12:22:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(勝負は二週間後……敵のイタマエニンジャ「メイヴェン」の陰にちらつく何らかの企業の存在も不気味だ。どう備え、どう戦うのか?オイオイ、こいつは穏便に済むとは全く思えないぜ!)

2012-09-18 12:31:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「定休日」とショドーされたシャッターの内側で、ワザ・スシの老店主アキモトと、ニンジャスレイヤー、エーリアスは、カウンターを挟んで向かい合っていた。昨晩は店と客の関係であったが、今日からはいわば、陣営を同じくするセンシだ。「あんたたちまで巻きこんじまって」とアキモト。 2

2012-09-18 12:42:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「むしろ巻き込んだのは私かも知れん」ニンジャスレイヤーは言った。セプクの件はアキモトに伝えていない。「いえ、勝負、本当にありがたいですよ」アキモトは繰り返した。エーリアスは言った。「とにかく、乗り掛かった船だよ。人手として使ってくれていいぜ。スシの試食とか……」 3

2012-09-18 13:07:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウェルシー・トロスシ」ニンジャスレイヤーは言った「凄まじい速度で店舗を増やしている企業だ。出店方法はどこも似通っている。もともとスシ店が営業している場所に新規開店し、社長自らが握るスシと実際安いセールで、地域の客を全て奪い、店舗経営を軌道に乗せる。そして次に行く。効率的だ」4

2012-09-18 13:21:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは昨晩のうちに一通り情報収集してある。更に彼は伝えた。「先に言っておく。あの社長はニンジャだ。そして、私と、このエーリアスもだ」彼は敢えて明かした。今後、何かの拍子で心の備え無しにニンジャ存在の力を目の当たりにすれば、重篤なショックに繋がりかねないからだ。 5

2012-09-18 13:32:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ……噂には聞いた事がある」アキモトは唾を飲んだ。「確かにあのメイヴェン=サンは只者じゃ無かった。言われれば、よくわかる。まさか俺のスシ屋がニンジャに狙われるとは」「今迄あまり見た事のないケースだ」ニンジャスレイヤーは言った。「表社会にああも堂々と現れるというのは」 6

2012-09-18 13:43:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あいつ、曲がりなりにも表社会のルールに則ってやってる以上、こっちから無茶を仕掛けるわけにはいかねえぞ」エーリアスは言った。ニンジャスレイヤーは頷いた「それはアキモト=サンにとっての利点でもある。尻尾を出せば社会敵。それを避ける筈。例えばアキモト=サンを直接殺しに来る事は無い」7

2012-09-18 13:57:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「で、スシ勝負か」エーリアスがカウンターに肘をついた。「毎週日曜夜の『スシ土俵』は結構好きな番組だったけどさ」……敵陣営とのルール確認は、IRC上で既に済ませてある。審査員は四人。さらに、イベント性を高める為、観衆の試食と多数決の結果を、五人目の審査員として扱う。8

2012-09-18 14:14:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「うん、似てるよ『スシ土俵』と」「キョートの番組の事は知らんが、とにかくそういう事だ」「審査員ってのがな。心配だぜ。買収されるだろ」「それぞれの陣営から二人ずつ推薦する」ニンジャスレイヤーは言った。アキモトは頷いた「世話になった人らがいる。彼らに裏切られるなら、俺もそれまでよ」9

2012-09-18 14:33:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

勝負は3ラウンド制。タマゴ、マグロ、そしてフリースタイルだ。「全力でやりますよ。オマチ」アキモトがタマゴとオーガニック・マグロを素早く握り、二人に差し出した。「役得だぜ!」エーリアスは笑い、素早く食べた。「俺はさ、キョートでも結構食べ歩いてるんだ。『水晶のシカ』知ってる?」10

2012-09-18 14:42:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あそこのイカはたいへん旨いと聞いてますよ」「その通り!でも、そんな俺が言うんだが、お世辞じゃないぜ、アンタのスシは本当に旨い」エーリアスは言った。ニンジャスレイヤーも頷いた。「勝算のないイクサを仕掛けたつもりは無いのだ。アキモト=サン」「へへ、参ったな」老店主は苦笑した。11

2012-09-18 14:44:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……スシ勝負の噂が効いたか、その後、ワザ・スシにも客足が戻ってきた。エーリアスは厨房に立ち、アキモトの手伝いをした。スシ勝負では大量のネタとコメを捌く必要に迫られる。アシスタントが必要だ。その訓練である。ニンジャスレイヤーは暗殺者への備えだ。バレぬなら、奴等は躊躇せぬだろう。12

2012-09-18 15:01:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

早朝の鮮魚市場にもニンジャスレイヤーは同行した。既に彼は数度、アキモトに向けられた殺意を察知していた。ニンジャスレイヤーの護衛は適切であり、襲撃者は足がつく事を恐れてか、実際の攻撃に踏み込む事は無かった。 13

2012-09-18 15:07:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三本目のフリースタイルに何を出すか。メイヴェンが間違いなく繰り出してくるオーガニック・アナゴにどう対抗するか。彼らは議論を繰り返した。このままスシ勝負当日を迎える事ができるであろうという彼らの思いは、決して油断やウカツでは無かった筈だ。だが、運命は良くない方に転がった。 14

2012-09-18 15:43:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……お客さんスミマセン、うちは11時で終わりなんです、閉めちまってまして」謝りながらノーレンを見やったアキモトが凍りついた。「……!」ニンジャスレイヤーが素早く来訪者とアキモトの対角線上に割り込んだ。「営業時間外だ、お客様」「安心せよ。食いに来た訳ではない」メイヴェン!15

2012-09-18 15:51:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。メイヴェンです」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」二者は額同士が当たる程の近距離で互いに睨み合い、アイサツした。どちらも決して視線を逸らそうとしない。「今宵はひとつ忠告をしに参った」メイヴェンは言った。 16

2012-09-18 15:54:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「外だ」ニンジャスレイヤーは睨みつけたまま言った。「なに、害意は無い。安心するがいい」「……」ニンジャスレイヤーは睨みつけたまま無言である。メイヴェンは肩を揺すって鼻で笑った。二人のニンジャは路上に出た。 17

2012-09-18 15:56:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「申してみよ」とニンジャスレイヤー。メイヴェンは言った。「貴様らは決して勝つ事はできん。スシネタ。コメ。ショーユの一滴たりとも、満足に調達できぬであろう。あの老いぼれに伝えよ。今ならビジネスの話ができるとな。無駄に屈辱と借金を積み増すだけだぞ」「なるほど白旗を上げにきたか」 18

2012-09-18 15:58:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは剣呑に言った。「オヌシが泣こうが喚こうが、衆人環視下で全てのケリがつく。我々は覚悟を決めた。オヌシも決めよ」「貴様はセプクし、あの老いぼれは路頭に迷う」メイヴェンは言った。「アッパレな覚悟よ」「ならば黙って、オヌシが勝つと信じきるその日を待て」 19

2012-09-18 16:14:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私はいつでもIRC連絡を待っておるぞ、ニンジャスレイヤー=サン」メイヴェンは言った。「貴様の自暴自棄のイクサに老いぼれを巻き込んではおらぬか?どの選択が貴様らにとって一番の利益となるか、今一度、ようく考えるがいい」「……」二分間睨み合った後、メイヴェンは踵を返した。 20

2012-09-18 16:29:23