「ロック人生とは?」〜ある中年バンドマンの苦渋の選択〜

40代アマチュアオリジナルロックバンド『虹とライオン』のドラマーである私、NANIOが、バンド脱退を決意した経緯についての長〜いつぶやきをまとめました。 中年バンドマンが今さらになってあらためて気づいた、「ロックな人生の本質」を垣間見てもらえればと思います。 そして、あなたにとってロックとは何かを考えるきっかけにしてもらえれば幸いです。
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NANIO @NANIO_J

昨日早朝、僕はある一代決意表明をした。40歳を超えてから5年間ドラマーとして参加したバンド、『虹とライオン』http://t.co/bzS0xHFa脱退することを決めた。それは僕にとって、苦渋の選択だった。

2012-09-19 10:16:58
NANIO @NANIO_J

僕はかつて、メジャーを目指してせっせとバンド活動に励んでいた。しかしご多分にもれず、そんな夢のような話が実現することもなく、26歳の時に挫折した。以来、スティックを握ることは15年間なかった。

2012-09-19 10:20:33
NANIO @NANIO_J

そんな僕に、「またドラムを叩かないか」と声をかけてくれたのが虹とライオンだった。メンバーには大学時代からの旧知の友が二人いて、一年前から活動を始めていた。僕も客として、何度かライブを観に行っていたので、それがどんなバンドなのかは知っていた。

2012-09-19 10:23:46
NANIO @NANIO_J

僕は虹とライオンが紡ぎ出す音楽の世界観を、素直にカッコイイと思っていた。まだ発展途上のバンドだったが、観客席で観賞しながら「こんなバンドでなら、またやりたいな」と思っていたものだ。そんな折に、先代ドラマー脱退に伴い、僕にお鉢が回ってきたのだ。これは断る理由などなかった。

2012-09-19 10:29:47
NANIO @NANIO_J

しかし、ひとつ大きな問題があった。それは15年間というブランク。慌ててスタジオに入り、リハビリを始めたが、そのブランクは余りに大きすぎ、思った以上に叩けなくなっていることに愕然としたのを覚えている。それでもなんとか間に合わせ、僕のドラマー人生は再び幕を開けた。

2012-09-19 10:32:50
NANIO @NANIO_J

それから、僕の生活はなんだか楽しくなった。創作する楽しさ、喜び。ステージに立つ快感と感動。それは、僕のアイデンティティとして再び君臨した。いつしか、僕の生活は、バンド中心と言っても過言ではないくらい、バンドに添って形成されるようになった。

2012-09-19 10:38:05
NANIO @NANIO_J

それは、最初のうちはまだよかった。僕はライターをやっていて、バンドに割く時間の都合はどうにでもなった。金銭的にもまだ融通は利いていた。しかし、バンドを続けた5年間の中で、僕の仕事環境、生活環境はめまぐるしく変わっていった。

2012-09-19 10:45:17
NANIO @NANIO_J

バンドを始めた頃は、ある文化人(?)の専属ライターをやっていた。その後、専属契約を解消し、フリーのコピーライターとして活動。それだけでは食えないので、日雇いの肉体労働をしながらつないだ。そんな状態でも、バンドをやっていれば、自分らしくいられるような気がしていた。

2012-09-19 10:50:36
NANIO @NANIO_J

しかしそのコピーライターの仕事も、昨年震災ちょっと前に終わってしまった。困った僕は、何か仕事をしなければ、と弁当配達のバイトを始める。弁当配達を選んだのは、仕事の終わりが早く、休みが比較的自由に取れるというメリットがあったからだ。

2012-09-19 10:54:03
NANIO @NANIO_J

僕は、茨城県に住んでいる。茨城と言っても、利根川を越えればもう千葉ではあるが。だけど、バンドの練習は主に新宿だった。練習スタートは8時。6時には家を出ていないと練習に余裕を持って行けない。だから地元でバイトをするとなると、5時には家に帰れる仕事を探すしかなかった。

2012-09-19 10:57:45
NANIO @NANIO_J

弁当配達のバイトは時給800円。ひと月働いてもたいした稼ぎにはならない。それでも、バンドを続けたいがために、午後3時、遅くとも午後4時半には上がれるこのバイトを続けた。それもこれも、バンド活動を続けたかったからだ。

2012-09-19 11:03:36
NANIO @NANIO_J

ところが、この8月に、弁当配達を辞めざるをえない事態が発生した。椎間板ヘルニアになってしまい、車の運転や、何十個もの重い弁当をテキパキと納品することができなくなってしまったのだ。右下肢がしびれ、パンツをはくのもままならないほどに傷んでしまった。

2012-09-19 11:08:08
NANIO @NANIO_J

もちろんドラムも叩けない状態になった。腰から右脚なので、座っていられないしバスドラも踏めない。バンドは折しも、ベーシストが交替し、これから新体制を構築しようとしているときだっただけに、焦った。しかしどうにもならない。バンド活動も、バイトも、文字通り窮地に立たされてしまった。

2012-09-19 11:14:09
NANIO @NANIO_J

結局、僕は弁当配達のバイトを辞めた。バンドは、痛みが引くまでリハ活動を待ってもらうしかなかった。3週間の安静が必要とのことだったので、1ヶ月リハはお預けになった。不幸中の幸いは、次のライブ予定が10月27日だったこと。1ヶ月間が空いてもなんとかなるとメンバーは言ってくれた。

2012-09-19 11:19:57
NANIO @NANIO_J

だが問題は、バイトを辞めてしまったことだ。これで僕はほぼ無職状態になってしまった。さあ、どうするか。僕はコピーライターとしての再就職を目指すことを決意、動けるようになった頃からハローワーク通いを始めた。だが、この就職難のご時世、中年男の再就職活動がそんなにうまくいくわけがない。

2012-09-19 11:26:58
NANIO @NANIO_J

8月のお盆明けくらいから本格的にハローワーク通いを始め、コピーライターなどの求人に応募したのが約10社。いまのところ全滅だ。そうこうしているうちにバンドのリハが再開した。バンドのリハには、交通費とリハ代を含めると1回につき4千円もかかってしまう。しかし僕は失業手当も出ない無職だ。

2012-09-19 11:32:38
NANIO @NANIO_J

僕は追い詰められ始めた。就職活動の前途は多難であろうことは想像に難くない。しかしバンドは進んでいく。カネもないのにバンドをやるのはどうなのか。気持ちが集中できないまま人前で演奏するのはどうなのか。経済面、精神面の両方からプレッシャーがかかってきた。そのプレッシャーこそ僕の現状だ。

2012-09-19 11:38:31
NANIO @NANIO_J

果たしてコピーライターとして再就職などできるのだろうか? コピーライターとしてでなく、何か他の職業を当たった方がいいのだろうか。しかしそれ以上に、職に就いたらバンド活動は続けられるのだろうか…、等と考えているうちに、ハッと自分の考えが、なんだかおかしな事になっていると気がついた。

2012-09-19 11:42:47
NANIO @NANIO_J

今の考え方では、まるで僕はバンドを続けるために再就職を目指しているかのようだ。それでは本末転倒だ。再就職なり、生活基盤を安定させてはじめて、極上の趣味としてバンド活動でもなんでもやる、というのが真っ当な形だろう。僕はいつからか、何かを勘違いしていたようだ。

2012-09-19 11:47:44
NANIO @NANIO_J

二兎を追う者は一兎をも得ず、と言う。僕はいつのまにか、自分の存在証明のためだけにバンド活動を優先させていた。バンドを続けていれば、自分は自分らしさを維持できると考えるようになっていた。だが、それではだめなんだ。継続は力なりとも言うが、僕の場合はそういう次元ではないと思った。

2012-09-19 11:56:57
NANIO @NANIO_J

僕はただ、バンドに乗っかっていれば自分らしくあれるという、とっても卑しい根性を自分のアイデンティティにしてしまうところだった。生活もできていないのに!生活できないのにバンドやってるなんて、そんなのロックじゃない。ロックとは生き様であって、自分を着飾るためのアイテムじゃないんだ。

2012-09-19 12:02:42
NANIO @NANIO_J

そんなわけで、僕は愛しいバンドを退くことにした。早朝まで悩んでから、メンバーにその旨を伝えるメールを送った。その時点では、僕は即刻脱退を考えていた。しかし、リーダーから帰ってきた返事は「わかった、でも最後けじめつけようぜ」だった。つまり10月のライブを区切りにしようということだ。

2012-09-19 12:07:55
NANIO @NANIO_J

ちょっと戸惑ったが、メンバーが僕の状況を受け入れてくれ、その上最後の花道を作ってくれるというのだ。これを断るわけにはいかない。だから最後、10月27日、自分のこの5年間の集大成としてステージに立とうと思う。

2012-09-19 12:15:19
NANIO @NANIO_J

僕は決して上手いドラマーではなかった。迷惑もいっぱいかけた。でもバンドは、僕にとって欠かせないものであることを40過ぎて再認識させてくれたのが、虹とライオンだ。この歳でそんな楽しい時間を持てるなんて、そうそうできないよ。感謝の気持ちでいっぱいだし、実は未練たらたらである。

2012-09-19 12:19:20
NANIO @NANIO_J

その未練を断ち切って、生活を立て直すことに専念する。その上でまた「ロックなこと」を打ち出してみたい。何しろこの先の筋道を立てなければ。四十代も後半、この歳でロックし続けるのは実に難しいが、とにかく自前で生きていく、それが第一歩。今さらそんなことに気づいた男の長いつぶやきでした。

2012-09-19 12:31:33