Twitter小説「息苦しいハシビロコウ」

漫才師・蓮華による、コンビ間交換小説。 「息苦しいハシビロコウ」まとめです。 100話完結予定。 (山)→山下隆章著 (ち)→ちゃんだい著 続きを読む
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蓮華(れんげ) @renge_info

【新コーナー:蓮華Twitter小説『息苦しいハシビロコウ』第1話(ち)】 ビルとビルの間から太陽が照りつける。 今年の夏は暑いな-そんな台詞は毎年の様に聞くが、今年こそその最たるものであると感じる。 くたびれたスーツをいつもの様に着ているが、今日はどうもしっくり来ない。 続

2012-07-10 20:19:30
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【息苦しいハシビロコウ 第2話(山)】 あついあついあつい。 3つの意味で。 暑い熱い厚い。 黄色い日差しが暑い。 左手に持つ赤い缶コーヒーが熱い。 そして右脇に抱えた青い鳥の嘴がとても厚い。 何でこうなったんだっけ? あついと感じる身体とは逆に何故か冷めている頭で整理をする

2012-07-11 21:36:03
蓮華(れんげ) @renge_info

【Twitter小説補足】 ハシビロコウはこういう鳥です。 上野動物園にいます。 武士道を感じる鋭い目をした青い鳥です。 第二話を載っけましたが案外難しいー! でもちゃんだいは直木賞目指してるそうです。 (山下) http://t.co/sqVTSgNM

2012-07-11 21:40:34
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【息苦しいハシビロコウ 第3話(ち)】 思えば昨日の晩からおかしい。 大して飲めない酒を浴びる様に飲み、気付いたら朝だった。 もちろん休日ではないので、急いで身支度をして外へ飛び出した。 今手に持っているのは缶コーヒーと鳥1羽。 あぁそうだ。 僕は昨日動物園に行ったんだった。

2012-07-12 23:17:30
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【息苦しいハシビロコウ 第4話(山)】 「あの鳥がどうしても欲しいんです。私」 色々な理由(これは面倒だから話さないけど)で天涯孤独になった僕の唯一の生きがいは一人で動物園に行く事。 昨日は珍しく知らない女が話しかけてきた。 「はあ?」と僕は僕なりの礼儀正しい言葉で返答した。

2012-07-14 00:14:29
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【息苦しいハシビロコウ 第5話(ち)】 女性は前のめりで再度僕に懇願して来た。 「どうしても欲しいんです、どうしても」 その女性の哀願ともいうべき様子に、僕は明らかな困惑の表情を浮かべてしまう。 僕は仕方なく、女性が指差す方へ目をやると、そこには見慣れた青い鳥が一羽佇んでいた。

2012-07-15 02:00:26
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【息苦しいハシビロコウ 第6話(山)】 ハシビロコウ…これが欲しい? こういう変な人間に関わらない事で自分を守ってきた僕は早くこの場を去ろうとしたが、女の一言がその足を止めた。 「これが手に入れば勇さんも喜びますよ。君、弟なんでしょ?」 勇は7年前に行方不明になった僕の兄だ

2012-07-16 00:47:19
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【息苦しいハシビロコウ 第7話(ち)】 久しく耳にしていなかった兄の名前を聞き、僕は思わずたじろいだ。 忘れていたわけではない、いや忘れるものか。 あの手この手を尽くして探そうとした兄だ。 僕は考えるよりも先に言葉を口にしていた。 「兄は…、いや兄をご存知なのですか?」

2012-07-17 03:20:56
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【息苦しいハシビロコウ 第8話(山)】 「ご存知って?…フフフ…へへ…ハハハハハハ…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!キャハハハハハハッハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハー!!ゴフッ!ゴホッ!ゴホッゴホッ!アハハハハハハハハハハ!!!」 突然笑い出す女。

2012-07-18 00:24:55
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【息苦しいハシビロコウ 第9話(ち)】 「ちょっと落ち着いて下さいよ!」 女のあまりにも滑稽な笑い声に、僕は少し怒りを込めて制止した。 そして再度尋ねる。今度は威圧的に。 「兄をご存知なんですね。教えて下さい。兄は今どこにいるんですか?」 僕は何よりも居場所が知りたかったのだ。

2012-07-19 14:47:50
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【息苦しいハシビロコウ 第10話(山)】 「あまりに的外れな事言い出すから笑っちゃった。そうお兄さんに会いたいのね。じゃあこの鳥を一緒に盗みましょ」 一つもピンと来ない。 何故兄に会う為にこの鳥を盗まないといけないのか? この女は一体? あー何だか面倒な事になりそうだ。

2012-07-20 17:14:24
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【息苦しいハシビロコウ 第11話(ち)】 そんなやり取りを横目に、一羽の鳥はただ一点を見つめている。 こいつを盗み出す事が兄の手がかりに繋がる-そんな事を信じろという方が馬鹿らしい。 しかし手がかりは欲しい。 僕は試すように女に言った。 「この鳥をどうやって盗むつもりですか?」

2012-07-21 22:29:55
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【息苦しいハシビロコウ 第12話(山)】 「やるって言ってくれたら教えてあげるわ。やってくれるわね!」 まるで母に叱られた時の様な威圧感を持った言い方で僕に選択を迫る女。 「本当に兄の事知ってるんでしょうね?…知ってるなら…やります」 「じゃあ行きましょ」 と歩き出す女

2012-07-23 22:48:03
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【息苦しいハシビロコウ 第13話(ち)】 女のあとをついていく。 動物園の中ではあるが、その様子はすっかりさびれており、人は少ない。 動物たちもその多くは惰眠を貪っている。 5分位歩いただろうか。 女は大きな扉の前で急に立ち止まり、僕に向かって言う。 「本当に覚悟はいいのね?」

2012-07-25 01:08:52
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【息苦しいハシビロコウ 第14話(山)】 ベシッ!! 僕が黙っていると突然女は僕の尻を蹴った。 「ナヨナヨしないでよ男でしょ?本当相変わらずね」 「すいません。大丈夫ですから」 「…ならいいけど。この動物園は夕方になると動物を室内の檻に移動させるの。ここはその入口。行くわよ」

2012-07-25 23:17:57
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【息苦しいハシビロコウ 第15話(ち)】 僕は狼狽しながらも、女に出来る限り近づいて檻へと足を進めた。 檻の中は生臭かった。 ピギャー、ウー、ドー・・・。 様々な動物達の鳴き声が聴こえる。 多くの檻がある中、女は少しも迷う事なく一つの檻の前で歩みを止めた。 一羽の青い鳥がいる。

2012-07-27 04:17:55
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第16話(山)】 「相変わらずいい目をした鳥ね。ワシントン条約で輸入規制されている鳥だから盗んだのバレると面倒な事になるけど心配いらないから。私に任せといて」 と言うか言わないかの内にポケットから一本の鍵を取り出し、檻についた南京錠にさした。

2012-07-28 00:09:56
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【息苦しいハシビロコウ 第17話(ち)】 女が鍵を差し込んでからほんの数秒だろうか。 檻が並ぶ暗い通路の空気が僕には厳しくとても長く感じられる。 早く鳥を盗んでこの場を去りたい。 女の後ろ姿に苛立ちを感じながらも僕は待った。 突然女は言った。 「あれ?鍵が開かない!」 狼狽の女。

2012-07-29 01:53:14
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【息苦しいハシビロコウ 第18話(山)】 「ちょっと!大丈夫ですか?」 「うるさい!黙ってて!もう何でよ!」 ガチャガチャ。 全然鍵は開く気配が無い。 ハシビロコウはそんな僕らをジッと見ている。 ガチャン! 空いたのは檻では無く、入り口のドアだった。 「おい!誰かいるのか?」

2012-07-30 01:30:34
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【息苦しいハシビロコウ 第19話(ち)】 驚いて後ろを振り返ると、そこには白髪の老人が立っていた。 「おい!誰かいるのか?」 老人は再度こちらに向けて声をかける。 目が悪いのか、暗がりの為なのかは分からないが、こちらの姿が確認出来ていないようだ。 僕に女に導かれ、物陰に隠れる。

2012-07-31 00:05:12
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【息苦しいハシビロコウ 第20話(山)】 小声で女は言った 「やばいわね。松山大老人よ」 「何者ですか?」 「ここの動物園のオーナー。皆そう呼ぶの。裏の社会にも顔が効くやり手爺さんで動物園も相当あくどいやり方で大きくしたそうよ」 コツコツコツ 足音が近づく

2012-08-01 01:51:19
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【息苦しいハシビロコウ 第21話(ち)】 松山大老人と呼ばれる男の足音が近づくと同時に、僕は奇妙な感情に襲われた。 バレたら捕まる、という恐怖心よりも、この女を守らなければ、という責任感に苛まれていた。 「ここで待ってて」 女にそう告げた僕は、目の前にあった鉄パイプを手に取った。

2012-08-02 02:19:30
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【息苦しいハシビロコウ 第22話(山)】 ズシリと重みを感じる。 殴ったら死ぬ。そういう類いの重さ。 松山大老人と呼ばれるこの男。 よく考えると別に悪い事はしていない。泥棒はこっちだ。 とりあえず女だけ逃げ出せたらそれでいい。 「ここにいます」 意を決して声を出した。

2012-08-04 00:19:39
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第21話(ち)】 暗がりに響く僕の声。 僕の声に松山大老人は即座に反応した。 「出て来い!目的は分かっている!」 僕は不思議に思った。目的?鳥を盗む事?何故分かる? 間髪を入れず松山大老人は言葉を続ける。 「お前もこの鳥の秘密を知る者なのか!どうなんだ!」

2012-08-06 03:42:42
蓮華(れんげ) @renge_info

【息苦しいハシビロコウ 第22話(山)】 「僕はこの鳥が好きなのでもっと近くで見たいと思って、ついここに入ってしまいました。申し訳ありません。」 と松山大老人の前へ進み出た。 「嘘をつくな!この鳥は渡さんぞ!」 パンッ! と乾いた音がした瞬間に天井の蛍光灯が割れた。

2012-08-07 00:34:11