キリング・フィールド・サップーケイ #1

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キリング・フィールド・サップーケイ」 #1

2012-09-21 22:04:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

装甲巨大液晶を腹に吊り下げた大型マグロツェッペリンの編隊が、ネオサイタマの超高層ビル街を威圧的に泳ぐ。そこに映し出されるのは最新娯楽映画「ジーザスIV」。地上では、ぽかんと口を開けてトレイラー映像を見上げるジェット・パンクスの一人が武装ハッカーに撲殺され、万札を奪われていた。 1

2012-09-21 22:11:49
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マグロ液晶には、ローマ兵士軍団に囲まれる逞しい半裸の男……使徒の一人が彼にバスタードソードを手渡すと、たちまち壮絶なアクションシーン!『ジャッジがいない』巨大な赤色液晶に字幕が流れ、トレイラーの映像と連動する。地上ではフリーランスヤクザが武装ハッカーを脅し、万札を奪っていた。 2

2012-09-21 22:28:07
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『磔刑を逃れた彼に』タダーン!煽情的効果音。『新たな刺客!』タダオーン!ローマ軍の命令を受け、べん髪のカンフー男が剣を構えてあの男に斬りかかった。ナムサン!宗教道徳は死に絶え、民はついにあの男すら消費し始めたのだ。地上では、黒いレインコートを着た男がヤクザに肩をぶつけていた。 3

2012-09-21 22:45:04
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『裏切者を追いエジプトへ』彼はチャリオットで荒廃した砂漠を駆ける。戦車軍団が後を追う。『悲しい別れ』タダーン!茨の冠を被った彼は死に瀕した乙女と口付けを交わし、立ち上がる。俗悪と貨幣が神聖を蝕む。地上では「ザッケンナコラー!」ヤクザがレインコート男を威嚇しチャカ・ガンを抜く。 4

2012-09-21 22:58:46
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「……くだらねえ」レインコート男は背後から銃口を向けられても歩みを止めず、高層ビルのひとつを睨みつけながら舌打ちした。「アッコラー!?ダッテメッコラー!」面子を潰されたと思ったヤクザは、恐るべきヤクザスラングを吐き捨てながら、レインコート男の正面へと回り込み立ち塞がった。 5

2012-09-21 23:12:01
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レインコート男は止まらない。「コノヤロー!」激昂したヤクザは引き金を引いた。BLAM!重金属酸性雨で湿った大気に銃声が鳴り響く。だがレインコート男は一瞬早く、拳を握らない奇妙なカラテの構えから相手の腕をいなし、銃口を逸らしていたのだ。ワザマエ! 6

2012-09-21 23:27:17
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逸れた銃弾が『警察パトロール』と書かれたネオン看板にめり込むよりも速く、ヤクザの顔面に左右の掌打三発が叩き込まれていた。「イヤーッ!」「アババーッ!?」ヤクザはそのまま後ろに倒れ、薄汚い水溜りの中で死んだ。屈強なフリーランス・ヤクザを一瞬で殺すこの男、果たして何者か……? 7

2012-09-21 23:37:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「肩慣らしにもなりゃしねえ」レインコート男はヤクザの死体を蹴りながら、とても治安の悪いエンガワ・ストリートに向かった。途中、ソバ屋台の前を通る時にサケトクリを奪い、追いすがってきた老店主をキックで殺し、それを見て悲鳴を上げたストリートオイランを路地裏でファック&サヨナラした。 8

2012-09-21 23:48:38
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エンガワ・ストリートには、開発計画から取り残されたカビ臭い雑居ビルと電柱が立ち並び、無数のケーブル類が張り巡らされて、重金属酸性雨をしのぐアーケード的役割を果たしている。男はレインコートを脱ぎ、それを放り捨てた。煤けたハカマ・ウェアを纏う、堕落した中年武道家の姿が露になった。 9

2012-09-22 00:07:12
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「アハー、アハー、アハー」小型クレーン装置の先端に備わったUNIX椅子の上で、痩せぎすの男が手を叩いて笑っていた。悪名高きハッカー・バロンのヒロシ・ヤスオである。「ヤスオ=サン、どうしたんですか?」側近のモチナガが問う。「公開前のジーザスIVを落としたぞ、アハー、アハー」 11

2012-09-22 00:23:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これは違法ダウンロード!神をも恐れぬ悪質ハッキング行為である。「アハー、アハー、皆で観てから、ヤクザクランに売るぞ」ヤスオはUNIX椅子に備わった三個のキーボードを高速タイプし、機械言語でクレーンを操作する。ハッカー・バロンの名に恥じぬ、殺人的なタイピング速度であった。 12

2012-09-22 00:36:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

異形の甲殻類めいたクレーン装置が動き出すと、UNIX椅子は大きく旋回し、大型スクリーンの前でリクライニングした。いかついスキンヘッドの傭兵モチナガを含め、合計3人のボディガードも薄汚いソファに座ってスクリーンを見た。鎖で繋がれた奴隷サイバーゴス女4人が、ヤスオの横に侍った。 13

2012-09-22 00:50:49
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「君たちも見たいよね」「「ミターイ!」」「「スゴーイ!」」ヤスオは半ば自我崩壊した奴隷たちに優しくオシャクされながら皇帝のように笑った。「アハー、アハー、それじゃ、上映開始……」彼がコマンドをタイプすると、大部屋の照明が一斉に消え、雅楽的ブザーが鳴ってスクリーンの幕が開く。 14

2012-09-22 01:09:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、開いたのはスクリーンの幕だけではない。フスマが勢いよく開け放たれ、悲鳴が聞こえた。ヤスオら全員が背後を振り返った。廊下の照明に照らされ、ハカマ・ウェアを纏った武道家のシルエットが切り絵めいて浮かんだ。その顔には、瞳の無い白いサイバネ義眼が二つ、邪悪に歪んで輝いていた。 15

2012-09-22 01:29:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、おれの名はデソレイションです……DESOLATION!」その男は禍々しいアイサツを決めた。オジギすらせぬ、武道家にあるまじき態度!「アイエエエ…」悲鳴の正体は、内臓破裂状態で彼の足元に転がる傭兵ノブタであった。ノブタはこのアイサツに恐怖して失禁し、直後に絶命した。 16

2012-09-22 01:35:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」不測の事態にハッカー・バロンは取り乱した。「何モンだ、てめえ!?」モチナガは殺人武器トンファーを構えて立ち上がる。そのトンファー捌きを見れば解るとおり、彼はかなりのカラテ高段者だ。他の傭兵も同様である。だがデソレイションは、嬉しそうに歯を剥き出して笑った。 17

2012-09-22 01:48:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウオーッ!」モチナガがトンファーを振り回しながら突撃!だがデソレイションはそれをいなして顔面掌打を叩き込む!「イヤーッ!」「グワーッ!?」モチナガは脳震盪を起こしスタン状態に!間髪入れず、アンダースローめいた動きで股間への掌打!これはコッポ・ドーの奥義、ボールブレイカー! 18

2012-09-22 01:59:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」掬い上げるような掌打が、モチナガの股間を容赦なく破壊!ナムアミダブツ!何たる卑劣な殺人技か!ビッグバンめいた激痛とともに小さく跳ね上がったスキンヘッド傭兵は、月まで飛んでいきそうな錯覚を味わった直後、とどめのコッポ・パンチを顔面に受けて絶命した! 19

2012-09-22 02:06:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リーダーであるモチナガが一瞬で倒されたことに驚いた残りの傭兵たちは、絶句し、敵までタタミ2枚の距離で立ち竦んでいた。コッポ・ドーの自然体の構えで悠然と立つデソレイションは、左右の傭兵を黒目の無い眼で順番に睨みつけ、挑発するように言った。「……アホウども、おれはな、殺し屋だ」 20

2012-09-22 02:13:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リーダーであるモチナガが一瞬で倒されたことに驚いた残りの傭兵たちは、絶句し、敵までタタミ2枚の距離で立ち竦んでいた。コッポ・ドーの自然体の構えで悠然と立つデソレイションは、左右の傭兵を黒目の無い眼で順番に睨みつけ、挑発するように言った。「……アホウども、おれはな、殺し屋だ」 20

2012-09-22 22:41:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

傭兵たちは、2つのボールが収縮するような恐怖を味わった。カラテ段位の差が明らかなのだ。ハッカー・バロンを見捨てて逃げるという選択肢もあるだろう。だが殺人カラテの使い手である彼らは直感していた。この部屋全体が、相手のキリング・フィールドと化しているのだと。逃げ場は無いのだと。 21

2012-09-22 22:49:47