“速い小説、遅い小説” 豊崎由美氏と千野帽子氏と北野勇作氏のやりとり。

三氏のやりとりが興味深かったのでまとめさせていただきました。
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豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

①ある非純文学系の作家にきいたんですが、その方は編集者から「物語を早く動かせ」「主人公は早く登場させろ」という注文をうけることが多いんだそうです。読者の多くは我慢強くなくて、ゆるやかな展開や迂回する語りを好まない、“遅い小説”は途中で読むのをやめてしまうから、と。

2012-09-29 10:43:03
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

②なるほどー、だから最近のエンタメ系小説の多くは……(以下、愚痴を自粛)と納得がいったんですが、しかし、まあ、編集者のそういう通俗的な教育的指導がある限り、日本からはトマス・H・クック級のミステリー作家は生まれにくいだろうなとも思った次第。

2012-09-29 10:47:04
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

③結局、“遅い小説”を書きたいなら、まず、速い小説を書いて売れろということなんでしょう。でも、かつてとはちがい、今の日本ではその「売れる」とう域に達すること自体が難しい。90年代にデビューした作家は、その点では恵まれているといえるかもしれない。21世紀の作家は大変だ。

2012-09-29 10:54:22
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

④わたし自身は、遅延につぐ遅延、脱線につぐ脱線、迂回につぐ迂回によって、「自分は今いったい何を読まされているんだろう」と見当識を失うような小説が大好物ですけど。で、海外文学にはそういう小説、ざらにありますよね。

2012-09-29 10:56:44
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

その点で、バランスよく遅くて素晴らしいと思うのが、フローベールの『ボヴァリー夫人』。webちくまの連載で考察しているので、よかったら読んでみてください。「バックナンバー」ってとこに入ってます。 http://t.co/uvGM6e0b

2012-09-29 11:05:36
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

@toyozakishatyou 「遅い」というのと「かったるい」というのは違うのに、そういうのをひとくくりにしてしまうのは、「ベストセラー小説の書き方」とかを鵜呑みにしてるんでしょうね。「遅くて緊張感が持続してる小説」とか「速くてかったるい小説」なんか、いくらでもあるのに。

2012-09-29 11:07:17
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

そのとおりっ! RT @yuusakukitano 「遅い」というのと「かったるい」というのは違うのに、そういうのをひとくくりにしてしまうのは、「ベストセラー小説の書き方」とかを鵜呑みに//「遅くて緊張感が持続してる小説」とか「速くてかったるい小説」なんか、いくらでもあるのに。

2012-09-29 11:09:29
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

読者を我慢のきかない(そして硬いものを噛めない)老人だと思って痒いところにサーヴィスしていたらほんとに読者にそうなった、というわけで編集者のマーケティングが読者を「育てた」わけですねー。QT @toyozakishatyou なるほどー、だから最近のエンタメ系小説の多くは……

2012-09-29 11:10:53
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

さすが千野さん。皮肉の切れ味がちがいますw RT @chinoboshka 読者を我慢のきかない(そして硬いものを噛めない)老人だと思って痒いところにサーヴィスしていたらほんとに読者にそうなった、というわけで編集者のマーケティングが読者を「育てた」わけですねー。QT //

2012-09-29 11:14:03
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

最近の話ではないし、純文学も例外ではないと思ってます。私が19歳から33歳まで日本の現代小説を読まなかったのはお作法感が苦手だったからです。 @toyozakishatyou

2012-09-29 11:19:44
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

「お作法感」。なるほどです。千野さんが苦手だったのはたとえば? RT @chinoboshka 最近の話ではないし、純文学も例外ではないと思ってます。私が19歳から33歳まで日本の現代小説を読まなかったのはお作法感が苦手だったからです。 @toyozakishatyou

2012-09-29 11:22:43
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

それも偏見なので一時頑張ってまた読みましたが、5年くらい続けたあと「エンタメ」はほとんど読まなくなって現在に至る。むかしの山田風太郎とか読んでるほうがゼッタイ楽しいもの。同時代の編集者に切り捨てられた読者は同時代の小説を捨てるというお話でした。 @toyozakishatyou

2012-09-29 11:23:09
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

「同時代の〜」のくだりに激しく首肯 QT @chinoboshka //5年くらい続けたあと「エンタメ」はほとんど読まなくなって現在に至る。むかしの山田風太郎とか読んでるほうがゼッタイ楽しいもの。同時代の編集者に切り捨てられた読者は同時代の小説を捨てるというお話でした。

2012-09-29 11:25:51
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

当時お作法感を感じたのはじつは第3世代SFにたいして。いま読みなおしたらまた違うと思います。RT @toyozakishatyou 「お作法感」。なるほどです。千野さんが苦手だったのはたとえば?

2012-09-29 11:27:05
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

純文学にもそういうお作法感を感じましたか?(すみません、質問ばかりで) @chinoboshka

2012-09-29 11:28:32
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

勝手に感じてたつもりでしたが、そもそもそんなこと言えるほど当時は読んでなかった(←海外のポストモダン小説とか読んでる奴が陥る典型的なミス)と10年以上経って気づいて反省。当時は私小説とかつまんねえと思ってました。内向の世代に失礼なことをした。 @toyozakishatyou

2012-09-29 11:31:46
豊崎由美@アンチ維新 @toyozakishatyou

あ、「内向の世代に失礼なことをした」という気持ち、わかります。わたしもその魅力に気づいたのはずいぶんのちになってですから。「内向の世代」なんてネーミングがよくなかったと八つ当たりしてみるw RT @chinoboshka

2012-09-29 11:34:00
北野勇作 『100文字SF』発売中! @yuusakukitano

ああ、「お作法」ですね。ま、あのやり方なら小説が読めなくてもダメ出しができるから。 RT @toyozakishatyou 「お作法感」。なるほどです。千野さんが苦手だったのはたとえば? RT @chinoboshka 最近の話ではないし//お作法感が苦手だったからです。

2012-09-29 11:34:29
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

「読めなくてもダメ出しができる」! 確かに。RT @yuusakukitano ああ、「お作法」ですね。ま、あのやり方なら小説が読めなくてもダメ出しができるから。 QT @toyozakishatyou 「お作法感」。なるほどです。QT @chinoboshka //お作法感//

2012-09-29 11:36:08
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

もともと蔑称ですからね。QT @toyozakishatyou 「内向の世代に失礼なことをした」という気持ち、わかります。わたしもその魅力に気づいたのはずいぶんのちになってですから。「内向の世代」なんてネーミングがよくなかったと八つ当たりしてみるw

2012-09-29 11:36:50
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

ミステリ論とか俳論とか書くたびに事情通に叩かれます。日本では「すでにそういうのを好きな人」の愛情の歴史に泥を塗らないように作るか(固定客向けレーベル化)、「これ以上新しいことを知りたくない人」用の間口の広さで勝負するか(宮部・東野)ですよね。 @toyozakishatyou

2012-09-29 11:42:20
千野 帽子 翻訳「小説列伝」準備中 @chinoboshka

事情通のどこが哀しいかというと、上から目線なところではけっしてなく(私も上から目線。下から目線よりよっぽどマシ)、対象にたいする自分の愛情の歴史に固執している、なんか必死なところです。そういう物言いしかできないからあの人たちは所詮事情通なんですよ。

2012-09-29 12:06:29