判例の読み方・勉強法 ―抵当権に基づく妨害排除請求権などを例に―

@igakiさんのツイートを中心に、メモとしてまとめたもの。
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弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

あれ、債権譲渡でも304条の「払渡しまたは引渡し」にあたるとしてたか。勘違いしてたな。

2010-07-27 20:48:41
shoya @sho_ya

@igaki 判例は,304条の「払渡し又は引渡し」を「『弁済』に近いもの」と捉えているふしがあります。

2010-07-27 20:50:58
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

@sho_ya 平成17年判決の「物上代位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含むものというべき」という文言からすると、「他の人の支配圏内に入っちゃったものについてはもう優先権を行使させないよ」というニュアンスが感じ取れますね。

2010-07-27 20:54:34
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

昭和60年判決は転売代金債権を差押え・仮差押えした=取立て禁止&弁済禁止にしただけで、まだ差押債権者のもとには何も行ってないからまだ先取特権行使していいよ、と判断したと覚えておこう。

2010-07-27 20:56:46
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

抵当権に基づく妨害排除請求権は物権的請求権であり、物権的請求権を行使するためには物権が侵害されていなければならない。しかし抵当権は交換価値を把握するのみの担保権であって、ただ占有されているだけでは侵害されているとはいえない。ではなぜ抵当権に基づく妨害排除請求権は認められるか?

2010-07-27 21:06:36
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

それは「抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ、抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるとき」には、当該不動産の使用収益のみならず交換価値の把握を困難にする=抵当権を侵害しているといえるから。交換価値の実現が妨げられているといえるかは、結構慎重な事実認定が必要。

2010-07-27 21:10:35
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

平成17年判決はもう何度も読んでるんだけど、抵当権のいい勉強になるなあ。

2010-07-27 21:13:17
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

平成17年判決が占有者の競売手続の妨害目的と抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難な状態を認めた事実認定というのは大事ですよね。所有者の債権者への支払状況・第三者(占有者)との賃貸借契約の内容(賃料・保証金の相場との比較)・占有者との関係・所有者の行動などなど。

2010-07-27 21:22:14
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

抵当権に基づく妨害排除請求権の要件事実って地味に難しいと思う。

2010-07-27 21:52:02
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

抵当権に基づく妨害排除請求権の話ですが、実務家の方はいきなりこれを行使することはしないらしいですね。債権者代位構成の方が訴訟経済的にいけてるから。両者の要件事実はほとんど重なるので競売手続の妨害目的とか優先弁済請求権の行使困難要件は占有正権原の抗弁が出てきてから主張するのですね。

2010-07-27 22:07:46
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

ローで身につけた判例を読みのコツ:1.事実関係(いつ誰が何をしたのか)を把握する2.事実関係から「何条の」「どの文言」の解釈が(またはどんな権利について)問題になっているかを把握する(明示的には書いてないことがある)3.規範を把握4.規範の理由付けを把握5.事実認定の要素を把握

2010-07-27 21:29:14
@deneige428

@igaki 破棄判決の場合は,どの点の解釈が異なるかを見極めやすいですよね。これとの関係で,なぜ差し戻されたのかを考えてみるのも勉強になる。

2010-07-27 23:20:52
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

1.事実関係の把握と5.事実認定の要素を把握するというのはロー生には相当重要なスキルだと思う。なぜなら、特に刑訴の場合には顕著だけれど、判例を前提とした問題を出す場合にはここをずらしてくるから。つまり、判例の事実関係&事実認定とこれくらいずらしたら結論はどう変わる?を聞いてくる。

2010-07-27 21:31:42
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

実務では判例とまったく同じ事案が問題になることはまあないわけで、判例と類似の事案で「どこまで判例の射程は及ぶか?」「この判例の決定的な要素は何か?」を考える習慣を付けさせることで、応用力を試そうとしているのだと思っております。

2010-07-27 21:33:58
@deneige428

@igaki だから1本でもいいから判例評釈(字数目安1万字)を本気で書いてみると勉強になりますよ。本当は,そういう勉強を勧めたいけど現状ではねぇ…。

2010-07-27 23:19:24
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

「判例をよく読め」という先生がいるけれど、それは「ちゃんと勉強しろ」と同じくらい意味のないアドバイス。「よく読め」というのなら「具体的にどういう行動をすればよく読んだことになるのか」ということを教えないと。

2010-07-27 21:39:17
uz @untitledzoo

最近新人によく言ってます。「読むこと」自体は情報を得る手段に過ぎなくて、それが目的ではない。 RT @igaki: 「判例をよく読め」という先生がいるけれど、それは「ちゃんと勉強しろ」と同じくらい意味のないアドバイス。「よく読め」というのなら「具体的にどういう行動をすればよく

2010-07-27 21:43:07
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

あと法律学を勉強しはじめの人は、判例なんか読まない方がいい。なぜなら判例になるような事件はいわば限界事例なわけで、それはつまり典型的な事例からはかけ離れているから。学部時代にこれを知らず、典型例を知らずにぐだぐだ勉強してしまってよくわからなくなったおいらからのアドバイス。

2010-07-27 21:42:29
Ryota Matsunami @maznami

私は税法しか分かりませんが(いや、それすら完全ではない)、言われてみればその通りです。むしろ、よく読むと特殊な事例だったりすることもあります。RT @igaki: あと法律学を勉強しはじめの人は、判例なんか読まない方がいい。なぜなら判例になるような事件はいわば限界事例なわけで…

2010-07-27 21:52:45
Ryota Matsunami @maznami

ただ、特殊な事例ゆえに立法趣旨に立ち返って考えねばならないようなことも多く、ハッとさせられることなども多いです。RT @maznami: 私は税法しか分かりませんが(いや、それすら完全ではない)、言われてみればその通りです。むしろ、よく読むと特殊な事例だったり…RT @igaki

2010-07-27 21:55:58
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

租税法は所得の区別とか文言解釈の判例なんかは超重要ですけれど、それ以外は相当異常な処理してるものが多いですよね。RT @maznami: 私は税法しか分かりませんが(いや、それすら完全ではない)、言われてみればその通りです。むしろ、よく読むと特殊な事例だったりすることもあります。

2010-07-27 21:57:01
大神令子(特定社会保険労務士) @oogami_sr

あー。たった1件の最高裁判決を大上段に掲げたTV番組があったな。弁護士さんが出てるヤツでw 特殊事例を普遍化させる危険性について番組にメールしたけどww RT @igaki あと法律学を勉強しはじめの人は、判例なんか読まない方がいい。なぜなら判例になるような事件はいわば限界事例な

2010-07-27 21:53:48
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

絶版><RT @nodahayato: つ「判例とその読み方」 RT @igaki: 「判例をよく読め」という先生がいるけれど、それは「ちゃんと勉強しろ」と同じくらい意味のないアドバイス。「よく読め」というのなら「具体的にどういう行動をすればよく読んだことになるのか」ということを

2010-07-27 21:48:16
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

あ、三訂版が出てましたRT @igaki: 絶版><RT @nodahayato: つ「判例とその読み方」 RT @igaki: 「判例をよく読め」という先生がいるけれど、それは「ちゃんと勉強しろ」と同じくらい意味のないアドバイス。「よく読め」というのなら「具体的にどういう行動を

2010-07-27 21:48:57
弁護士井垣孝之(法務アウトソーシング) @igaki

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2010-07-27 21:49:26