山本七平botまとめ/自然の秩序を好み「作為」を嫌う日本人の行動原理とは?/~「組織」で動くのではなく、礼の秩序を基にした「人の和」で動く日本人~

山本七平・岸田秀の対談集『日本人と「日本病」について』より抜粋引用
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】【「なる」と「する」】前略~【山本】(山本七平:以下[山本])結局神を持ったヨーロッパ人と持たなかった日本人の違いなんです。旧約史というのは思想闘争史の面と、契約更改史の面とがあるんですよ。<岸田秀との対談集『日本人と「日本病」について』

2012-09-28 18:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

2】【山本】神との契約というのはいわば憲法ですが、これの改正みたいなもので、何回も更改するんです。そう言うと「へえーッ」という人が多いけど、アブラハム契約とかシナイ契約とかシケム契約とかナタン契約とかに学者は分けますが、社会の変化に応じて神との契約を改訂するわけです。

2012-09-28 18:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

3】【山本】だから旧約・新約という言葉が出てくるんですね。キリスト教とは、そこまでは更改されてきた古い契約で、ここからが新しい契約だという意味で「新約(ニュー・テスタメント)」となるわけです。日本の神話は自然生成説なので、自然に生まれたんだから、契約の相手はいない。

2012-09-28 19:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

4】【山本】天然自然の秩序というものが、おのずからあるわけです。さっき話の出た、自然の秩序と社会の秩序と内心の秩序の合致という発想ですね。こういう発想をすると、困ったことに原則は自然であるということになっちゃう。 【岸田】(岸田秀:以下[岸田])ええ。

2012-09-28 19:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

5】【山本】この自然とは何かというと、自然科学ではないんで、おのずからしかるべき状態になればいいんです。だから必ず出てくる言葉が「花は紅、柳は緑」と。おのずと「なる」のであって「する」のではない。

2012-09-28 20:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

6】【山本】いまもって日本人の行動基準はそうでしょう、「こうします」とは言わない。「こうなりました」とか「それだとこうなります」と言う。 【岸田】会議の結果、こうなりました、という。誰がしたのかはわからないわけですね。

2012-09-28 20:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

7】【山本】そうです。日本の会議はまさにそのために、誰がしたかわからない形にして「こうなる」ためにあるわけでしょ。「する」は作為であって、あいつは作為があって嫌な奴だということになる。周囲との対応に応じてある結果になるという状態がもっともいいんです。

2012-09-28 21:28:03
山本七平bot @yamamoto7hei

8】【山本】それがさらに具体論になってくると「形」の重視ということになる。石田梅巌が「形ハ直ニ心ナリト知ルベシ」と言い出すんですね。虎が虎の如く行動するのは虎の形を持っているからだ、人間にとっても形は心なのであって、形を重んじよ、と。

2012-09-28 21:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

9】【山本】これはまず、馬が草を食うごとく、ノミが血を吸うごとく、この形にきめられた行動原理では人は労働によって食を得るのが行動原理だということになり、最終的には社会秩序はすべてちゃんと型にはまっていなければいけない。

2012-09-28 22:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

10】【山本】つまり礼儀の秩序ですね。組織じゃないんです。ですから挨拶から服装までうるさいんです。日本というのはそういう社会なんです。 【岸田】なるほど。 【山本】たとえばスプルーアンス海軍提督を下士官が平気でファーストネームで呼んだというわけですよね。

2012-09-28 22:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

11】【山本】イスラエルの軍隊もそうなんですが、組織という意識がはっきりしているから、上官をたとえば「ヘイ・ジョー」と呼んでも、上官の訓示を寝っころがって聞いていてもなんでもない。日本では「形は心」だから、形を崩した瞬間に心の秩序も崩壊してしまう。

2012-09-28 23:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

12】【山本】教授に対して「てめェ」と言えば、それで大学はもうなくなってしまうわけです。この、「形は心」みたいな行動原理が日本人にはあるんじゃないでしょうかね。組織原理でないという意味では、軍人勅諭もそうです。

2012-09-28 23:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

13】【山本】あれはまず忠節、次が礼儀でしてね。作戦要務令を読んでも、組織原理ははっきりしない。

2012-09-29 00:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

14】【山本】「戦闘序列ハ戦時又ハ事変ニ際シ天皇ノ令スル作戦軍ノ編組ニシテ之二依り統率ノ関係ヲ律スルモノトス」に始まって、戦闘序列を組まなければならないわけですが、つまり方面軍の編成も師団の編成もぜんぶ勅令なんですよ。

2012-09-29 00:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

15】【山本】こうなると前線の変化しつつある状況の中ではどうにも方法がなくなっちゃうわけです。もちろん軍隊区分という便宜的方法はあるんですが、たとえば、半減した部隊を二つあわせてすぐ一個師団として機能さすようなことはできない。

2012-09-29 01:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

16】【山本】ドイツ軍は、モスクワの前面からベルリンまで撤退してきても、再編成しながらなお戦闘を続け、ベルリン攻囲戦でソビエト軍に十万の損害を与えている。日本ではそんなことできなくて、徹底的に頑張るけれども、極限にきてパッと崩壊したらそれでおわり。

2012-09-29 01:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

17】【山本】共同体が解体するようなものですから、それを集めたって組織にならない。軍人勅諭にも組織という言葉が出てこないし、日本軍には組織がどういうものかということが、本当はわかっていなかったと思うんですよ。

2012-09-29 02:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

18】【岸田】人の和、人間関係で集団がまとまっているから、生き残りの兵士を集めて員数を揃えても、組織として戦力にならんのですね。

2012-09-29 02:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

19】【岸田】親身になって部下の面倒をよく見る中隊長と、この中隊長のためなら命を捨てる部下という、長いあいだかけてできあがった人間関係に支えられているわけだから、その支えがなくなると、どうしようもないんですね。秩序は礼によって保たれているわけですね。

2012-09-29 03:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

20】【山本】礼であり、形ですね。日本人は子供をあんなに甘やかしてどうなるんだろうと外国人はいうけれど、大体18歳くらいになると、みんな同じになっちゃうでしょう。 【岸田】ちゃんと秩序に入ってしまう。

2012-09-29 03:57:40
山本七平bot @yamamoto7hei

21】【山本】やっぱり新井白石のいう「教えて治に至る」ですよ。基本的には日本の幼児教育というのは「あれしなさい」「これしなさい」でしょう。 【岸田】ええ、ベクトルが「しなさい」という方向に向いている。 【山本】ユダヤ人は絶対そうは言わないんです。こうしては「いけない」と言う。

2012-09-29 04:27:53
山本七平bot @yamamoto7hei

22】【山本】旧約聖書のモーゼの十戒等を元にして、613ヵ条の法規(ハラハー)をつくり、16世紀頃に法律みたいに箇条書きにして更に細かく注解したものがあるんですよ。「シュルハン・アルフ」というんです。彼らの宗教法の元になるものですが、これも殆どが禁止規定ばっかりです。

2012-09-29 04:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

23】【山本】ところが、日本は「しなさい」型だというと、むこうの教育学関係の先生が、それは大変新しい教育法だというんですね。どうも「するな」ばかりの教育に対する反省が出てきているらしいんですね。そこで日本がとても立派に見えるらしい。(笑)

2012-09-29 05:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

24】【山本】これは原則が違うにすぎないんだけど。彼らの場合、これはいけない、と規定してゆくと、それ以外はなにをしてもいいということになりますね。だからどうしても論争が必要になっちゃう。~後略

2012-09-29 05:57:42