キリング・フィールド・サップーケイ #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
文学 書籍 ニンジャスレイヤー
2
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「キリング・フィールド・サップーケイ」#2
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(これまでのあらすじ:退廃のサイバー未来都市ネオサイタマには、今なお多くのカラテ・ドージョーが残されている。その中のひとつ、タコロー・コッポ・ドージョーは、かつてタコロー=センセイに破門された師範代タギ・トワによってドージョー・ヤブリを受け、暗黒コッポ・ドージョーへと変わった)
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(続き:タギが破門された理由は、コッポ・ドーの禁断技を用いて殺人家業を密かに営んでいたこと。ドージョーを奪って以降、彼はさらに自暴自棄になって大っぴらに殺人依頼を請け負い、悪逆の限りをつくした。ヤクザクランに殺されるはずだったタギは、ニンジャソウルの憑依によって一命をとりとめ…)
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(続き:無所属の殺し屋ニンジャ「デソレイション」と化したのだ。新たな依頼を受けた彼は、ハッカー・バロンを殺すべくエンガワストリートへ向かう。獲物を殺すことには成功したが、彼はその際にアマクダリ・セクトのニンジャ「レイディアンス」を殺してしまった。ブッダ!トラブルの臭いがするぜ!)
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
プゥオオオーン、プゥオオオオオオオーン……荒みきった電子コムソ・シャクハチの音が、デソレイション・コッポ・ドージョー内に鳴り響く。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」マグロめいた目で木人トレーニングや実戦組手を繰り返す門下生たち。未来の殺人カラテマン、その数は20名弱。 1
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
広大な畳敷きドージョーの北と東には縁側があり、ショウジ戸で仕切られた小部屋がいくつも並んでいる。これらの部屋には、ドージョー・インナーサークルの人間しか立ち入ることを許されない。それぞれの小部屋のショウジ戸の前にはアンドン・ライトが立てられ、神秘的な炎をゆらめかせる。 2
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
かつてこれらの部屋で、高潔なるタコロー=センセイは瞑想やショドーなどを行っていたのだろう。だが今夜、そのうちのひとつから漏れ出してくるのは、高級オイランたちのとろんとした嬌声と乾いた笑い声……そして若い男の嗚咽。 3
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アイエエエエエエ……」鼻と耳を紐ピアスで繋いだその小太りのサイバーゴスは、タタミの上に正座し口元を手で押さえながら、3Dボンボリモニタに映る殺人映像を見ていた。ボンボリをはさんだ向かい側には、数段高くなったタタミの上に座るデソレイション。彼は6人ものオイランを侍らせている。 4
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「どうしたんだい、トバツ=サン、あんたの依頼通りにしてきてやったんだ。ハッカー・バロンも、その兵隊どももな。ハナビみてえに、弾け飛んださ……フゥー……」デソレイションは半分剥かれたフルーツの如き痴態のオイランが掲げる薬物キセルを吸い、荒野の如き無表情のまま煙を吐いた。 5
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アハハ……アハハハハ……」床に転がったゴスオイランが3Dモニタを指差し、ハッカー・バロンの情けないズームアップ映像を見て笑った。「アーン……」「アーン……」右からはイチジクを、左からはタマゴ・スシを半分咥えたオイランがしなだれ、それを口移しでデソレイションに捧げようとする。 6
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ナムアミダブツ……!なんたる堕落ぶりか!さらに周囲には丸いスシ重箱が重ねられ、酒瓶がいくつも転がっている。だが当のデソレイションに笑みは無い。ニンジャと化して殺人稼業を続けるうちに荒みきった彼の心は、もはや薬物でも、オイランでも、博打でも、満たされることはなくなったのだ。 7
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アイエエエ……ブッダ……」依頼人は吐き気と失禁をこらえながら、必死に3Dモニタを凝視する。3ヶ月前、クラブでDJを勤める建気なサイバーゴスであったトバツは、卑劣なハッキングと暴力により婚約者をハッカー・バロンに奪われ、しかもハズカシメされた彼女は恥辱のあまりセプクしたのだ。 8
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
怒り狂ったトバツは、ありとあらゆる手段で復讐を試みた。だが敵は私兵ギャング団を持つハッカー・バロンである。同級生もマッポもヤクザも、トバツを助けてはくれなかった。そんな時彼は、殺人稼業を営む堕落したカラテマンの噂を聞きつけたのだ。 9
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
今宵、始めのうちトバツは昂揚感に囚われながら殺人映像に見入った。自分が無敵のカラテ有段者となり、ギャングどもを殺してゆくような快感を味わった。だがそれもコッポ・ドーの禁断技が繰り出されるまでのことだった…(((ああ……なんたる非道!……ブッダ!僕がこれを望んだのか!?))) 10
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
敵の体を容赦なく破壊し、身動き不能の状態に追い込んでから、確実に処刑してゆく……デソレイションのサイバネ・アイに録画されたその非道なダーティファイト映像を見ているうちに、トバツはこの殺し屋の荒みきった魂を覗きこんでいるかのような錯覚に襲われ……恐怖が復讐心を塗り潰したのだ。 11
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ハッカー・バロンで終わりじゃねえのさ……フゥー……ほら、巻き戻すぜ……床に転がってる傭兵もひとりひとり、始末してやった。目を覆ってもらっちゃあ、困るな……依頼人が最後まで見届けて納得しなかったら、カネを受け取れねえ……」デソレイションは真白いサイバネアイで依頼人を見た。 12
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アッハイ」トバツは小さく失禁してから、両目を覆っていた手を膝の上に戻す。この男を怒らせれば、自分も殺される気がしたからだ。トバツはもはや、殺し屋に対して敬意など微塵も抱いていなかった。早くこの化け物にカネを払って帰りたい……そしてフートンに入って寝たい……それだけだった。 13
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
正座するトバツの横には、フロシキ包みの重箱。その中には依頼のために借金して作ったカネが、違法素子の形で納められている。彼が新築住宅をローンで買い、その住宅ローンをネコソギ・ファンド社の仲介で債権化してもらうと、いくらか借金マージンが貰える……最近とても人気の借金システムだ。 14
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
国税による再生オペレーションを受けたネコソギ・ファンド社とアマクダリの暗黒癒着については、いずれまた語る機会があるだろう。いずれにせよこれが、彼が依頼料を工面できた理由である。とはいえ、この依頼料は法外な金額ではない。デソレイションは堅気の市民からしか依頼を受けないからだ。 15
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
当然その依頼料も、堅気の市民が工面できる範囲を超えない……なぜそのような殺人料金システムを今なお守るのか、それは当のデソレイションにも解らないだろう。彼は真白の荒野に捨て置かれた、半ば壊れたデヴァイスのように、かつての行動を反復し続けているだけだ。危ういノイズを増しながら。 16
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「オミソレ・シマシタ……」最後の傭兵が絶命するのを見届けたトバツは、恐怖に顔を歪めながら深々とドゲザし、闇社会プロトコルに従ってクエスト完了承諾のヤクザスラングを捧げた。デソレイションが頷く。そしてトバツは顔を上げ、重箱を差し出そうとし……3Dモニタの残り映像を横目で見た。 17
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
3Dモニタの映像は、後始末を全て終えたデソレイションがハッカー・バロンの部屋で録画した、意味の無い最後の10秒間だった。デソレイションはまず、光に引き寄せられる蛾のようにジーザスIVのスクリーンを一瞥し、唾を吐き捨てると、それから奴隷ゴス女たちを見た。映像はそこで終わった。 18
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「あ……あの……」「何だ…?」トバツは浜辺に打ち上げられたマグロのように口をパクパクさせた後、殺し屋に問われ、一度口篭った。それから頭を下げ直して重箱を差し出そうとし……思い留まった。「み、見間違いでなければ、最後に映ったゴスガールズの中に……こ、婚約者のワモ=サンが……」 19
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「婚約者はセプクしたんじゃねえのか?依頼の時に、そう聞いてたぜ」デソレイションは顔色ひとつ変えず、キセルの煙を吹いた。オイランたちは震え上がるトバツを見て、ケミカルなクスクス笑いを漏らした。「いえ……彼女の死体を確認したわけではなかったんです……」トバツは混乱し、取り乱す。 20
NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「フゥー……見間違いだろ」デソレイションは煙を吹きながら、面倒臭そうに立ち上がり、3Dボンボリを蹴飛ばしてずかずかと依頼人に歩み寄った。「いえ、でもあれは……」トバツはそれに気付かぬまま、タタミを凝視し、ニューロンの中の記憶を整理しようとする。直後、身体が浮かんだ。 21
残りを読む(19)

コメント

オスツ🍣 @alohakun 2012年10月7日
キリング・フィールド・サップーケイ #1 http://togetter.com/li/378622 キリング・フィールド・サップーケイ #3 http://togetter.com/li/385886
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする