イザヤ・ベンダサンbotまとめ/「秘密を守るということ」がどういうことかを知らない日本人

イザヤ・ベンダサン著『日本人とユダヤ人』/安全と自由と水のコスト/P26頁以降より抜粋引用。
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イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

1】前略~こういうゴマのハエだらけの社会に生き続けてきた国民は、また特にその中のユダヤ人は誰でも保険という事を考える。しかし日本では厳密な意味での保険といった考え方は極めて稀薄である。日本人の生命保険に関する考え方は戦前には貯金の一形態であり今でもその色彩が強い<日本人とユダヤ人

2012-09-27 17:58:48
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

2】当時は徴兵保険などというのがあったが、これは保険ではなく一種の貯蓄である。今でも「子供が大学に入るころ満期になるように」などというのもこれと同じである。これは少しくおかしい。保険と貯金とは正反対の筈である。貯蓄は将来の安全確固が前提の筈で、保険は将来の不安が前提の筈だ。

2012-09-27 18:58:48
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

3】これは大部分の日本人が~略~その心底では保険の必要を認めていない(即ち安全は「ただ」の筈だ)から、従って保険のセールスマンはこれを一種の貯蓄ですよ、利殖ですよ」といって売り込まざるを得なくなる。

2012-09-27 19:58:52
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

4】いわば正反対のものにすり替えて売っているのであり、恐らく日本ではこれ以外に方法がないであろう。本当に保険に入るのなら、その前に家の構造から子供の教育まで、当然やっている事がある筈である。

2012-09-27 20:58:49
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

5】フランスの農民がナポレオン金貨を床下に埋めるのも一つの損害保険、ユダヤ人がダイヤの指輪をはめるのも一つの生命保険である(といってもおわかりにならないであろう。数人の暴漢に襲われたら、指輪をぬいて「ダイヤだぞ」と叫びつつ相手に投げつけ、その暇に逃げる)。

2012-09-27 21:58:52
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

6】これは序の口であって、ユダヤ人なら子供の時から徹底した保険教育をうける。それがどのようなものか、次の話を読んで頂きたい。実をいうとこの話は余りしたくないのである。もう十年以上前だが、私はある日本女性から「ユダヤ人は嫌いだ」とはっきり面と向って言われた事がある。

2012-09-27 22:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

7】彼女はアメリカに留学していたが、ある日、偶然、隣家のユダヤ人か実に奇妙な事をするのを見聞してしまった。このユダヤ人には五人の子供がいた。ある日その父が息子の一人に「二人で財産を隠しておこう」といい、百ドルを屋根うらの壁のすき間に押し込み、それを「兄弟にも母にも(続

2012-09-27 23:58:52
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

8】続>絶対に言ってはいけない」と言っているのを知ってしまったのである。「何ということでしょう。本当に守銭奴ですわ、親兄弟にまでお金を隠すなんて――あれじゃあ、偏見をもたれるのもあたりまえですわ」。そんな奴らは人面獣心といった言い方であった。

2012-09-28 00:58:35
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

9】~略~この日本女性が見聞したユダヤ人の場合にも、その前に父親がこんこんと息子に言ってきかせた事がある筈なのだ。これが危険の分散即ち保険の第一歩なのだ。そしてそうするのが家族の為であり、家族の安全の為であって、家族を愛しているからにほかならない。

2012-09-28 01:58:35
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

10】もし仮に家族の一人がマフィアにでも誘拐されたとしよう。~略~無名のユダヤ人の子がひとり消えても新聞種にもなるまい。警察がユダヤ人に何をしてくれよう。地方警察の中にマフィアの手先がいないと誰が保証してくれるであろう(と考えざるを得ないのは残念なことだが――)。

2012-09-28 02:58:32
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

11】息子は拷問に合い、家の金のありかを全て白状させられた上で、嬲り殺されてセメントづめにされて海に投げ込まれても、何のニュースにもならないであろう。だがもし私がこういう目にあったら、家の金のありかなど知らない方が気が楽であろう。

2012-09-28 03:58:34
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

12】たとえ自分の身の不幸はなげいても、知らないことは本当に知らないのだから、どんな拷問にあっても家族に累を及ぼす心配はない。私ならその方が気が楽である。中世以来、何度も繰り返されたゲットー掠奪は、相互に知らないことが保険の第一歩とユダヤ人に教えた。

2012-09-28 04:58:33
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

13】勿論、掠奪が終れば生き残った家族はみなそれぞれ自分だけが知っている場所から金を取り出して、互いに助け合ったことは言うまでもない。わざと知らせない、わざと知ろうとしない、ということは、守銭奴とは違う行為なのである。

2012-09-28 05:58:36
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

14】だが「誘拐に対処するよう教育せよ」といえば「それは人間不信を教えることだ」という反論か出るほど平和な日本では、今でも、このことを本当に理解してくれる人は少ないであろう。まして十数年前では、私はその日本女性に、何も言えなかったのである。

2012-09-28 06:58:33
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

15】話は横道に逸れるが、これはまた「日本人は秘密を守れない」という通説に通ずるものがある。確かに日本人には「秘密=罪悪」といった意識があり、全て「腹蔵なく」話さねば気が休まらない。と同時に、秘密を守るということがどういうことか知らない。

2012-09-28 07:58:36
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

16】アメリカ人は随分アケッピロゲに見えるが、守るべき秘密は正確に守る。良い例が原爆製造である。日本では、造船所の周りによしずを張ったり、軍需工場の近くに来ると汽車の窓を閉めさせたりしていた――何とナイーブな!アメリカはB29の写真や設計図まで平然と公表していた。

2012-09-28 08:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

17】だが原爆の製造は完全に秘密を守り通していた。私は昭和十六年に日本を去り、二十年の一月に再び日本へ来た。上陸地点は伊豆半島で、三月・五月の大空襲を東京都民と共に経験した。

2012-09-28 09:58:52
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

18】もっとも神田のニコライ堂はアメリカのギリシア正教徒の要請とあの丸屋根が空中写真の測量の原点の一つとなっていた為、付近一帯は絶対に爆撃されない事になっていたので、大体この付近にいて主として一般民衆の戦争への態度を調べた訳だが、日本人の口の軽さ、言う必要のない事まで(続

2012-09-28 10:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

19】続>頼まれなくても言う態度はあの大戦争の最中にも少しも変らなかった。私より前に上陸していたベイカー氏(彼はその後もこういった職務に精励しすぎて、今では精神病院に隠退しているからもう本名を書いても差し支えあるまい)などは半ば呆れて、これは逆謀略ではないかと本気で考えていた。

2012-09-28 11:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

20】「腹をわって話す」 「口でポンポン言う」 「腹はいい」 「竹を割ったような性格」 こう言った一面がない日本人は、殆どいないと言ってよい。従って相手に気を許しさえすれば何もかも話してしまう。しかし、相手を信用し切るという事と、何もかも話す事とは別なのである。

2012-09-28 12:58:48
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

21】話したため相手に非常な迷惑をかける事は勿論ある。従って相手を信用し切っているが故に秘密にしておく事があっても少しも不思議でないのだが、この論理は日本人には通用しない。個人の安全も一国一民族の安全保障も、原則は同じであろう。

2012-09-28 13:58:51
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

22】しかし、日本では牡蠣に果して殻は必要なりや否やで始まるから、知らせない事、知らない事も安全には必要だなどという議論は問題にされない。更に防衛費などというものは一種の損害保険で「掛け捨て」になった時が一番有り難いのだ、という事も(戦前戦後を通じて)日本では通用しない。

2012-09-28 14:58:46
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

23】戦前の軍人に「あなた方は役に立たない事が(即ち無用の長物である事が)最大の御奉公なのだ」などと言ったら、それこそ「無礼者め」であったろう。そして咢堂翁の言った「平時の軍人は晴天の唐傘」という言葉も、戦後の「税金泥棒」も、実は同じ論理の帰結の別の表現にすぎない。

2012-09-28 15:58:50
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

24】とすれば敗戦の悲劇も戦後の議論の混乱も「安全と水とは無料が当然」という生得の考え方に発している。いやこれは考え方といった様な生易しいものではない。もう問答無用の自明の公理なのである。従っていかに効率的に低コストで安全を計るかなどという考えはその考え方自体が論外になってくる。

2012-09-28 16:58:47
イザヤ・ベンダサンbot @Isaiah_BenDasan

25】自衛隊が災害牧前に出動すると、急にその評価が高まり新聞の扱い方まで暖かくなる。いわば天災に対処するものなら意義はあるが、他の面では全く無意義かつ有害とされるのである。ああ、日本人は何と幸福な民族であったことだろう。

2012-09-28 17:58:49