2012年10月4日

山本七平botまとめ/【空気の研究④】/対象を対立概念で捉え相対化せずに、ただひたすら絶対化することが「空気支配の原則」/~様々な物神によりあらゆる方向から逆支配され金縛り状態の日本人~

山本七平著『「空気」の研究』/「空気」の研究/44頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

1】今までのべた例は、簡単にいえば「空気の一方向的支配」の例、言いかえれば、臨在感的把握が絶対化される対象を、仮に一つとし、しかも相互の感情移入による相互の臨在感的把握が起りえない、最も単純化された場合である。<『「空気」の研究』

2012-10-02 21:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

2】だが我々の現実世界はそのように単純でなく、人骨・カドミウム金属棒・ヒヨコ・保育器の内部・車等々は、あらゆる方向に、臨在感的把握を絶対化する対象があり、従って各人はそれらの物神によりあらゆる方向から逆に支配され、その支配の網の目の中で、金縛り状態になっているといってよい。

2012-10-02 21:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

3】それが結局「空気」支配というわけだが、その複雑な網の目を全部ときほぐすわけにいかないから、まず、二方向・二極点への臨在感的把握を絶対化し、その絶対化によって逆にその二極点に支配されると、それだけで人が完全に「空気に支配され」て、身動きできなくなる例をあげよう。

2012-10-02 22:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

4】この例は、日本が重要な決定を下すとき、たとえば日華事変の本格化、太平洋戦争の開始、日中国交回復等に、必ず出てくる図式である。だがここでは、現在において、まず明確に残っている最高の例と思われる西南戦争をとろう。

2012-10-02 22:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

5】これならば、すでに歴史上の事件であるし、戦ったのは同じ日本人同士だし、従って外交的配慮から虚報を「事実だ」と強弁する必要もないし、事実としなければ反省が足らんと言われることもあるまい。

2012-10-02 23:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

6】またどちらを仁徳にあふれる神格化的存在としようと、どちらをその対極にある残虐集団と規定してあろうと、共に日本人だから、どこからも文句は出まい。歴史上の事件で国内事件の場合は、こういう点で、いわば「無害化」されているので、非常に扱いやすい。

2012-10-02 23:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

7】そしてその基本的図式は、実は現代と全く同じである点で格好のサンプルである。西南戦争は、いうまでもなく近代日本が行なった最初の近代的戦争であり、また官軍・賊軍という明確な概念がはじめて現実に出てきた戦争である。こういう見方は、戦国時代にはない。

2012-10-03 00:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

8】同時に、大西郷は、それまで全国民的信望を担っていた人物である。従って西郷危うしとなれば、全国的騒乱になりかねない、否、少なくとも「なりかねないという危惧」を明治政府の当局がもっていた戦争である。

2012-10-03 00:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

9】ということは「世論」の動向が重要な問題だった最初の戦争であり、従ってこれに乗じてマスコミが本格的に活動し出し、政府のマスコミ利用もはじまった戦争である。

2012-10-03 01:28:02
山本七平bot @yamamoto7hei

10】元来日本の農民は、戦争は武士のやることで自分たちは無関係の態度(日清戦争時にすらこれがあった)だったのだが、農民徴募の兵士を使う官軍側は、この無関心層を、戦争に「心理的参加」させる必要があった。

2012-10-03 01:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

11】従って、戦意高揚記事が必要とされ、そのため官軍=正義・仁愛軍、賊軍=不義・残虐人間集団の図式化を行ない、また後の「皇軍大奮闘」的記事のはしりも、官軍は博愛社により敵味方を問わず負傷者を救う正義の軍の宣伝もはじまった。

2012-10-03 02:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

12】いわば、日中国交回復に至るまでの戦争記事の原型すなわち「空気醸成法」の基本はすべてこの時に揃っているのである。まず西郷軍「残虐人間集団」の記事が出る。次に掲げるのは、そのほんの一例である。《官兵を捕へて火焙りの極刑・酸鼻見るに堪へず…(~以下記事本文省略~)》

2012-10-03 02:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

13】こういう記事を次から次へと読まされると、日中国交回復前の「日本人残虐民族説」にも似た「鹿児島県人残虐民族説」が成り立ちそうだが、ちょっと注意して読めば、これが創作記事であることは、だれにでもすぐに見抜けるであろう。

2012-10-03 03:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

14】まず「酸鼻見るに堪へず」という表題は、まるで自分が目撃したか、目撃者に直接取材したかの印象を与えるが、事実は、目撃者「証人」は、不明なのであって「見たりとて語りしを又伝に聞きたる」と伏線がはってある。

2012-10-03 03:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

15】「事実か否か、調べるから目撃者に会わせろ」と西郷側かそのシンパから言われても…それは不明で押し通せる。第二に「何つ頃の戦ひにや」で「時日」が明らかでなく「某神社の境内」で場所が明らかでない。それでいて、賊の描写はまことに具体的で、あたかも見て来たかの如くに書いている。

2012-10-03 04:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

16】さらに、事件はこれだけでないという形で信憑性をもたすため「既に陸軍の属官某も此刑場に焼殺されし」としているが、その人名・階級・日時も明らかでない。

2012-10-03 04:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

17】またおかしいのは「既に……」同じ刑なら「銅華表を中頃より二つに切り」は、その時に行なわれていて、今回はそれをそのまま利用したはず、更にこれが初めての試みでないなら、まるで見てきたように書いている”賊”の相談の状態は明らかにおかしい。

2012-10-03 05:27:55
山本七平bot @yamamoto7hei

18】その相談の描写は、今までやったことのない新趣向でやろうという相談のはず、そうでなければ「何にか面白き趣向ほど……」と相談してから銅華表を二つに切ることはありえない。

2012-10-03 05:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

19】従ってこれは『私の中の日本軍』で分析した「百人斬り競争」や「殺人ゲーム」の嚆矢ともいうべき記事である。非常に残念なことに、日本の新聞には、一世紀に近い、この種の記事を創作する伝統があると見なければならない。この記事は1877年だからである。

2012-10-03 06:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

20】もちろん残虐記事は前述のようにこれだけでなく、「官軍の戦死者の陰茎を切ってその口にくわえさす」「強姦輪婬言語外の振舞」等様々の趣向をこらして創作しているのは、うんざりする。

2012-10-03 06:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

21】言うまでもないが、このような形で西郷軍を臨在感的に把握し、その把握を絶対化すれば、西郷軍は「カドミウム金属棒」すなわち、即座に身をひるがえしてそれから去るべき、神格化された「悪」そのもの、いわば「悪の権化」になってしまう。

2012-10-03 07:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

22】従って、当初は西郷側に同情的だった者も、また政府と西郷の間を調停してすみやかに停戦して無駄な流血をやめよと主張した者も、その上で西郷と大久保を法廷に呼び出して理非曲直を明らかにせよと上申していた者も、すべて「もう、そういう事の言える空気ではない」状態になってしまう。

2012-10-03 07:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

23】というより、おそらく、そういう空気を醸成すべく政府から示唆された者の計画的キャンペーンであったろう。一方これの対極は、いうまでもなく神格化された「善」そのもの、「仁愛」の極である天皇と官軍である。

2012-10-03 08:28:08
山本七平bot @yamamoto7hei

24】そしてそれへの臨在感的把握を絶対化するためしばしば大きく紙面に登場するのが博愛社である。次にその一部を引用するから、前述の「賊軍残虐人間記事」と対比して読んでほしい。(~記事本文省略~)こういう形で、官軍を臨在感的に把握しそれを絶対化する。

2012-10-03 08:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

25】すると人びとは、逆にこの神格化される対象に支配されてしまい、ここに、両端の両極よりする二方向の「空気」の支配ができあがるのである。こうなると、人びとはもう動きがとれない。そして全く同じ図式は日中国交回復のときにもつくられた。

2012-10-03 09:28:07
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