安眠練炭氏による某作品の感想

まとめておく意義があると思ったのでまとめておきます。作品名は伏せろ、と最後にエクスキューズされているので伏せときますが、分かる方には分かります。
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安眠練炭 @aNmiNreNtaN

先ほど、叙述トリックを使ったミステリを読みました。私は自慢ではありませんが、予め叙述トリックが使われていることを知った上でミステリを読んで、トリックが見破れなかったことがこれまで一度もありません。それがなぜ自慢にならないかといえば、(つづく)

2012-10-06 19:36:28
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)叙述トリックとはもともと原理的には可能性が貧困なものだから、基本パターンを知ってさえいれば誰でも脳内データベースを検索して類似例を思い出すだけで容易にトリックを見抜くことができるからです。だから自慢にならないのです。(つづく)

2012-10-06 19:38:38
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)さて、先ほど読んだミステリは「叙述トリックだけ」というチープなものではなく他にも仕掛けがありました。むしろ叙述トリックは副次的な仕掛けとも言えます。だから、「この作品に叙述トリックが使われていることくらい言ってもいいだろう」と思う人がいても不思議はありません。(つづく)

2012-10-06 19:42:21
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)実際、私はそのミステリが叙述トリックを使っていることを予め知らされて読んでも十分に楽しむことができたので、叙述トリックに言及した人のことを非難するつもりはありません。とはいえ、私自身は、やはり未読の人に向かって叙述トリックのことを告げる気にはなりません。(つづく)

2012-10-06 19:46:40
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)というわけで、前置きが長くなりましたが、これからその作品の感想を、作品名を特定できない仕方で述べようと思います。もちろん、これまでの呟きからある条件を満たす人々には私がどの作品について述べているかは一目瞭然でしょうし、それを承知の上で書くのですが。(つづく)

2012-10-06 19:52:05
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)その小説は主人公の「私」がある特殊な状況で、外界について極めて限定された情報しか入らない中で、ある殺人事件について語る、というスタイルをとっています。この設定だけでもいくつかのトリックの可能性が思い浮かぶところです。(つづく)

2012-10-06 19:56:31
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)主人公の回想シーンに登場する主要人物は本人を含めてわずか4人。その中に犯人と被害者がいるのですから、最初から可能性は極端に絞られています。その中で作者が仕掛けたのは、私の整理では次の3つです。(つづき)

2012-10-06 20:00:18
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)1つは主人公の属性に関するトリックで、これは叙述トリックです。最後の一行で明らかにされ、鮮やかな幕切れを演出しますが、重要度という点では3つの仕掛けのうち最も軽いものだと思われます。2つめは犯人を巡る人物の取り違えです。(つづく)

2012-10-06 20:05:46
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)2つめの仕掛けは叙述トリックではなく、語り手本人が事実誤認しているというものです。そして、この小説の最大の仕掛けは、死体損壊の動機に関わるもので、おそらくミステリ史上空前の(絶後かどうかは不明)アイディアが使われています。(つづく)

2012-10-06 20:09:49
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)これら3つの仕掛けのうち、1つめのものは比較的簡単にわかりました。叙述トリックなのですから、予め身構えていれば当たり前。カサックの某作品(と、ぼかしても作品数が少ないのでバレバレですね。すみません)とバリンジャーの某作品を彷彿させます。(つづく)

2012-10-06 20:13:20
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)で、1つめの仕掛けに気づけば、作者が読者に思い込ませようとしている構図と矛盾があるので、何かそこに人物に関わる誤認があるのではないか、と推測するのは容易です。主人公の認識は著しく制約されているので、普通ならあり得ない人間違いをしているのだろう、と。(つづく)

2012-10-06 20:17:12
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)で、人物の誤認があるとすれば、主要人物が4人しかいないので、「本当は誰だったのか」は丸わかりとなります。従って、2つめの仕掛けも見破ることができました。そして最後に残った3つめの仕掛けですが……これはわからない、見当もつかないものでした。(つづく)

2012-10-06 20:25:53
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)まあ、犯人と被害者の性別から、昭和初期のとある有名猟奇殺人を連想により、部位についてはある程度見当がついたのですが、もちろんこれは根拠のない思いつきに過ぎず、理詰めによる推理ではありません。結果的に当たってはいましたが、こんなのは見破ったうちには入りません。(つづく)

2012-10-06 20:31:02
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)ひとつ負け惜しみを言わせてもらうなら、3つめの仕掛けは最後に「そういうことであった」と説明されるだけで、推理によってたどり着けるようなものではないと考えられます。(つづく)

2012-10-06 20:35:47
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)もっとも、いくつか手掛かりとなる伏線が張られているので、想像力とひらめきが豊かな人なら真相に到達できるかもしれません。このあたりの評価は難しいので、今のところは保留しておきます。ただ、あのアイディアが素晴らしいことは素直に認めます。(つづく)

2012-10-06 20:39:20
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)素直に認めます、と書きながらケチをつけるのもどうかと思うのですが、木々高太郎とか法月綸太郎の先行作品を連想したことを打ち明けておきます。全然違うといえば違うのですが……。あのアイディアは日本だとたぶん1987年頃からでないと実現できないものですし。(つづく)

2012-10-06 20:46:42
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)テクノロジー開発から四半世紀が過ぎて、いずれは誰かが思いつくアイディアだった、といえばそれまでですが、あのアイディアをあのような形でミステリに取り入れた作者の力量には敬服します。(つづく)

2012-10-06 20:52:07
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)あのアイディアはおそらく再使用不可能なので、たとえば、どろどろとした人間関係の中に放り込んで、親子二代の重苦しい因縁話にする、などの可能性の芽は摘まれてしまったわけですが、仮にそういうプロットを考えた作家がいても納得してくれるだけの出来映えだと思います。(つづく)

2012-10-06 20:56:38
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)いい小説を読ませてもらいました。今後の活躍にも期待します。(おわり)【この一連のツイートをまとめようとする奇特な人がいるかもしれませんが、作者名・作品名を伏せた趣旨を踏まえて適切な取り扱いを希望します】

2012-10-06 20:59:24