権丈善一『医療政策は選挙で変える』まとめ

H.Takano @midwhite

自分たちの最も関心のある政策ばかりに焦点を当てた投票行動は民主主義の邪道である。間接民主主義における選挙は、複数の争点が一つにまとめられた「争点の束」の良し悪しを競うものであり、有権者もそれをもとに投票するのが正しい民主主義の在り方だろう。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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しかし2005年の郵政民営化選挙で、有権者に「争点の束」として政治案件を提示すべきところをシングル・イシュー化することによって、与党は大勝した。この体験を共有する政治家たちは、今後シングル・イシュー選挙への誘惑から逃れることは難しいだろう。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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経済の素人は大きな政府が経済の活力を失わせると言うが、政府の規模の大小が経済成長に何らかの系統的な影響を与えるという実証的な証拠は得られていない。経済の悪化を福祉政策の責任にするのは、情緒的な心理要因によると見なして良さそうである。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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高校生の大学志望校で、医学部の人気が高まっている。ところがその一方、将来の就職先である医療の危機を語る「医療崩壊」という言葉が定着してきた。高校教員などの受験関係者には、医療の現場が崩壊の危機に瀕していると言われても信じがたいであろう。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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今日の医学部の難易度は、他の学部と比べて圧倒的に高い。しかし、この状況は90年以降に現れた新しいものである。一方、医療の現場が崩壊の機器に直面している事実もかなり新しい話であり、その専門的で閉鎖的な世界の問題についてはあまり知られていない。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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2007年に行われる参議院選挙を前に、医療問題に関する政策を公約の柱に据える政党はまだ一つもない。大衆からの得票を期待する政治家は、彼ら大衆が医療の危機に気づいていないと見越しているために、医療を守る政策では票が得られまいと予測している。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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医療費は個人間の売買ではなく、国家でプールされた売買である。医療費は、あたかも家計における医療費が家族間でシェアされるように、市や県の間でもシェアされる。その結果、国内の医療費総額の予算制約は、市や家計の所得ではなく、国の総国民所得となる。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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正しいと信じ得る政策を考えた時、その実行可能性や世の中をその方向へ動かす方法についてまで考えるのが政治経済学であり、そのためメディアの情報伝達過程や政治家の意思決定過程の分析も、普通の経済学者が行う制度の効果分析と同じ比重を研究に占める。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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英国保守主義の原点となる思想を創り上げたエドモンド・バークは、1780年に選挙演説を次の言葉で結ぶ。「もし私がこうした頑固さを全て公言するなら、議会に選出されないかもしれない。しかし私は、善を為し悪に抗する為にこそ、議員でありたい。」(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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私は教育や医療の為の資源を社会から優先的に確保し、それらの平等消費が実現し、さらに非正規の就業形態でも賃金率や社会保険の適用面で不利にならない社会を実現するべく有権者を説得し、政治家が国民に負担を求めてもひどい目に合わない日本を準備したい。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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現代国家の役割は、基本的に年金給付、医療給付をはじめとした社会保障給付、それに公的教育給付である。ちなみに社会保障給付費に占める生活保護はわずか３％で、うち50％強は医療扶助に使われるため、日常生活を補助する部分は１％強に過ぎない。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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社会保障給付費の中で圧倒的な割合を占めるのは年金の53％であり、次いで医療の32％である。ついでに言えば、高齢者世帯の所得に占める公的年金給付の割合は、2003年度で七割を超えている。社会保障は弱者の問題ではなく、国民全体の問題なのである。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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世襲閨閥議員の典型であるらしい安倍首相が推し進めている政策のうち、極めて順調に効果が出ている二大政策は、官僚破壊と医療破壊であるように見える。即ち、文系受験競争の勝者たる官僚及び理系受験競争の勝者たる医師の権力剥奪と地位の引き落としである。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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安倍政権は、一方でしっかりと勉強した子どもたちの行き着く先の官僚・医師の自尊心を傷付けながら、他方では教育改革もやりたいらしい。果たしてこの２つは両立するのだろうか。立身出世が死語となり、教育がエリート再生産システムとして機能していない。(権丈善一『医療政策は選挙で変える』)

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【読了】『医療政策は選挙で変える 増補版―再分配政策の政治経済学4』権丈 善一 ☆5 http://t.co/rLGvMLdy #booklog