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2012年10月9日

叙述トリック講義

安眠練炭さん @aNmiNreNtaN による、ミステリにおける叙述トリックのお話です。
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安眠練炭 @aNmiNreNtaN

叙述トリックというのは、ミステリにはフェアプレイというルールがあるという前提で、それを逆手にとって仕掛けるものですから、基本的にはミステリに固有の事柄だと思います。もちろん、具体的なテクニックの中に他のジャンルにも応用可能なものがありますが、評価基準が違ってくるのでは?

2012-10-08 12:32:17
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

実質的にはあからさまに嘘をついて読者を騙しているのに、個々の表現の字面を見ればそこには全く嘘は書かれていないのだからアンフェアではないのだ、という開き直りが叙述トリックの醍醐味です。ミステリ以外でも「嘘をつかずに嘘をつく」という例はありますが、「叙述トリック」と呼ぶのは大げさ。

2012-10-08 12:39:02
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

まあ、「叙述トリック」というのは便利な言葉ですから、ミステリ以外のジャンルに拡張したほうが都合がいいなら別にそれでも構わないのですが、同じ言葉を使っていても、ルール侵犯すれすれのタブー感の有無ないし濃淡は違ってくるわけですから、議論の射程次第では要注意。

2012-10-08 12:43:06
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ちなみに、私は映像作品については、ミステリであるかどうかに拘わらず、「叙述トリック」という言葉を用いません(マンガの場合はちょっと微妙)。だってそこにははなから「叙述」がないのですから。

2012-10-08 12:45:41
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ミステリを読み始めたばかりの人が、叙述トリックに触れて興味を持ち、「何か面白い叙述ものはない?」と訊かれたなら、私なら普通に応じます。初心者だから東野圭吾のアレはハードルが高そうなので同じ作者の比較的難易度が低いほうにしておこう、という程度の配慮はしますが。

2012-10-08 12:52:37
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ミステリとそれ以外の文芸ジャンルの間にあるのは「ルール運用の厳正さ」の違いでしょうか? 「地の文で嘘をついてはいけない」というルールはミステリに固有のものでは? 他のジャンルでも、普通は地の文では真実を語るものだとされていますが、それは作者に課せられた規範でしょうか?

2012-10-08 15:00:28
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ミステリ以外のジャンルだと、字面の上で誤った記述をしておいて、あとの方で「あのときにはAと書いたが、実はAではなくBだった」と書いて事後訂正しても、アンフェアだと謗ることは普通はないでしょう(読者がミステリ中毒で何でもミステリ寄りに読もうとしているなら別ですが)。

2012-10-08 15:07:09
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

「叙述トリック」をフェアプレイのルールを前提としたものだとして使い続けるのなら他のジャンルにそのルールを当てはめて論じるのは大げさになるでしょうし、小説一般に適用される緩やかな約束事に読み替えるなら、同じ「叙述トリック」という語を使っても意味合いが違ってきますよね。

2012-10-08 15:17:38
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

自然発生的なものであれ、不文律であれ、あるいは人によって少しずつ理解が異なるものであれ、ルールはルール、規範は規範です。「ただ何となく、そういうふうになっている(ことが多い)」というのとは違います。もちろん、ルールの有無は明確に線引きできないので、中間領域があるのは確かですが。

2012-10-08 15:23:00
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

というわけで、私はミステリと他のジャンルが地続きであることは認めます。しかし、(ここから先は理解されるかどうか不安なのですが)ミステリと他のジャンルの間には歴然とした制度上の差異があり、しかもそれは程度問題でもあるのです。

2012-10-08 15:26:07
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

「歴然とした制度上の差異」と「程度問題」が両立しうるという発想を正当化するのは難しいのですが、例示だけなら簡単です。「民主制と絶対王政」とか「現金掛け値なしと値切り上等」とか。私たちの世界は、時間的にも空間的にも歴然とした制度上の差異が境界なしに併存している不思議な世界なのです。

2012-10-08 15:34:21
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

と、ミステリの話がいつの間にか形而上学っぽくなったところで終了します。環境により何を言っているのか把握しづらい人もいるとは思いますが、まあ誰か奇特な人がまとめてくれるでしょう。まとめ人がいなければ闇に消えますが、それもまたよし。

2012-10-08 15:39:48
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

叙述トリックのことを考えるのは、事物と言語の関係について考えるということですから、言語哲学への第一歩を踏み出したことになります。

2012-10-08 22:38:25
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

叙述トリックのパターンって何通りくらいあるのか、と考えているうちに訳がわからなくなりました。何通りかと数える以前に、説得力のあるパターン分けの仕方を考えるほうが難しそう。

2012-10-08 23:46:19
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

たぶん最も古くからある叙述トリックは、視点に関するトリックでしょう。要するに「語り手が犯人」というアレ。私の知る限りでも19世紀には既にこのパターンの作例があります。

2012-10-08 23:48:29
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

叙述トリックで視点のトリックについで古いのは、人物などの属性に関するトリックかもしれません。いわゆる「男女トリック」とか。いや、もしかすると小説の構造に関するトリックのほうが古いかも。

2012-10-08 23:51:06
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

小説の構造に関するトリックというのは、たとえば交互に配置されたAパートとBパートが実は全然別の時代だった、とか、両パートに別名で登場する人物が同一だったとか。後者の作例が19世紀にあったことをたったいま思い出しました。

2012-10-08 23:55:02
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

比較的最近開発された叙述トリックとしては、人称に関するトリックがあります。一人称の「わたし」が語り手だと思ったら、実は「和多氏」だった、とか。

2012-10-08 23:57:06
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

最近開発された叙述トリックのパターンにはもう1つ、「逆叙述トリック」とでも呼ぶべきものがあります。私は2例しか知りません。

2012-10-08 23:59:57
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

昨日の叙述トリックの話題に関して少し考えたのですが、「テクニックとしての叙述トリック」と「ツールとしての叙述トリック」という区分はどうでしょうか? 前者は、ここでこう書けば読者がこう誤認する、というような具体的な技術のことで、後者はそのような技術が小説にもたらす効果のことです。

2012-10-09 08:03:47
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

「ミステリにおける叙述トリック」「ミステリ外における叙述トリック」というような区別でもいいのですが、それでは「叙述トリック」という語がミステリ以外について語る際にも用いられるという言語的風潮を整理したもので、単に同音異義語にインデクスをつけただけ、ということにもなりそうです。

2012-10-09 08:08:05
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

叙述トリックのテクニックはミステリ以外にも応用可能ですが、ミステリのツールとしての叙述トリックは、当たり前ですがミステリに固有のものです。それに対して「ミステリ以外の小説のツールとしての叙述トリック」という表現も可能ですが、固有性云々は問題外となるでしょう。

2012-10-09 08:12:36
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

問題は「ミステリ固有のツールとしての叙述トリック」という言葉を用いても、果たしてそれが一枚岩かどうか、ということです。さまざまなミステリでさまざまな狙いを込めて叙述トリックが使われます。それらに共通の機能ないし意義があるのかどうか……。

2012-10-09 08:16:59
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ペッサリーの話は置いといて叙述トリックに話を戻しますが、たとえば同じ男女トリックでも、「男だと思っていた人物が実は女でした!」という意外性を主眼としたものと、「犯人は女だがこの人物は女だ。だからこの人物は犯人ではない」と誤った推理に誘導するものがあります。

2012-10-09 08:39:26
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

ミステリ読者の中には構成の緊密さを重視する人がいて、そういう人には「実は女でした!」タイプの叙述トリックは評判がよくないのですが、推理誤導型は単純明快ではないので、どちらが上とも下とも一概には言えません。

2012-10-09 08:45:57
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