最終章とかそのあととかのあれこれ

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn 「……ちっ。一体何がどうなっているんだ」突如訪れた不可解な事象に思わず毒づく。数刻前、何の前触れもなく上空に現れた大岩。そこから無数の蔦と魔物。それらが文字通り傾れ落ちるように降り注ぎ、或いは襲い掛かり、市中を混乱の極みへと誘った。 #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn 「ヒリン。はぐれるなよ」そんな中、夜影は治癒術を操る準司祭を傍らに置き、魔物の討伐指揮、また自身も前線での戦闘に加わっていた。とにかく魔物の数が尋常ではない。戦える者、戦いを補助出来る者は皆例外なく、戦場へ駆り出されていた。 #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn 準司祭の少女を守りながら夜影は一匹、また一匹と魔物を切り捨てていく。――その折、地を蹴る蹄の音が耳を掠めた。鵬翼軍か、騎士団か。戦力が増えるに越したことはない。「ツィーミーバ！！」馬上の人影を視認した少女が、その名を声高に響かせた。 #シカニア

蜜 @mitsu_d

@sagamkei @s_ririn 魔物が次から次へとわいてでてくる。しかし新たな力を得た少年には、まだ余裕の表情がある。　また一体、魔物を片し馬を走らせると、突如、自分の名を呼ぶ声が聞こえた――　反射的にそちらへ剣先を向けるが、姿を確認し、目を見開いた #シカニア

蜜 @mitsu_d

@sagamkei @s_ririn いや、声で、誰か察しはついていたが…　しかし　「ヒリン…モッサーグも一緒か…」構えた剣は下ろさない。鋭い目で、彼等を見つめた。 #シカニア

nrr @s_ririn

@mitsu_d @sagamkei 姿を確認すると同時に体は走り出していた。目の前の少年は鋭い眼差しで剣を構えたままだったが、怯むことなくぶつかるような勢いでその体に縋りつく。「……っばか！！今までどこで何してたの！！！！どれだけ心配したと思ってるのよ！！！！」 #シカニア

nrr @s_ririn

@mitsu_d @sagamkei 「何の連絡もないし生きてるどうかもわからないし！元気ならちゃんと連絡しなさいよ！よくみたら怪我もしてるし…！！」思いつくままに気持ちをぶつける。心配したのよ、馬鹿。そう訴えるようにどん、と胸のあたりを何度も叩く。 #シカニア

nrr @s_ririn

@mitsu_d @sagamkei 「貴方はいつも本当に、無茶、ばっかり…っ！ばか、ばか！！！！」思いきり叱ってやろうと思っていたのに、いつの間にか胸にあるのは安堵の気持ちばかりで。じわりと涙が溢れた。「…無事で、よかったあ……っ」 #シカニア

蜜 @mitsu_d

@s_ririn @sagamkei ばか、ばか、と自分より少し年上のその女の子に胸元をドンドンとたたかれる。真っ先に、また怒られるとばかり思っていたのだが…　彼女に泣かれると、どうも調子が狂う。関係ないでしょ、そう言おうと口を開いたが、言葉にせず、口を閉じた。 #シカニア

蜜 @mitsu_d

@s_ririn @sagamkei 何を言ってもきっと意味が無い。　無事でよかったと、胸でなく彼女のぬくもりに、ふと、小さな少女の暖かさを思い出した。　　無意識に、手が彼女の肩に触れたところで、はっと手が止まる。　何か…よく、わからない、わからない。何かが、揺らいだ #シカニア

蜜 @mitsu_d

@s_ririn @sagamkei 行き場の無い手をしばし見つめ、すっとおろし、かわりに自らの衣を掴み、彼女を自身から離すと不器用に、あふれてくる涙をぬぐう「…ヒリン、いい加減なきやんでよ」　言うも止まらない…　（めんどくさい…女の扱いなんて知らないよ…！） #シカニア

蜜 @mitsu_d

@s_ririn @sagamkei 後ろで、やれやれという表情をしていたモッサーグへ、どうにかしてくれという視線を向けた #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn 「……くっく！ おまえの撒いた種だろう。自分で何とかするんだな」 ツィーミーバの困惑した視線を受け、苦笑とも取れる声が漏れる。ツィーのこんな表情を見たのは一体いつ振りか。ふと、過去の懐かしい記憶が脳裏をよぎった。 #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn 「しかし、ツィーの言い分にも一理ある」言いながら、一向に泣きやまないヒリンの頭を撫でる。「ヒリン。抱えたものは沢山あるだろうが、今はやるべきことがある。全てが終わった後に、全てをぶつければいい。涙だけでは、誰一人救えんよ」 #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn これで、納得してくれればいいのだが。乗せた手はそのままに、視線をツィーへ向ける。「感動の再会に水を差すようで悪いが、ゆっくりもしてられんのでね。丁度いい、おまえも手伝え。まさか、遊びに出てきたわけでもあるまい？」 #シカニア

nrr @s_ririn

@sagamkei @mitsu_d 「……っ、はい、今は泣いてる場合じゃない、ものね」顔を上げ、まだ溢れようとする涙を強引に拭い少年を見据える。「ツィーミーバお願い、一緒に来てほしいの。私は貴方のように戦う事はできないから…モッサーグに、力を貸してあげて下さい」 #シカニア

nrr @s_ririn

@sagamkei @mitsu_d ぺこりと頭を下げ、もう一度少年を見つめる。彼の実力は知っている。1人でも問題なく戦える事も。でも。「……もう、ツィーミーバに1人で無茶されるのも、…置いていかれるのも、嫌だわ」そう言って、そっと彼の手に触れた。 #シカニア

蜜 @mitsu_d

@s_ririn @sagamkei 触れられた手を、彼女を、かつての師を、順に見る。一拍置き…「騒動がおさまるまでだからね」「…モッサーグ足引っ張らないでよ」　ニヤリ、笑って再び剣を手に取った #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d @s_ririn 「……くっく！ 言うようになったな。――ツィーよ。くれぐれも自信と驕りを履き違えるな。年寄りからの、最後の授業だ」その言葉に、自身への戒めも込めて。「ヒリン。おれとツィーから離れるなよ」 かつての弟子に背中を預け、夜影は剣を構えた。 #シカニア

nrr @s_ririn

@sagamkei @mitsu_d 「はい！治療は任せてくださいね！」少年の言葉に安堵の笑みを浮かべ、男の言葉に応じる。よし、と踏み出しかけたところで「あ、」思い出したように少年に一言。「私、まだ怒るのやめた訳じゃないからね！後でたっぷり話聞いてもらいますから！」 #シカニア

蜜 @mitsu_d

@sagamkei @s_ririn ヒリンの言葉に「げ」と眉間に少ししわがよる。めんどくさい、騒動がおさまれば早々と退散させてもらおう。そう思うも、心に何か針がひっかかったような感覚が残る。そんな感覚も、タイミングを見計らったかのように現れる魔物によってかき消された #シカニア

蜜 @mitsu_d

@sagamkei @s_ririn ヒリンを護りながら、お互いの背中を任せてかつての師弟は次々と魔物を倒してゆく。時にはフォローし、時にはフォローされ（もっと、もっと…！）以前モッサーグと会った時よりもさらに強く、強く、激しく。剣に風をまといながら、少しでも多くを… #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d 「……ツィー。なにを焦っている？」 かつての弟子に背中を預け、魔物の群れを切り裂いていく最中、感じた違和感。本気であたることはいい。だが、余りにも余裕がなさ過ぎる。昔から手加減は出来ないタイプではあったが。「生き急ぐことに、意味はないぞ」 #シカニア

さがもさん@佐賀崎しげる @sagamkei

@mitsu_d 魔物の襲撃が一段落ついたところで、青薔薇へと視線を向ける。ヒリンがあそこまで心配するのも、今のツィーの姿を見れば納得もするというものだ。「暇つぶしに聞かせろ。おまえはその若さで、その手に、何を求めている」 #シカニア

蜜 @mitsu_d

@sagamkei 何を求めているか？「そんなの、昔も今も変わらない。知ってるだろ、僕は力が欲しいんだ」ぎゅっと拳を握って「力を…1人で生き抜く力を」誰にも虐げられない、誰にも負けない、そんな。「僕は上しか見ない」揺ぎ無い瞳でモッサーグを見据えた #シカニア