【明るい午後を盗む】福間健二 2factory13
Can I lyrically fuck you? 日曜日、雨の渋谷でささやく声がして、箱をかくす者たちのこの世の、何番目の肉に忠誠を誓うぼくだったのだろう。いま、まちがって消えたのは。精神、神経、経験、それぞれの箱のなかに、ふわっと。(明るい午後を盗む1)#2factory13
2012-10-08 09:32:03あんまり考えてなくて目標とか目的もなかったが、ワニの背中に乗って移動していた。爬虫類時代を真剣に生きなかった埋め合わせになるだろうか。気がつくと裸足で、爪先の泥に、影。ついに会ってしまう。二十四歳の女性郵便局員。彼女はたくさん夢を見る。(明るい午後を盗む2)#2factory13
2012-10-09 06:42:14かわいい人。体のなかで箱がガタガタいって、この秋を楽しめない。でも、つらくはない。一列に並ぶ者たちのいる社会、その古い足跡や気配に敏感になりすぎない。よかった、眠りながら素直な細胞が育っている。そう、夢のなかでぼくたちはすべてを知る。(明るい午後を盗む3)#2factory13
2012-10-10 10:40:37自分がどんな箱のなかにいて、そして、それから、浸透力の足りなさを補うためにとりだされる肉の、まちがった濃度や曲線を、だれの撫でる手に許されているか。呼びかけると応えてくれる夢の丘。そのまま、動かなくていい。変化のほうが斜面をおりてくる。(明るい午後を盗む4)#2factory13
2012-10-11 06:41:12古い要素と新しい要素のあいだの、鏡のなかの、生まれる前からの演技。存在する。呼吸する。つまり、ミスをする。この、ぼくの東アジアは、肉体的に最悪だ。精神的に最悪のときの自分にやさしく接してくれた虫たちとの結合を、いつまでも後回しにして。(明るい午後を盗む5)#2factory13
2012-10-12 07:51:49流れてきて、しばらくとどまり、また流れていく。休息は、とれなかったかもしれない。でも、くぐるべき次の失敗、感謝する手でそっと触っていい「嘘」が、先で待っている。痛いなあ、と言うな。二つのベクトル。接続、完了。みんなに感謝させるのだ。嘘。(明るい午後を盗む6)#2factory13
2012-10-13 08:33:50嘘でも、感謝の場所。その夜にどんなつなぎまちがいが起こっても、だれの使ったマットレスに寝させられても、目ざめることができる。尖った破片になって、埃のなかに。ぼくは質問しないKなのだ。鉄の手がおかれた溝のふちに立つ。いまは、落ちないよ。(明るい午後を盗む7)#2factory13
2012-10-14 11:35:06そして次々に届く箱をあけて、自分がからっぽになる。まどろめば、ここになんでも入ってくる。「ほんとに、それでいいのかよ」と呆れてくれる妹たち、扉のしまらない食器棚、ノックする音。嘘をつく、世界でいちばん美しい声。信じなくても、希望の場所。(明るい午後を盗む8)#2factory13
2012-10-15 08:05:36破れた靴とセットで使われる鉄の手が、下に敷かれた枯葉が、秋で、さよならだ。悲劇には終わりがあるということ。わかったね、細胞たち。だれの感謝、だれの仕事、だれの希望、だれの犠牲で、ここに明るい午後が来て、食器棚の幽霊も散歩に出かけるのか。(明るい午後を盗む9)#2factory13
2012-10-16 06:56:11日本列島がどんな爬虫類なのかも、わかった。このリズム、箱のなかの、いまは骨と骨、部品と部品になった斜めの動物たち。夢の丘から転がってきたのだ。渋谷、クロコダイル。抒情的に、健康になる。鳥類くん、ミセイちゃん、明るい午後をありがとう。(明るい午後を盗む10)#2factory13
2012-10-17 09:29:36