科学報道を殺さないために-研究機関へお願い

科学記者の方の立場からのつぶやきです 古田さんは日経サイエンスの記者をしています
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古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

今,この状況で記者の側から発言するべきかどうか,かなり迷った。私も今日,自分の記事に訂正出したばかりだ。だけどやっぱり書いておこうと思う。

2012-10-18 00:10:29
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

大学や研究機関が研究発表・取材を一元管理せよ、との声が散見されます。そう仰る理由もよくわかります。ですが,それをしたら科学報道は死にます。(続)

2012-10-18 00:10:59
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

発表だけを書いてると,記者が無能になるからです。みんな一緒に1時間の発表を聞いて,2時間で記事を書く。記者には必要なスキルです。でもそれでは知識はつかないし,研究者との関係も築けません。記者は鍛えられません。(続)

2012-10-18 00:11:40
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

わからなくても論文を眺め,研究会に出て,面白いと思った研究者に会いに行く。自分で考え,ほかの研究者の意見を聞き,記事を書く。そういう取材をしていれば,その分野の風景が見えてきます。「!」と思ったら誰かに電話をかけ,議論することができるようになります。(続)

2012-10-18 00:15:43
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

記者は自分で研究していません。たとえ理系の大学院なんかを出ていたって,あらゆる先端研究の内容を,自力で評価できるわけがないのです。記者の判断は,研究者の話を聞く中からしか生まれません。(続)

2012-10-18 00:20:56
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

ある成果に対する評価が研究者の間で大きく割れることもあるし,分野や立場が違うと全然違う見方をすることもよくあります。記者はそれを聞き,比較し,伝える必要があります。発表では決してわかりません。(続)

2012-10-18 00:21:40
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

大学や研究所の広報といえども,個々の研究発表の妥当性を検証するのは不可能です。広報が宣伝していた人が実はおかしかった,という実例もあります。またどういう縛りをかけようと,あさっての方向に行っちゃった研究者が自らマスコミに接触するのは防げません。記者を鍛えるしかないのです(続)

2012-10-18 00:22:45
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

理系出身の記者、研究経験のある記者を増やすのは大賛成ですが,そこが本質ではありません。私は理系の修士ですが、記者の検証能力は理系・文系の別より,圧倒的に取材量で決まります。(続)

2012-10-18 00:23:33
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

大学と研究機関にお願い致します。記者が研究者に会うハードルを上げないで下さい。取材の度に広報の許可を取れなんて言われたら記事の質は下がり,誤報は増えます。いつでも議論し,疑問を持った瞬間に携帯に電話し,その場で話を聞く。それができる研究者が何人いるかで,科学記事の質は決まります。

2012-10-18 00:28:19
S.Hirano @Bimaterial

@ayafuruta http://t.co/spbK6bym 一連のツイート拝見しました。それら問題の多くは、研究者の時間を奪わなくとも博士号取得者を科学記者にすることで改善するように思います。専門知識、業界の慣例、研究者とのコネクション、検証能力などが備わっているためです。続

2012-10-18 04:13:50
S.Hirano @Bimaterial

@ayafuruta 業界ごとに要求されるものが違い、それに応じて人を雇うわけにはいかないでしょうが、せめて1社に分野の異なる2人がいれば劇的に改善されるように思えます。そのような狙いのリクルート活動が盛んでないのでは何故か…不躾な質問ながら見解を賜ることが出来れば幸いです。

2012-10-18 04:14:50
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

.@bimaterial 博士号を持った科学記者が増えることは素晴らしいと思います。でも、そういう記者なら研究者にアホな質問をせずにすみ、取材も短時間で終わる、とはあまり思わないです。

2012-10-18 04:51:31
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

.@bimaterial 博士号を持った方でも、論文やリリースを読んで判断し、記事を書ける分野は限られます。例えば地震研究で博士号を取った方が、ヒッグス粒子の記事を書こうとしたら、やはり必死で取材しないと書けないです。それに科学はどんどん先へ進み、学生時代の知識は古くなります。

2012-10-18 04:56:42
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

.@bimaterial 弊誌の編集部に物理・工学系と生物・医学系の博士号を持った方がいたとしたら、前者のここ2年の担当エリアは巨大地震、原子力事故、ヒッグス発見、量子コンピューター、abc予想、小澤の不等式、はやぶさ帰還、クロスカップリング、太陽異常.モノポールなどです。

2012-10-18 05:01:28
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

.@bimaterial 科学を知る人であればなおさら、必死で専門家に聞こうとすると思います。知らずに書くことの怖さを知っているからです。記事の質はきっと向上すると思いますが、研究者に頂く時間はかえって増えると予想します。

2012-10-18 05:06:16
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

現実には、「書くため」に必要な取材をちゃっちゃかしようとすると、研究者さんも「早く済まそうよ」って感じですが、本気で理解するために質問していると目つきが変わり、ペンを取って式やグラフを書き始めます。こうなると時間なんてぶっ飛びます。

2012-10-18 05:45:02
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

気がつけば6時間、8時間ということもザラにあり、空腹か疲労でバテるまで続きます。そういう取材を何度かしていると、咄嗟に携帯に電話できる関係になります。私が言ったのは、そういうことです。

2012-10-18 05:58:49
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

ここ3日ほど,宮城県の鄙びた温泉郷で,量子真空の研究会に参加してました。電波の状況が良くなかったので(あと毎晩星を見ながら飲んだくれていたので),ネットをしませんでしたが,先週の連続ツイートには随分いろいろなご意見を頂きました。

2012-10-23 08:43:14
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

ひとつひとつ御返事するのは無理なので,通常通り,取材の話などをつらつらしながら,思うところを書いていこうと思います。

2012-10-23 08:43:41
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

今回,何でも手軽に研究者に頼るな,自分で論文を読みこめ,という意見を頂き,それができたらと私も何度も思ってますが,残念ながら物理の論文はまず読めないです(数学は100%無理)。研究発表も,すでに取材した話でないとついていけない。研究者さんに聞き回るしかないです。

2012-10-23 09:08:44
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

その辺の事情は,分野によってかなり違います。私は医学・生物のバックグラウンドはないですが,こちらの分野なら,事前に一応論文に目を通すことはできます。研究発表にもそこそこついて行けることが多い。こっちの分野のハードルはそこじゃなくて,

2012-10-23 09:16:03
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

その結果にどんな意味合いがあり,結論をどこまで敷衍できるのかというところです。そこはどうしても,論文だけじゃわかりません。やはり研究者と議論させて頂かないと見えてきません。

2012-10-23 09:17:05
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

私が「研究者の時間を過大に奪っている」という非難には反論できないです。その通りです。しかも本人の研究でないことについて聞いていることが多く,先方は文字通りボランティアです。海外の方など日本語の日経サイエンスに載っても何の意味もなく,完全にやらずぶったくりです。

2012-10-23 09:19:36
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

取材に応じるのが当然だなんて全然思ってないです。すごく感謝しています。でも遠慮はしないです。迷惑になっていると感じたらさすがに引きますが,相手が応じてやろうと思って下さっている限り,ありがたく甘えさせてもらいます。

2012-10-23 09:24:17
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

記事の質というのは,それまでにその分野の研究者に貰った時間の総和に比例するというのが,私の実感です。勉強は常に必要ですが,取材で得られる情報とは質も量もまるで違う。そうして貰った時間が適切だったか迷惑だったかは,記事で判断して頂くしかないと思っています。

2012-10-23 09:28:01