ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ #5

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ノット・ザ・ワースト・デイ、バット・アット・リースト・カースド・エニウェイ」#5

2012-10-18 14:46:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リムジン車内の天井には雄々しき書体で「天下」とショドーされ、車内ボンボリは宝石めいて美しい。紺色のソファー、向き合うように座るは、シャドウドラゴンとワイバーン。ワイバーンの両脇にオイラン。後ろ手に縛られ、うつ伏せに倒されているのはサヌマ。意識はあるが目は虚ろで、涎を垂らす。1

2012-10-18 14:55:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダメドスエ」「口移しで食べてネ」左右からワイバーンにしなだれかかるオイランは競い合うように嬌声をあげ、主の気を引こうとする。ワイバーンはそれを無視するが、満更でもない様子だ。どっかと開いた足の間からバイオサイバネティクス尻尾が伸び、ゆらゆらと揺れている。 2

2012-10-18 14:58:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「腿を揉め」「ウフフ!」両脇のオイランはワイバーンの筋肉の塊めいた腿のマッサージを始める。ワイバーンは腕組みして座る向かいのシャドウドラゴンに水を向ける。「不快かね?マジメ殿」「不快?好きになされよ。オイラン使用を制限する指示は出ておりません」「……フン」不服げに鼻を鳴らす。 3

2012-10-18 15:11:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

向かい合うニンジャはともに竜めいた異形であり、特にシャドウドラゴンは輪郭を絶えず沸騰させる黒い影であるが、よく訓練されたオイランは恐怖に叫んだりはしない。それをすれば己のキャリア、ひいては生命に関して、実際かなり不利益である事が身に染みてわかっているのだ。4

2012-10-18 15:17:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー……」サヌマが呻いた。濁った目がワイバーンを見上げる。ワイバーンの尻尾が動き、毒液をたたえた先端部が眉間に狙いを定める。「それ以上の投与は不要です」シャドウドラゴンが注意した。「わかっておる」ワイバーンは両脇のオイランの豊満な胸を揉み、せせら笑った「元気か?サヌマ=サン」5

2012-10-18 15:20:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー……わかりません」「で、あろうな」ワイバーンは言った「サイコ毒素のその酩酊感を好む愚か者もおるぞ」「アー……わかりません」「で、あろうな」「ウフフ!」オイランが笑う。「アー」「始めるか。貴様の後ろ盾のニンジャは何人だ。ニンジャスレイヤー=サン、レッドハッグ=サン、他には」6

2012-10-18 15:29:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー……その二人のみです」サヌマは呟いた。「本当だな」「アー……本当です」「なぜカベヤ=サンに加担した」「アー……頼まれました……自分から手を貸したのではない……」「他に協力者は」「アー……私は知らない……」「フン」ワイバーンは頷いた。 7

2012-10-18 15:33:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カベヤ=サンは貴様に資料を送ったな?」「アー……それは社屋の地下室に……金庫に隠してあります……」「金庫のダイヤルは」「アー……」サヌマは七桁の数字を呟く。ワイバーンがシャドウドラゴンを見た。シャドウドラゴンは頷き、小型端末で指示を送信した。 8

2012-10-18 15:40:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「情報端末はどこでデータを吸い出す」「アー……トコシマ……データ博物館で……」「あの女は訪れるか?」「アー……わかりません……アー……でも……来るのでは……」「どのみち、追跡させればよい」ワイバーンはシャドウドラゴンに言った。シャドウドラゴンは無言で頷く。「質問を続ける」 9

2012-10-18 15:45:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アー……」「イッキ・ウチコワシの関与は無いか」「アー……ありません……」ワイバーンはシャドウドラゴンに言った「ならば、博物館でケリをつければ、終わりだ。ニンジャスレイヤーの奴も……」「たった今、報告が。ミョルニール=サンが殺されました」「フン。ウカツをしたか」 10

2012-10-18 15:50:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ワイバーンはサヌマの頭を軽く蹴った。「サヌマ=サン。貴様の位置情報をニンジャスレイヤー=サンは共有しているか?」「アー……しています」「ならば遅かれ早かれ現れるか。貴様にはもう少し使い道がある」「敵を排除したのち、再度、念入りにインタビューします」「ああ、念入りにな、何だ?」11

2012-10-18 16:49:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ワイバーンとシャドウドラゴンは接近するニンジャソウルの暴威を感じ取り、同時に後方を向いた。「アレー!」オイランがソファーに倒れ伏した。後部モニタの粗い映像に、爆発炎上する後続ヤクザモービルが……「イヤーッ!」シャドウドラゴンが垂直跳躍!リムジン天井を破壊し飛び出す! 12

2012-10-18 16:52:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SHHHH!」シャドウドラゴンの背に影の翼が生え、道路上空を旋回する。「アバーッ!」さらにヤクザモービルが爆発炎上!その炎と黒煙の中から弾丸めいて飛び出したモーターサイクル有り!見よ、獣じみた唸りと共に現れた美しく無慈悲な黒鋼のシルエットを!それにまたがる赤黒のニンジャを!13

2012-10-18 17:08:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴアアアア!凶暴な排気音と共に接地した黒い殺戮機械は、転倒したヤクザオートバイを乗り手もろともに轢き潰す!ゴアアアア!残骸を後ろへ跳ね飛ばしながら更に加速するそれこそ、ニンジャスレイヤーの愛機!改善を繰り返した1330CCインテリジェント・モーターサイクル、アイアンオトメだ!14

2012-10-18 19:36:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スッゾ!」「スッゾ!」「スッゾコラー!」ヤクザオートバイが包囲するように展開し、ライダーが一斉にカタナを抜き放つ。ニンジャスレイヤーは眉一つ動かさず手元パネルを操作。液晶に「大人女」「我思う」の表示が灯る。「チェラッコラー!」襲いかかるヤクザライダーカタナ!「イヤーッ!」15

2012-10-18 19:39:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはアイアンオトメから瞬時に跳躍し、カタナを上に回避した。アイアンオトメはグリップを失する事なく見事に走行を継続する。なんたるインテリジェントな自律走行か!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはヤクザライダーの脳天にストンピング着地!「グワーッ!」16

2012-10-18 19:42:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヤクザライダーの脳天を破砕しながら別のヤクザライダーをスリケン殺!「ザッケンナコラー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」果敢に斬りかかるヤクザライダーを上昇飛び蹴りで蹴り殺し、空中回転!「イヤーッ!」上空のシャドウドラゴンめがけスリケンを投擲! 17

2012-10-18 19:55:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「SSHHHHH」シャドウドラゴンは黒い翼を羽ばたかせ、スリケンを回避!曇天に雷鳴が轟く!「イヤーッ!」穴の空いたリムジンからワイバーンが飛び出し、天井に立った。蛇行するリムジン上でカラテを構え、自律走行アイアンオトメのシートに着地したニンジャスレイヤーを睨む。「来たな!」 18

2012-10-18 19:59:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

鋭い軌跡を描いて前方の移動式シュライン・トレーラーの屋根瓦に着地したシャドウドラゴンは、ニンジャスレイヤーめがけアイサツした。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。シャドウドラゴンです」「ドーモ。ワイバーンです」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」ガガガガガ!稲妻が空を割る!19

2012-10-18 20:05:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは雷雨の中で状況判断する。サヌマはワイバーンが立つリムジンの中だ。生死は不明だが少なくともそこに身柄がある。ワイバーンのワザマエは如何程か。アマクダリ・アクシスはセクト直轄の集団であり、既存組織をフランチャイズした衛星組織の玉石混交のニンジャとはモノが違う。20

2012-10-18 20:14:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして、シュライン・トレーラー上のシャドウドラゴン。ザイバツ・シャドーギルドのニンジャであった彼が己のソウルに呑まれ堕落したのち、いかなる経緯でアマクダリ・セクトに身を置いたか。知る由もない。ニンジャスレイヤーとアマクダリにおけるシャドウドラゴンは既に数度のイクサを経ている。21

2012-10-18 20:21:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セクトの相当な深奥に身を置いていると思しき彼はニンジャスレイヤーにとって重点尋問対象だが、専ら後方支援に徹し、白兵戦に出る事は稀だ。背中の巨大な翼はそれ自体が追尾性のシャドウピン・ジツであり、飛行能力と引き換えに厄介な飛び道具となる。口から吐く影のブレスも驚異だ。 22

2012-10-18 20:28:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アクシスのニンジャに加え、オヌシが出て来たか。ロケット工場とやらが余程重要と見える」ニンジャスレイヤーはフットレスト上で直立し、言い放つ「何が狙いだ」「当然、答える必要無し。計画は止まらぬ。貴様の妨害も無駄だ」「毎度毎度、尻尾を巻いて逃げるしか能の無いニンジャめ。笑止」23

2012-10-18 20:50:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「作戦遂行上、私が貴様と死力を尽くして戦う事にさほど意味は無い」シャドウドラゴンは淡々と言った。ニンジャスレイヤーは目を細めた。「オヌシのごとき物言いをする手合いは過去にも存在した。オムラのロボ・ニンジャどもだ」「無意味な発言だ。……仕掛けましょうワイバーン=サン」 24

2012-10-18 21:10:26
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