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高村レイバン提督 @yachikaneko
死体じゃないと勃起しない。少なくとも内臓ぐらい見せて貰わないと。百歩譲って流血がないと興奮しない。みたいな変態シリアルキラーさんと大和撫子の恋の話。
高村レイバン提督 @yachikaneko
路地裏で暴漢どもに襲われていたその子を助けたのは、あわよくば自分の獲物にしようと思っていたから。真っ青な顔をしてがたがたと震えていたその子は、自分を助けた相手がまさか連続殺人鬼などとは思わないのだろう。初対面の男と路地裏に二人きりというのに、あからさまに安堵を見せた。
高村レイバン提督 @yachikaneko
黒い髪。黒い瞳。着ているのは東の国の民族衣装だろうか。殺人鬼は一目で恋に落ちた。初めて恋をした。それが恋とはわからなかったけど、背に隠したナイフをいつふるおうか、いや、まだだ、まだ先が良いとそのままコートにしまいこんだ。
高村レイバン提督 @yachikaneko
ひとり歩きは危ないからと送って行って家を覚えた。安アパートに住むその子は、留学生なのだと拙い発音で言った。ならば街を案内しよう、とあちらこちらへ連れ出した。嘘を贈り花を贈り、どうにか手に入れたその子と初めてのくちづけを交わす頃には、その唇は流暢にこちらの言葉を紡ぐようになった。
高村レイバン提督 @yachikaneko
いつ殺そう。黒髪のあの子の臓物はどんな色だろう。血は、骨は。どんな悲鳴を上げるだろう、助けて、と、ずっとずっと東の国の言葉で叫ぶだろうか。それともこちらの言葉かな。でも、もう少し。まだもう少し。お楽しみはとっておこう。もう少し。
高村レイバン提督 @yachikaneko
その子を初めて自分の部屋に招き入れることになった。キッチンの融けた眼球や散らばる爪の欠片を見て、どんな顔をするだろう。悲鳴を上げかけたところを頸り殺すのも良いかと思ったけれど、何故だか前の日は一日がかりで部屋を片付けた。階下に店を構える肉屋のゴミ箱に、可愛い肉たちは棄ててきた。
高村レイバン提督 @yachikaneko
シーツを替えて、風呂を洗い、ラグを剥がしても腐臭までは取れないのだろうか。殺人鬼はすっかり麻痺してしまっているけど、その子が少しだけ鼻をひくつかせたのを見逃しはしなかった。あぁ、肉屋の生ゴミの臭いだろう。と、でっぷり肥えた、あの主人の所為にしてやり過ごした。
高村レイバン提督 @yachikaneko
留学生はいつも通りの振る舞い。だけど、何かを期待している。そわそわと落ち着かないその気持ちが手に取るようにわかる。それを愛しく思って、抱き寄せてくちづけても殺人鬼のものはぴくりとも反応しない。やっぱり駄目か。落胆と自嘲が込み上げる。
高村レイバン提督 @yachikaneko
しかし殺人鬼以上に、留学生は落胆していた。少なからずしていた期待を裏切られた。揺らぐ黒い瞳には、自分の魅力に対する不安と、ほんの少し殺人鬼を詰る気持ちが見て取れた。それなら、と殺人鬼の黒い欲望がふつりと煮えはじめる。
高村レイバン提督 @yachikaneko
それなら御期待に応えて見せようか? いますぐその細い首を掻き切って、血潮溢れる唇を貪り、皮膚という名の衣を剥ぎ取って、硬く屹立したペニスで文字通り内臓を抉ってやろうか? そうすれば良いものを。殺人鬼は何故だか留学生を追い返してしまった。体調が悪いんだ、と。家まで送り届けもせずに。
高村レイバン提督 @yachikaneko
ドアが閉じる寸前に見えたあの子の悲しそうな淋しそうな瞳。何をやっているんだ。抱きたいなら殺せばいい。相手だって自分に抱かれたがつている(殺されたがっているかどうかは別として)。でも。ナイフを取ろうとする手が、意思が、震える。
高村レイバン提督 @yachikaneko
とうとう我慢できずに殺人鬼は、階段を駆け下りて肉屋のゴミ箱を漁り、豚の内臓にまみれたゴミ袋を取り上げた。昨日自分が棄てた袋のひとつだった。それを大事そうに抱えながら自室へと引き返す殺人鬼のペニスは痛いぐらい硬く張り詰めていた。結局その晩、融けかけた手首をしゃぶりながら三度抜いた。
高村レイバン提督 @yachikaneko
呼び鈴の音にドアを開くと、あの夜以来もう逢わないと、逢えないと思っていた留学生がそこに立っていた。あからさまに部屋の中から押し寄せる異臭に、今度は誰が見てもわかるほどに顔を顰めた。そんな表情も可愛いものだと、殺人鬼はぼんやり考えていた。
高村レイバン提督 @yachikaneko
ドアを開けると愛しい留学生の姿。部屋から溢れる腐敗臭に顔を顰めたが、逃げ出すようすはなかった。招き入れるまでもなく、留学生は部屋の中へと入ってくる。床に、ダイニングに、ベッドに。指や耳や、もう原型もわからぬ肉片が何人分だろう。逢わない間に何人殺したっけ。
高村レイバン提督 @yachikaneko
次に逢えば殺すつもりでいた。動いて、喋って、くるくると表情を変えて、愛らしく笑う留学生が好きだったけど。手に入らないぐらいならその身その命総て貪り尽くして自分のものにしてやろうと思っていた。部屋の奥へと歩いて行く後ろ姿を眺めながら、後ろ手にドアを閉め鍵を掛ける。
高村レイバン提督 @yachikaneko
見れば留学生の肩が小さく震えていた。室内の惨事を見て、恐怖しない者などいないだろう。表情はわからないが、かわいそうに恐がらせるぐらいならひと思いに殺してやろうと思ったその瞬間。留学生が振り返る。ひどい、と一言呟いた。
高村レイバン提督 @yachikaneko
ひどい。ひどい。ひどい。浮気者。あなたはひどい裏切り者だ。殺人鬼を詰るその言葉。うつくしい発音だった。いつもおとなしく慎ましやかな留学生が初めて、激情を顕にする。ひどいひどい。こんな、こんなもの。床に転がっていた誰のものとも分からぬ手首を踏み潰す。
高村レイバン提督 @yachikaneko
小柄な留学生が全身をぶつけるように抱きついてくるのを受け止めきれずに、殺人鬼は尻餅をついた。ぼろぼろと黒い眼から涙が降ってくる。わたしは見てしまったのです。あの夜、あなたのところへ引き返そうとしたときに。
高村レイバン提督 @yachikaneko
ただならぬあなたのようす。いけないこととわかっていながら、知れば引き返せぬと予感していながら、わたしはゴミ箱をのぞきました。ぽたぽたと殺人鬼の頬に降る雫は愛しい人の体液だけど、他人の血液より冷たくて、殺人鬼は何故だか悲しくなった。
高村レイバン提督 @yachikaneko
どうして。わたしにはしてくださらないのですか。わたしのことを愛していると仰ったのはうそだったのですか。いやだいやだいやだほかの人にあなたを取られるなんて。わあわあと泣きながら、殺人鬼の胸板に拳を叩きつける。ひとしきり泣き喚くと留学生は、キモノの袖の下から、す、と何かを取り出した。
高村レイバン提督 @yachikaneko
今まで泣きじゃくっていた留学生がすぅ、と顔を上げる。目が据わっていた。袖の下から取り出したそれは、木製の柄がついた真っ直ぐなナイフ。片側にしか刃がないようだった。まさか。どくん、と殺人鬼の脈がひとつ跳ねた瞬間、赤いしずくが視界に飛び散った。
高村レイバン提督 @yachikaneko
これでしょう、あなたがほしかったのは。ほら。手首からとろとろと血液を流しながら、留学生は無理に微笑んで見せた。痛いのだろう、かたちの良い眉が歪む。ぽたぽたと、殺人鬼の唇に血が降り注ぐ。ああ、この味だ。脳髄の奥がちりちりと甘く痺れる。
高村レイバン提督 @yachikaneko
どくどくと下半身に血が流れ込む。しかし殺人鬼はそれを恥じ、恐れた。このままでは可愛いこの子が死んでしまう。殺してしまう。そんなことしたくないのに。この子を失いたくないのに。しかし、甘い芳香に痺れた身体は動かない。尻の下にある膨らみに気付いて、留学生はくすぐったそうに腰を揺らした。
高村レイバン提督 @yachikaneko
いやらしい。ふふふ。ほんとうは、わたしとしたかったんですよね。わたしの血しぶきを浴びて、ぞうもつを引きずりだして。ねえ、わたしと、わたしだけと、したかったんですよね? ねえ? 青ざめた殺人鬼の唇に手首をなすり付ける。条件反射だった。その、ざっくり開いた傷口に歯を立てたのは。
高村レイバン提督 @yachikaneko
ひぐ、と留学生の喉から呻きが漏れる。痛みからだろう、また、双眸にいっぱい涙を溜めて、しかし嬉しそうに留学生は微笑んだ。うれしい、あなたのその劣情が、愛情が、わたしにむけられているのが。そう言うと、殺人鬼の上に跨ったままたどたどしい手つきでベルトを外し、ペニスを解放してやった。
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