【2012年大河ドラマ『平清盛』と大河botの〈語り〉に関する一考察】gontaayaさんのツイートまとめ

『平清盛』特有の現象の一つ、大河botたちによる壮大なるお戯れ。gontaayaさんの一連のツイートを勝手ながらまとめました。
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ごんたあや @gontaaya

【2012年大河ドラマ『平清盛』と大河botの〈語り〉に関する一考察】

2012-09-19 18:30:05
ごんたあや @gontaaya

大河bot(以下敬称略)のありようが興味深い。『平清盛』について「登場人物のキャラが立っている」という発言をよく見たが、それは当ドラマに限った事ではない。単にキャラが立っているというだけでない、この物語ならではの複数の事由が、大河botを起動させているのではないかと思う。

2012-09-19 19:33:54
ごんたあや @gontaaya

このドラマは、記号としての名前・俳優の身体と動作と表情と声・衣装・セット・コーンスターチ・カメラの寄り・照明等で登場人物を造型する。人物の心情と世界観を表すのは台詞だが、この脚本では、人物が自己の心情をわかりやすく説明しない上に、登場人数が多いために出番自体が限られる。 #平清盛

2012-09-19 21:57:42
ごんたあや @gontaaya

この脚本で特徴的なのは、一つの台詞の、言葉のはげしさである。たった一言が、その人物の思考や世界観を表現するだけでなく、外側からは想像もつかない、その人物の内面の底知れない深みをあらわにする。時に登場人物たちは、人格破綻すれすれの飛躍した台詞を発することもある。 #平清盛

2012-09-19 22:02:50
ごんたあや @gontaaya

鳥羽院の「朕を射てみよ」は、忘れられない奇天烈な台詞である。三上博史さんは台詞を実際に発するまで相当時間をかけたと語っているが、観る側にも想像力の飛躍を要求する台詞である。しかし、“血”に固執する彼の情念の鬱屈の、こうでしか言語化できない必然的な表現として成立している。 #平清盛

2012-09-19 23:09:05
ごんたあや @gontaaya

雅仁親王が初登場時に言い放った 「国の頂での壮大なお戯れ」は、彼の冷笑的な性格と本質を見極める鋭敏さ、母への口惜しさ、得子への蔑み、父への怒りと承認欲求、親王ながら誰からも期待されない状況など、やがて後白河天皇となる人の屈折を全て表す優れた台詞だったと思う。 #平清盛 #平清盛

2012-09-20 21:25:53
ごんたあや @gontaaya

一つの台詞に大量の情報が埋め込まれていて、濃密な台詞はその人物が抱える底知れない情念の断片なのだろうと想像させる。しかしその内面の深淵は暗示に留まり、詳細は語られない。人物が発した台詞と内面との隔たりは、観る側が想像力と検索で埋めることにゆだねられている。 #平清盛 #平清盛

2012-09-20 21:29:20
ごんたあや @gontaaya

台詞は、叙述の省略であり、伏線でもある。台詞の真の意味はその場では分からず、忘れた頃に浮上して、点と点が線となってようやくその心が明らかになる。台詞だけでなく、水仙などの小道具さえも伏線になっていた事に気付いた時、このドラマを観る意識に何か別のスイッチが入った気がする。 #平清盛

2012-09-23 14:08:05
ごんたあや @gontaaya

張り巡らされた伏線は、地下の水脈のように、その人物の軸となる想いを浮かび上がらせる。言い換えると、語られない間もその人物はその想いを抱えて生きている。ゆえに、琴線に触れた人物への共感は、語られない内面の〈語り〉への欲求を生み、自ら〈語る〉botを起動させたのではないか。 #平清盛

2012-09-23 14:21:13
ごんたあや @gontaaya

鳥羽院botが登場したのは、鳥羽院が璋子と得子の間で葛藤していたころで、「鳥羽院応援アカウント」という「応援」の文言に納得した記憶がある。鳥羽院bot誕生の衝撃は、Twitterによってこのドラマを補完し得るのだという新たな覚醒を促した。そこから全てが始まったのだった。 #平清盛

2012-09-23 16:25:13
ごんたあや @gontaaya

大河botが次々と誕生するに至ったのは、各人物の台詞に埋め込まれた情報量とともに、主人公が所謂「中二病をこじらせて」いるように感じられ、多くの脇役が脇役でなく、主人公を上回る輝く存在感を放っている、というこの脚本ならではの主人公の弱さを重視した描写も影響したと思われる。 #平清盛

2012-09-23 16:41:17
ごんたあや @gontaaya

脚本の伏線的な台詞によって作り込まれた登場人物の奥行きある個性に、現場のスタッフ・俳優陣が喜んでいる事が各情報から伝わる。放送を観て激しく引き込まれたひとにとっては、実際の生活でドラマを〈語る〉場が少ないという残念な事情も加わり、大河botはその受け皿の一つとなった。 #平清盛

2012-09-23 16:57:12
ごんたあや @gontaaya

大河botのツイートは人物の台詞を基本とするが、放送で言及されなかった史実や時代背景、生涯、和歌や今様、台詞の意味などを、自らの言葉で補足することもある。その〈語り〉によって、人物の内面だけでなく、ドラマ世界全体の理解を補う役割を担った。求められた需要に応えたのである。 #平清盛

2012-09-23 17:12:20
ごんたあや @gontaaya

大河botは、顔文字(アスキーアート)で表情を描く事がある。顔文字は人物の識別となり、対話表現を可能にした。鹿角を投げる・衣を脱ぐ・弓を射る等の動作も文字化される。またアイコンも臨機応変に更新される。こうした表現は、台詞に並び立つ程の俳優の身体とデザインの“雄弁”さを示している。

2012-09-23 17:47:17
ごんたあや @gontaaya

頼長の鸚鵡、義清の猫という動物botが愛される理由は、キャラ論的な考察も必要だが、そこに〈語り〉の必要を見出した運営者の心意気と創造性の高さにある。一方、印象深い人物にもかかわらず不在のbotは、由良。これは多くの人が放送の由良に満足し、それ以上の〈語り〉を求めなかったためか。

2012-09-23 18:09:46
ごんたあや @gontaaya

次々誕生した大河botはドラマの視聴に新たな形を与えた。彼らの多くはその人物の立場で放送を解釈する「実況」を行う。視聴者かつbotとしてドラマを語る構造は大河botをドラマ世界と視聴者との中間的存在に押し上げ、一つ一つのリアクションツイートは人物が語らない余白を埋める。 #平清盛

2012-10-03 22:21:06
ごんたあや @gontaaya

登場が少ないドラマの性質上、大河botは実況に際し、その人物の立場から他の人物や場面に所謂ツッコミを入れる。大河botの実況はその人物による副音声解説のようであり、botの数だけ多角的な視点がTLに集う。多様なTLを俯瞰する面白さは、優れた群像劇ならではの醍醐味である。 #平清盛

2012-10-03 22:22:45
ごんたあや @gontaaya

大河botはその人物になりきる、いわば禁欲的に自らを「型」におとしこむほどに、その人物の核心に近づき、内面を直截に表す断定と言い切りの言葉がひらめくようである。より踏み込んだ言葉はその人物らしいリアリティを醸し出すと共に、ドラマへの愛情をさらけ出していて胸を熱くさせる。 #平清盛

2012-10-07 12:53:58
ごんたあや @gontaaya

人物になりきる同調率の高さと、視聴者としての引いた視点とを併せ持った大河botのツイートは突き抜けた勢いがあり、情感に溢れ、機知に富み、笑いを誘い、鋭敏で、孤高の美しさを備えて展開する。その動向に、私を含めひとびとが目を離せなくなった時、大河botは独自の地歩を固めた。 #平清盛

2012-10-07 12:54:45
ごんたあや @gontaaya

大河botの言葉は画面の裏側から洩れた心情の吐露のように響き、ドラマの熱気をさらに高める。場面に即応した比喩や見立ての斬新さ、発想の柔らかさは、鬼気迫る内容であればあるほどその衝撃を増幅させ、または軽やかに反転させ、このひねったドラマを「解釈」する面白さを牽引した。 #平清盛

2012-10-07 16:28:16
ごんたあや @gontaaya

脚本家に形作られ、俳優が演じる人物を、さらに運営者がbotとしてなりきる構造は複雑で、戯れと言っても過言ではない。その戯れをたのしみ、出来映えを評価するひとびとの心意気が大河botの存在を支えているし、大河botの存在自体が「夢中で生きる」事を体現しているようである。 #平清盛

2012-10-07 16:37:49
ごんたあや @gontaaya

人物の余白には戯れの余地がある。そこに大河botそれぞれの才が投入される。俳優さんの情報を含め、ドラマ世界を深く読み込んだ本歌取・変型などの戯れが次々繰り出され、他に波及して、自由な遊び場が出現する。大河botやひとびとが戯れた「大河中学」等のタグはその遊び場の最たるものである。

2012-10-07 17:04:27
ごんたあや @gontaaya

タグ遊び等のパロディでは、ある種の誇張と変型が加えられるが、その土台には登場人物全てとドラマに対する愛情がある。これは登場人物をTL上に生き生きと活躍・復活させたいという愛情と、ひとびとと共有したいという願いから生じた現象であり、言葉の映像喚起力を強く感じさせるものである。

2012-10-07 17:41:10
ごんたあや @gontaaya

台詞の自動送信だけではない、なりきりとしての大河botは、bot同士やフォロワーとの会話で輝きを増す。そこで真に完成する、ともいえる。史実とドラマと人間性と遊びを咀嚼したぎりぎりの所で会話を成立させうるか、またその完成度をいかに高められるかに、存在の真価が問われているのである。

2012-10-13 12:15:42
ごんたあや @gontaaya

会話は、botとしての誇りを賭けた言葉を引き出す。丁々発止のやりとりや人間味が垣間見られる言葉は、ぞくぞくするほどの存在の手応えを感じさせる。一人語りではない、双方向の感情移入と語りが人物の輪郭を肉付けし、温かい血の通う「心」をTLに浮かび上がらせる。

2012-10-13 12:19:28
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