デジタルゲームにおけるユーザー情報環境の構築と人工知能、そして学術研究、社会への還元へ

@miyayouさんの代理でまとめさせて頂いてます、タイトルも書いてもらいました。 ありがとうございます。 連絡:有 返信:有
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三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

社会における研究者がそうであるように、ゲーム産業における研究者も、開発のための難問を解き、次の時代を導く役割を持つ。

2010-08-02 23:30:32
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

現実の認識は見ているものから意味あるものを選択する無意識が働いているが、ゲーム画面では、逆に見えているものに全て意味を見出そうとする心理が働く。あれ程くっきりと事物が見える空間で物の密度を上げれば、初心者ほど疲れやすくなる。ゲーマーであるほど何を見て何を見ないかを選択して疲れない

2010-08-03 00:49:32
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲームは、その解像度と事物の密度が上げて来たが、ゲーム的に意味のある密度を比例して上げて来た訳ではない。逆にゲームプレイとは関係しない部分のメッセージの比重を上げて来た。ゲーマーならそれを無視していいか瞬時で判断できるが、初心者はあらゆるものに意味を見出そうとしてくたくたになる。

2010-08-03 00:52:01
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲーム画面において、鑑賞として用意された情報群と、ゲームプレイのために用意された情報群の境目がなくなればなるほど、リアルであると言えるだろうが、そのリアルさは、ゲーム的に意味のある情報を見出すことをより困難にする。であるからこそ、現代のゲームでは蛍光色のマーカーが多用される。

2010-08-03 00:54:18
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

残念ながら、ゲーム初心者にとって、これらの情報群をリアルタイムに識別しプレイを組み立てることは非常なストレスになる。そこで、初心者がシンプルな画面を求める指向が出てくるのは当然のことである。ハイエンドゲームは情報量が多すぎる。そこに於いて思い切って情報量を削ることは可能だろうか?

2010-08-03 00:57:26
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

一つの実験をすることを考えてみよう。ゲーマーと初心者が同じゲームをして、プレイ後に、どのようなテクスチャがどこに張ってあったかを聴いてみるという実験である。一体プレイヤーがどれだけの情報を認識し記憶しているかということを計測する事はゲームデザインを科学するために重要な切り口である

2010-08-03 01:00:29
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲーマーは捨てていい情報と、頭に残しておくべき情報を、自分の得意とするジャンルなら即座に判別して判別を実行する。例えば、スタークラフトを知らない人間が、スタークラフトの中継(めまぐるしくカットが変わる)を見ても、意味がわからない。ファンであれば、そこで読み取る情報を的確に取得する

2010-08-03 01:04:38
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲーム好きの中にも2つの方向が存在する。一つは、なぜゲームプレイに必要のない情報をゲーム画面に溢れさせる必要があるのか、もう一つはプレイには直接関係ないがゲームの雰囲気(リアリティ)を出す情報を好むタイプの二種類である(勝手な個人統計だがテーブルゲームファンには前者が比較的多い)

2010-08-03 01:07:57
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

今にして思えば、ファミンコンの質素な画面は、少なくとも、画面に表示されているものの殆どには意味があった。というか、意味があるものを優先しておくぐらいの余裕しかなかったのだ。あの限定された色の中で、少なくとも何をすべきかを端的に表現することだけは、あの時代のゲーム画面の美学だった。

2010-08-03 01:09:45
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人がこの現実空間で運動する為に殆どの情報を捨象している事実と、ゲーム空間がリアルな表示を行う事は同じようで逆のことである。現実で人は情報を捨象して視野(Field of view)を形成する。ところがゲーム画面は、既に無視することが出来ない次元の視野情報を人に強制しているのである

2010-08-03 01:16:09
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そういった意味で、カメラの気持ち悪さというものは、単に3D酔いであるという以上の、強制された視野によって情報が強制的に与えられるという気持ち悪さに起因している。この二つは全く別のものである。プレイヤーの情報環境をナイーブに扱わなければたちまちストレスになることは知られている。

2010-08-03 01:20:00
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

特にメニューやカメラのような常時くり返されるルーチンにおいては、それは積み上がって行くために非常な注意が払われている。3Dゲーム開発の初期に培われたノウハウの一つである。しかしそういったノウハウをもってしても、2Dと3Dの間に、初心者のために優しい橋を架けることは難しい作業である

2010-08-03 01:22:32
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

2Dゲームでは視野が強制されることはないという事、その画面上でプレイヤーは情報を取捨選択できる事、3Dゲームでは視野の強制が強く情報の取捨選択には熟練を要すること、こういったことを踏まえて、デジタルゲームの研究は「プレイヤー」「視野」「心理(情報処理)」を主題として行う必要がある

2010-08-03 01:26:27
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲームデザイナーから見た場合、プレイヤーがこちらが思ったような操作をしてくれないということの背後には、プレイヤーがインプットする情報、そして、その情報処理、情報処理からの行動、こういった一連のシークエンスに齟齬があることを示している。そして、この構造はキャラクターAIと双対を成す

2010-08-03 01:27:57
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

キャラクターAIもまたインプットを処理し行動を生成するルーチン構造が必要とされる。できれば上級プレイヤーの精神のシークエンスを写し取りたいが残念ながら現在のマシンをもってしても、それは遠い夢だ。だからこそ様々なモデルやアルゴリズムを駆使して擬似的にAIを構築するのが人工知能である

2010-08-03 01:30:39
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

プレイヤーには心理があり、キャラクターAIには人工知能がある。そこで行われる情報処理機構がゲーム世界にどれだけ気持ちよく/効率よくコミットできるかを左右する。しかし、人工知能はある程度、恣意的に構築できても、人間の心理はそうでない。その内部の法則(心理学)の上で精神は運動する。

2010-08-03 01:32:45
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

ゲームデザインの科学的研究には、心理学が必要であり、キャラクターAIの研究には、人工知能の技術が必要である。ゲームデザイナーは心理学を研究し、エンジニアは人工知能を研究する時代が来るだろう。いや、Left4Dead の例を待たずに、そういう時代は既に来ている。

2010-08-03 01:34:39
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そういった知識を背景に持ち心理学の言葉を開発者が保持するとき、ゲーマーがゲーム内情報に非常に鈍感であると同時に、特定の情報に以上に過敏であることや、初心者がパニックに陥いる情報要因などを、明確に語れるようになるだろう。

2010-08-03 01:37:05
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

キャラクターAIから見ても、それは非常に興味深い。下手なAIを作って下さい、と言われた場合、殆どの人は思考をランクダウンさせる事を考えるかもしれない。しかし下手なプレイヤーと上手なプレイヤーの差は思考だけだろうか?否、そこには先に説明したような、ゲーム内情報の取捨選択能力がある。

2010-08-03 01:39:49
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

とすればAIが情報を取得する部分を不要な情報にセンシティブにすると何が起こるかを考えてみたくなるだろう。どんなに高度な思考力を持っていても不要な情報に振り回されるAIは滑稽である。これは情報取得の部分でAIをランクダウンさせる方法はAIを人間的に弱くする方法として活用できるだろう

2010-08-03 01:42:57
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

現在のゲームAIには、何が必要な情報で、何が不必要な情報かを選別する能力はない。そういったフィルターを知識表現として事前に与えてやることが、キャラクターAIの構築のファーストステップである。限定した情報を作り、限定した思考を作ることしか、今は出来ないし、していない。人間とは違う。

2010-08-03 01:45:07
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

人間はゲーム内の情報から行動に必要な情報を切り取ろうとしゲームと状況に応じて情報環境を自ら構築する。こういった構築をできるだけスムーズに、かつ気持ちよくできるようなシステムを作ることがゲームデザインには必要だ。そして、それは可能な限り通常は人間の心理の流れに忠実であるほどよい。

2010-08-03 01:48:53
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

そして、そういった情報環境の構築の仕方は、ゲーム以外のデザイン分野、建築、インテリア、工業製品などの分野で、研究されて来た。デザイン言語、アフォーダンス、などの知見として結実している。

2010-08-03 01:50:02
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

しかし、ゲームのように激しく変化しながら連続した情報に対する研究は、まさにゲームを通じてしか行えないことである。そして、デジタルゲームにおいて結実するであろう、こういった知見こそは、ますます加速し五感を覆わんとする情報環境の社会の中で、一層必要とされる知見であることは間違いない。

2010-08-03 01:53:06
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

デジタルゲームの研究が何の役に立つかと言えば、一つには、人がリッチな情報環境の中で、快適に生活するための方法を提供することにある。連続した情報が無意識に与える負荷の中で、それをどう解消するか、どう情報環境を構築し修正してやればいいかを与えることが出来るはずである。

2010-08-03 01:55:33