ついのべ連載『ai(仮)』

ほのかに続き物風の作品まとめ。 日々追加。 「僕達は愛する人のために、多くのものを犠牲にする。」
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はじまりの日

-the Origin-

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

流星の只中に居るようだった。けれどよく見れば勿論ひとつひとつが宇宙船で、真っ暗に翳ったガラスの内側にはかすかに人の輪郭が窺えた。嗚呼、はじまってしまったのだ。これが全てなのだ。誰もが自分の道を、生を信じ、操縦桿を握っている。それは残酷なのに何故か美しく見えた。 #twnovel

2012-10-22 22:27:25

僕のいる世界

-Boku no Iru basho-

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

今日も空が高く星が綺麗なので、僕は君を誘って屋根に登る。トタンの端から滑り落ちないよう「大丈夫?」なんて手を延べたりして。君は笑う。光ほどそそっかしくないでしょって。平坦な日常、けれど僕はいつも家に忘れ物をしているような感覚。それでも幸せなことに変わりはなくて。 #twnovel

2012-10-22 22:38:00
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

「あ、また流れ星」手を擦り合わせながら君が笑う。吸い込まれそうな空を見上げれば次々と星が横切っていく。毎夜のように見られる天体ショーに飽きることもなく。でもテレビをつければ『予測不能』の学者の言葉達。ねぇ、君は知っている?まことしやかに囁かれる世界の終末の話。 #twnovel

2012-10-22 22:44:16

砂の宮殿

-Suna no Kuden-

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

砂に埋もれた小さな集落は、大陸に残った数少ない町の一つだった。連邦の支援で人口減少も抑制されたが、僅か数十年前までは地下神殿にて巫女が祈りを捧げていた。命を繋ぐ糧を、大地を潤おす水を。閉ざされていた扉が僅かに軋む。――入れるかもしれない。息を殺し、扉を押し開く。 #twnovel

2012-10-23 19:42:22
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

壁画に残る歴代の神使達。描きかけの巫女の顔は空白のままだったが、その横顔は今も『鮮明に』覚えている。黒髪の長く、生まれつき右耳に朱い宝石のある娘。本来ならわたしが次の巫女になるはずだった。けれどあの日初めて『儀式』は失敗し、集落はついに現存国家の監視下に入った。 #twnovel

2012-10-23 19:45:09
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

穀物庫の備蓄は充分で、まだ公にはなっていないけれど、外からの配給はもう二ヶ月も前から停止している。このままではいずれ町ごと風化して跡形もなくなるだろう。否、それ以前に、砂漠の先の世界の様子など確かめる術もない。わたしは僅かな希望を握りしめ、奈落へと下って行く。 #twnovel

2012-10-24 22:45:39
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

雨が降れば、儀式が成功すれば。この世界で恩恵の儀に一番近しいものがいるとしたら、それはわたしだけ。だから。「ルキ姉様」今も『知って』いる彼女の御名。響くのは足音、後は只呼吸すら憚られる静寂。ついに松明の火が消える。歴史学者はそれ以降、二度と地上に現れなかった。 #twnovel

2012-10-24 22:52:51

独りきりの子

-a Twin-

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

彼が姿を消したのはかくれんぼの最中だった。年頃の近い子達に雑じり普段通り、祠や神様の木の陰に身を隠しては、顔を突き合わせ、笑う。秘密を共有する同士。オニの足音に息を潜めて。そうだ、あの日あたし達は初めて別々の場所に隠れた。何故あの時、手を放してしまったんだろう。 #twnovel

2012-10-25 23:24:56
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

誰もが彼のことを口にしなくなって十余年が経つ。まるで夢幻の様。けれど今も、鏡の中の自分はあの日のまま。男女同士なのに一卵性みたいねって、二人向き合って笑ったあの日の姿のまま。そう、あたし達は双子だった。神隠しに遭ったのは、本当はあたしの方だったのかもしれない。 #twnovel

2012-10-25 23:29:34
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

神社の外観は時が止まったようで、雨曝しの注連縄にすら既視感を覚えた。偶然忍び込んだ神籬の間は静謐。薄闇で唯一光る物を見れば、鏡だった。歪んだ鏡面にあたしが映る。――違う。息を呑む。目が合う。嗚呼。彼が微笑む。あたしが懸命に手を伸ばした。「置き去りにしてごめんね」 #twnovel

2012-10-25 23:40:46

還る場所

-His Home-

(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

研究者の両親を持つからといって、自分自身が科学に秀でたいという願望は湧かなかった。穏やかながら頑固な母と寡黙で優しい父。支え合う二人を眺めてはこの世を形成する最大要素が何かを噛みしめ育った。唯一、父と並んで見た星空には魅了された。何も変わらないと信じた日の面影。 #twnovel

2012-10-26 22:00:23
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

今思えば予兆だったのだ。大宙を見上げて一層寡黙になる父親、その横顔に見当違いな感情を覚えた幼い自分。壮大で、ちっぽけな。けれど彼は更にその先を見ていた。その全てを漸く悟ったのは、ガラスの向こうでハンドルを握る父の表情だった。 #twnovel

2012-10-26 22:16:28
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

現代医術の限界だという。既存の病は快癒しても、未確認の病原体に効くワクチンなど稀有。何故よりにもよって。何故科学者である彼が。研究に打込む母を当人は、仕方ないと諌めるばかり。それが腹立たしく、そして情けなく思う。けれど父は言ったのだ。「間違っているのは僕の方だ」 #twnovel

2012-10-27 21:01:56
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

古びたロケットのハッチはもう開かない。繋いだままのラインを介して父の声を聞いた。「ずっと謝りたかったんだ」「誰に?」彼は答えない。代わりに哀しげに口角を歪め、届くはずのない右手を俺に伸ばす仕草をした。行くな、声を張った。手遅れだと信じたくなくて。過るのは母の顔。 #twnovel

2012-10-27 21:10:49
(朝斗)外部避難中 @Asatoiro

『ずっとここにいて』。頷いてくれた過去は偽りだったのか。或いは身動き出来ない自身に諦めていたのか。父は青白い顔で晴れやかに微笑む。「僕には双子の姉が居たんだ」どこか達観した、夢見がちな双眸で宙を見る。「ごめんね」轟音に掻き消えた言葉は、誰の為のものだったのか。 #twnovel

2012-10-27 21:17:26

イカロスと海

  (未投稿)