茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第758回「ざわざわするのが、しるし」
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連続ツイート第758回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日も、引き続いて、日本を元気にするツイートシリーズ!
2012-10-28 06:49:07ざし(1)昨日の連続ツイートで、セレンディピティ(偶然の幸運に出会うこと)の三要素として、行動、気づき、受容を挙げた。このうち、最後の「受容」が案外難しく、また精神の若さ、アンチエイジングにもつながるので、その点について今朝は改めて考えてみたい。
2012-10-28 06:51:13ざし(2)身体に免疫系があるように、脳(心)にも自己のホメオスタシス(恒常性)を維持しようという作用がある。すなわち、自分と他人を区別し、今(までの)自分と異質なものは排除して、自分自身の中に入れないようにするのである。そのようにして、自分の安定を保とうとする。
2012-10-28 06:52:44ざし(3)異質なものを排除し、自分を維持することは、ある程度は必要なことである。しかし、それが行き過ぎると、せっかくの偶然の出会いがあっても、自分が変わるきっかけを失ってしまう。セレンディピティがもたらす最大の祝福の一つは「新しい自分」だが、そのチャンスを逃してしまうのだ。
2012-10-28 06:55:16ざし(4)新しいものに出会い、それを受け入れて自分が変わるということは、春になって木の芽がふくように、胸がざわざわする経験である。自分がどこに連れていかれるかわからない、どのように変わるかわからない。そんな、不安と期待が入り交じった気持ちが、受容できていることのしるしである。
2012-10-28 06:56:35ざし(5)新しい自分への推移において、脳の中で、感情や記憶の回路が関与した、再編成が起こる。その過程では、苦いこともあるし、不安なこともある。価値観が少しずつ変わり、今までとは違ったかたちで、世界が見えるようになってくる。その不安定のトンネルを抜けて、初めて新しい自分に出会える。
2012-10-28 06:58:08ざし(6)偶然の幸運(セレンディピティ)に出会って、新しい自分になる。典型的なのは、恋愛である。恋愛は、特に精神が若い時には、相手への反発で始まることも多い。今までの自分と違うものを持っている人に出会った時、反発すると同時に惹きつけられる。そして、受容することで、変わっていく。
2012-10-28 06:59:22ざし(7)恋愛は、人との関係だけでなく、一つのモノ、文化、文明との出会いにおいても起こる。明治維新は、日本が西洋という大きな新世界に出会って、それを受容することで変わっていった一つの恋愛のようなものであった。その過程で、「ハイカラ」といった日本独特の文化も生まれていった。
2012-10-28 07:00:44ざし(8)脳の若さとは、つまり、変わる可能性、能力のことである。そして、精神が老いた時、今までの自分を頑なに守って、異質なものを排除しようとする。相手にレッテルを張って決めつけ、自分が正しいと安易に正当化しようとする。ツイッター上でも溢れるそんな態度は、老化のしるしだ。
2012-10-28 07:02:06ざし(9)新しいものと出会って、自分が変わるときには、胸がざわざわとする。それがしるしである。誰にでも、幼いときを思い出せば、自分がかわる時の、幼虫がさなぎになり、やがて蝶になるときの不安に満ちた甘美な変化の感触を覚えているはず。大人になってもそれを引き受けられる人は幸いである。
2012-10-28 07:04:14