茂木健一郎氏 @kenichiromogi 【「本当の自分」は幻なのか?】連続ツイート
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連続ツイート第761回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日も、引き続いて、日本を元気にするツイートシリーズ!
2012-10-31 07:22:46じひ(1)今朝は、「自分」というのは「一人」ではないよ、というお話をしたいと思う。昔から、「自分探し」という考え方がある。「本当の自分」がどこかにいて、今はその「本当の自分」が見つかっていない、というような。しかし、そのような考え方は、一つの罠であり、寂しい考え方である。
2012-10-31 07:24:36じひ(2)自分という存在は、「A」という一つの人格があるのではなくて、たくさんある。とりわけ、他者の存在によって、仮想された一つの人格(A)から、A', A'', A''', ....と多くの「自分」が生まれる。そのようなゆったりとして、自由なダイナミクスを許容しないといけない。
2012-10-31 07:26:55じひ(3)(A)が、A', A'', A'''へと変化するきっかけになるのは、他人との関係である。(A)がBに向き合うことで、A'になる。Cと向き合ってA''になる。向き合う他者が変わるたびに、違う自分が引き出される。そのことで、自分は成長する。新しい自分を発見できるのだ。
2012-10-31 07:28:26じひ(4)他者をきっかけに新しい自分が生まれる。この能力は、小さな時からある。五歳くらいの子どもでも、自分の母といるとき、父といるとき、兄といる時、妹といるとき、近所のおじさんといるときでは全く異なる。それは「ふり」(pretend)と似ている。自分が「一つ」あるわけではない。
2012-10-31 07:40:53じひ(5)大人になっても、同じことだ。たとえば、母親としている時と、学生時代の友人といる時では違う自分が引き出される。「地位が人をつくる」というが、当然のことだ。ある特定の地位に置かれることで、他者との関係が変わる。そのことによって、今まで潜在していた新しい自分が引き出される。
2012-10-31 07:31:54じひ(6)思わぬところで、新しい自分が必要な時もある。たとえば、英語をしゃべるということは、単にある言語を習得するということにとどまらず、新しい「英語人格」を創造するということを意味する。だからこそ、難しいし楽しい。英語を学ぶということは、新しい人格を生み出すことでもあるのだ。
2012-10-31 07:33:35じひ(7)ところが、ここに一つの障害がある。たった一つの「自分」でなければならないという思い込み。どこかに「本当の自分」がいるという偏見。「らしく」あれという周囲からの圧力。自己と他者から、「一つでいろ」と言われて、本当は自分の中にある新しい自分の芽が摘まれてしまうのだ。
2012-10-31 07:35:02じひ(8)他者と向き合う時には、思い切り脱抑制して、新しい自分を引き出してよい。AがA', A'', A''' と変化していってよい。文脈が変わり、立場が変われば、新しい自分が出てきて当然である。自意識や抑制という手綱を緩め、見たことのない自分がおもちのようにぷーっと出て来る。
2012-10-31 07:36:30じひ(9)じゃあ、「本当の自分」は幻なのか。そうかもしれない。一生懸命他人に向き合って、(A)がA'やA''になって、自分でも自分に驚いて、それで、少し疲れて夜道を歩いているとき、ふと自分に戻っていく。そんな時、幻の「本当の自分(A)が見えるかもしれない。その程度でいい。
2012-10-31 07:38:28