自作小説第一章:K.R.1

自分の書いた小説を読みやすいようにまとめておきます。よろしければお読みください。第一章です。第二章→http://t.co/mF0WSZRG よろしければどうぞ
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川口 慧太 @eulen_zoids

今日から小説をツイッターで連載することにしました。毎日23時頃、4ツイート=約600字を目安に投稿します。(今日は眠いので早く投稿します)気に入って頂けたらふぁぼ・リツイートお願いします。各章タイトルはつけますが、全体でのタイトルはまだ考えていません。それでははじめます。

2012-11-03 21:34:33
川口 慧太 @eulen_zoids

ーK.R. 1ー 《湿気た土の匂いを、胸いっぱいに吸い込む。それは粘り気をもって私の鼻腔とそれにつらなる気管の壁面に張り付き、自らの存在を存分に主張する。この訓練場の中で私にとって唯一リアルな事物が、その芳香だ。》

2012-11-03 21:42:51
川口 慧太 @eulen_zoids

《たとえそれが、機械により人間には区別できないほどの精度で生成された模造香であっても。匂いだけじゃない。ここにあるものは全てツクリモノだ。青々と葉を茂らせているように見える木々も。それらが根を下ろす地面が足を支える柔らかな感触も。命の気配を感じさせるる不可思議な音声も。》

2012-11-03 21:46:54
川口 慧太 @eulen_zoids

《私はそれがみんなツクリモノであることを知っている。そしてツクリモノは私に接触しない。風景はゴーグル越し。音声はヘッドホン型の無線機越し。大地は軍用ブーツ越し。そういうモノタチ。私に触らないモノタチ。 『今日もやるのか、桐原?』耳へくぐもった音声が侵入しようとしてきた。》

2012-11-03 21:53:53
川口 慧太 @eulen_zoids

《もそもそとして聞き取りづらい。鼓膜には響かない。いかにも機械の手が触れた、同僚の狭山の声。『やる』最少文字数で応答をしつつ、密林の向こうに目を凝らした。この言を狭山がdoと認識したかkillと認識したかは知らない。どちらにせよそれらの言葉はこれから私がとる行動の内容を示した。》

2012-11-03 22:10:11
川口 慧太 @eulen_zoids

《『飽きないね』呆れたような遠い声←無視。切断音で乖離/森の向こうの動体を視認/踏み出して、握りしめた。足の裏で発生する爆発的反発力。加速。速度に身体が同調。世界が流れる。障害物たる枝・幹・泥濘をエスケープ。皆茶と緑が混合された不文律に基づく構成物に。》

2012-11-05 01:07:13
川口 慧太 @eulen_zoids

《私には落ち着く風景。単調になる音声=無線機越しの外音。私には落ち着く環境。どうせ存在の実感などないから。あるのかないのか分からないなら、どっちつかずでふわふわもやもやしていたほうがまだ気楽だから。『拳からの加速指示信号の伝達に遅延ありません』》 #K.R.1

2012-11-05 01:16:22
川口 慧太 @eulen_zoids

《またも声。眉間に皺。『…いちいち報告しなくていいっつったじゃん、斐川』苛立ちから無意識に発声。『訓練時の使用機材の安全を保証し確認するのは推奨されるオペレーターの非義務的行動の一つです』狭山のものとは異なるクリアな音。それは涼しげに頑なさを主張する声音で。》#K.R.1

2012-11-05 01:28:12
川口 慧太 @eulen_zoids

《世界に区切りを引いてしまう。半端な現実味で。触りきらないくせに。それは私が最も愛さない姿勢。曖昧さの安寧と平穏を適度に取り返せないほど打ち砕くもの。反応したことを後悔する―口をつぐめ。命令+実践=無視。振り切る気分で木々と大地をさらに強く蹴り、仮想密林を抜けた。》#K.R.1

2012-11-05 01:40:24
川口 慧太 @eulen_zoids

《ひらける視界。ゴーグルさえすり抜け眼球を焼く勢いの日光/身体密着型の戦闘服越しでも感じる高温。それらは砂漠がもたらしている。日本ではありえぬ木から砂への急速変化。温暖化&無秩序な森林伐採の結果、破滅的速度で砂漠が広がった、アマゾンの紛争地帯を想定しているらしい。》#K.R.1

2012-11-05 23:19:05
川口 慧太 @eulen_zoids

《ここにはない何かを生み出す。ツクリモノの強みだ。匂いも同時に変化=愛着あるウエットな有機物の芳香が、突き刺すような乾いた砂埃の匂いへ。これは嫌な匂い。嫌いな匂い。しかしそれは、私を実感させてくれるものでもあって。なんの遠慮もない拒絶の感覚を与えてくれる。》#K.R.1

2012-11-05 23:27:18
川口 慧太 @eulen_zoids

《そこに半端さはなく。闘争の想いを焚き付けてくれる。向かってきたモノー一気に距離を詰めた、眼前の二足機械への。訓練想定に基づき砂色塗装されたそれらに首はない。センサや人工頭脳は全て真四角の胴体の中。そこから伸びるのは、人間そっくりのなめらかラインの腕と脚×各2。》#K.R.1

2012-11-05 23:35:37
川口 慧太 @eulen_zoids

《まんまな通り名=クビナシ。『桐原凜香、訓練対象に接敵』無線をcall。今度は自分から。名乗りをあげる気分で。ぽんぽんぽん。この音はなんでしょう。クビナシがあの射出口から発射される音です。あたり!どんどん出てくるね!内心でひとりごと。うきうき/気分の高揚←自覚済み。》#K.R.1

2012-11-05 23:43:43
川口 慧太 @eulen_zoids

《さあ。『訓練機TTR-7、総勢129体、接地しました』宣誓の如き響きの斐川の声がして。『小隊thirds、戦闘訓練開始』動いたのはクビナシ達が先だった。目の前20mに四方に広がる集団そのいち。人工筋肉による跳躍力が飛翔させた。網の目のようにひろがる黒色機械。》#K.R.1

2012-11-06 22:46:12
川口 慧太 @eulen_zoids

《頭上から落下=接近してくる。ぎりぎりまで引きつけ/惹きつけて。握りこんだ。足裏での発動からの反発。指向性極小爆薬によるboost。私の体が浮き上がる。覆いかぶさろうとしていた数機のヒトガタを巻き込みながら。跳ね飛ばし滞空。一瞬で3階建建造物ほどの高さへ。「あは」》#K.R.1

2012-11-06 22:52:58
川口 慧太 @eulen_zoids

《笑みと喜びの声が漏れる。眼下にはすぐさま反応し、空中で体を仰向けているヒトガタたち。逃げられないことの暗示。私の顔は、きっと獰猛。「やる」体を回転し、垂直落下体勢に。そして足からburst→急降下。加速力を利用しちょうど両脇の2機を掴み(貫き)地面へdive。》#K.R.1

2012-11-06 23:01:42
川口 慧太 @eulen_zoids

《砂地へ接触/破裂/爆発/四散。金属と土煙の中から立ち上がる。後ろから数機の襲来。知っている。回し蹴り。ミサイル的圧力を持つ衝撃を浴びせる。まとめて吹き飛ばした。その勢いで疾走=先行。敵の中へ/中へ/中へ!阻まれる。速度で弾く。視界を塞がれる。無視して突進する。》#K.R.1

2012-11-06 23:11:32
川口 慧太 @eulen_zoids

《突貫の結果→全方位/全包囲。ひしめき蠢く壁のようなヒトガタ達=残機約100。身を低くしてクラウチング・スタートの体勢。再突撃の準備をしたところにー高熱。落雷のような光の鞭が強襲。咄嗟に目をつむる。3秒後のご開帳により視認したのは、焼け爛れた私の周囲の砂と金属片。》#K.R.1

2012-11-07 22:02:09
川口 慧太 @eulen_zoids

《それらはもと、二足機体であったものであり。少し離れた場所にいつの間にか現れていた人間がもたらしたもの。「…disturbしないでよ、狭山ッ!」未だ雷光の名残を放つwhip×8を指の間に挟み持ち、力の抜けた姿勢で立つ苔緑色戦闘服の男。狭山紀明。》#K.R.1

2012-11-07 22:09:21
川口 慧太 @eulen_zoids

《「小隊訓練なんだから、同じ敵を倒すのはとーぜん。てかまた混ざってんな。いんぐりっしゅ」だらけた反転と返答。話しながらも腕は動き。rinkして鞭がしなって。近づこうとした右横の敵機を数機まとめて焼いた。止まって眺めていたわけではない。ぼんやり言葉を聞いてもいない。》#K.R.1

2012-11-07 22:16:57
川口 慧太 @eulen_zoids

《私は既に走っている。すれ違いざまに認識。「あーだから突っ込むなってぇ」遠くなる狭山。きっとまた呆れたような顔と声。無視。敵を薙ぎ倒して減らす。吹き飛ばして減らす。殴打して減らす。ゼロ距離爆破で減らす。もっともっとmoremore減らす。しかし勢いあまりー足が空切。》#K.R.1

2012-11-07 22:23:17
川口 慧太 @eulen_zoids

《そして半端に揺らめいた足が掴まれる。10機近いヒトガタ。吹き飛ばしきれない数。学習されている。動かせない。心に沁みる緊張。汗がつたっている。他のものでは辿りつきえない現実感。その先にあるのは?苦痛?羞恥?後悔?もしかして、もしかして、死?妄想。でもそれは、至高。》#K.R.1

2012-11-08 22:32:40
川口 慧太 @eulen_zoids

《足から伝わり続ける鋼鉄の腕の感触。その元凶が私を抑えたまま近づこうとしてくる。ああ。near。誘う。きて。きて。私のそばに。そしたら―。しかし恍惚と夢は妨げられる。飛来した鳥のようなもの。吐き出す黄色の液。私は劇薬だと知っている。クリアな頭脳は冷静に判断する。》#K.R.1

2012-11-08 22:40:04
川口 慧太 @eulen_zoids

《それは金属体を完膚なきまでに溶かしつくし。足は自由になる。遠ざかる。何が。現実が。心によぎる。何が。知らない…。『桐原さん、先行しすぎです。援護できなくなります。オペレーターとして停止指示をします』斐川の声を発する鳥=手裏剣的鋭角風貌=最先端遠隔操作戦闘機。ただし致死性あり。》

2012-11-08 22:47:55
川口 慧太 @eulen_zoids

《返事はしない。無気力さが侵食。それは冷めた。足はそれまでほど動かない。腕が無造作に殴打。雑。でもあっさり倒す。絶妙なタイミングで斐川が下僕に溶解液を噴出させているから。やがて狭山が追いつく。「ひー、やっと止まる気になった?」「…うるさい」全員が揃っていた。》#K.R.1

2012-11-08 23:01:15