#萌r 【 One More Time 】 らぶおじ・萌えリレーSS
#萌r 青1a) ちょうど一年前も、こんなだったなあ。私は寒空の下、おじさんのことを考えていた。色々あった一年。喧嘩したときは、この公園で泣いた。おじさんが迎えに来て、「ほら帰るぞ」って強引に手を引かれた。春も夏も秋も二人で過ごし、そして、またこの季節がやってきた。
2012-11-15 01:08:36#萌r 青1b) ハロウィンが終わり、雑貨屋さんには赤と緑の置物が並ぶ。今年はおじさんへのプレゼント、どうしようかなあ。去年も同じ場所で同じこと考えてたなあ。一ヶ月以上前から考えてたのに、結局直前で慌てちゃったんだっけ。
2012-11-15 01:09:28#萌r 青1c) 公園には誰もいないから、私が思い出し笑いをしても誰も変な目で見る心配はない。響くのはブランコの軋む音だけ。空がほんの少し近づいたり、遠ざかったりする。「ねえ、おじさん。今何してる?」
2012-11-15 01:10:01#萌r 青2a)小さな声で呟いたその時、メールの着信が。慌てて見ると『いつもの公園で17時。来れるか?』とおじさんから。すぐに『大丈夫』とだけ返す。タイミングが良過ぎてまた笑っちゃう。こうしておじさんの事を想っている時に繋がると、とても嬉しくてほわんとなる。きっとまだにやけてる。
2012-11-16 16:27:36#萌r 青2b)あと一時間…ぼんやりとおじさんを思いながら向いの喫茶店で待つとしよう。忙しい彼との約束はいつだって突然なのに、この一年よく会えた方だよね。最初の頃は会えない不安で泣いたり怒ったりしたけれど、彼を一つ知る度にどれ程彼を好きなのかも知ったし、彼にも好きになって貰えた。
2012-11-16 16:27:39#萌r 青2c)足取り軽く店のドアを開け、公園が見える窓側のカウンターへ座る。ブレンドが運ばれそのままを一口。ブラックが少し飲める様になったのも、背伸びして彼の好きなモノを感じたいと思ったから。「無理してオトナ振るより、俺はそのままのお前がいいよ」と照れながら言ってくれたっけ。
2012-11-16 16:27:43#萌r 青3a)そういえば…、と思考がより懐かしい過去に遡ってゆく。おじさんと付き合い始めたばかりの頃は、本当にいつも必死だった。早く彼に追い付きたくて、認めて欲しくて、だから無理して背伸びして…その度に自分がまだまだ子供だって事を思い知らされた。
2012-11-17 21:02:27#萌r 青3b)そして彼はいつでも、一杯一杯になって潰れそうになっている私を、「ばかだなぁ」と言って慰めてくれたんだ。「俺の前で無理なんかしてどうする?」と、頭を優しく撫でながら。…今、こんなにも貴方を好きになるなんて。…おじさんとの思い出が心を満たしてゆく…
2012-11-17 21:03:28#萌r 青3c)……時間、もうそろそろかな。ふと我にかえって腕時計を確認する。16時53分。うん、いい頃合い。カップに少し残っていたコーヒーを飲み干して席を立とうとした瞬間、公園に着いたばかりの彼の姿が目に飛び込んできた。胸が、どうしようもなく高鳴る。
2012-11-17 21:03:58#萌r 青4a)店を後にし、逸る心を抑えながらおじさんの元へ。1時間も前から、なんて笑われるかな。辿りつけば丁度携帯電話に出た時だ。声を交わせず互いに手を振った。大事な電話らしい。気にしないでと手振りと目で合図。差し出された手を握る。冷たくなった大きな手に温もりが伝わればいい
2012-11-19 08:02:26#萌r 青4b)貴方がくれた想いの分、今より素敵な女になりたくて。この指じゃ包むに足りない。前の道を通った、おじさんと同年代の2人。余裕ある微笑の女性が羨ましい。手を繋ぐと腕の分遠いから「…君は大切な人だ」電話を切る直前の言葉が心に刺さる「悪い、待たせた」「…そんなことないよ」
2012-11-19 08:02:41#萌r 青4c)しまった電話の相手は誰。誰に大切だと言ったんだろう「突然だったが、来てくれてありがとう」照れくさそうに笑う「…ね。さっきの電話って誰?」おじさんはおどけて「さぁ、誰だろうな。…嬢ちゃんの知らない人だよ」声は女性、のように高かった気がする。嫌な予感に口ごもった。
2012-11-19 08:02:55#萌r 青5a) こんなモヤモヤしたものは早く解消した方がいい。そう、思うのに…『私の知らない人』その一言が私の意思を足止める。おじさんの全てを知ってる訳じゃない、けど、「尋ねれば教えてくれる」とどこか自惚れがあったのだと自覚させられる。
2012-11-21 01:55:43#萌r 青5b) 手を繋いだまま歩きだしても他愛ない会話を交わしていても、肺がどんどん重たくなる。きっとほんの小さなすれ違い。今まで何度もあったじゃない。折角すぐ隣に貴方が居るのに、騒ぐ胸を説き伏せるのに意識が逸れてしまう。
2012-11-21 01:55:47#萌r 青5c) …何度経験したって慣れる訳がない。信じるか否かの話でなく、ただ、怖い。出会うまでの数十年彼は彼の人生を歩んで来ていて、大切なモノをたくさん詰め込んで来たのだろう。きっと私もその中に数えてくれるよね?それでも…貴方の大切な人を、私は知ることが出来ないの?
2012-11-21 01:55:53#萌r 青6a) やっぱり、駄目だ。歩く足を止めた私を、おじさんが不思議そうな顔で振り返る。「どうした?」私を気遣う様な優しい声に一瞬で胸が詰まってしまった。あぁ、愛しい。「…さっきの電話、誰だったの?」私の質問におじさんの目が僅かだけど見開かれる。少し怖い。
2012-11-21 17:30:05#萌r 青6b) はっきりさせておかないと、せっかくおじさんと一緒に過ごせる時間なのに心の底から楽しめない。せっかくふたりきりなのに、そんなの嫌だ。「…さっきも言っただろう。嬢ちゃんの知らない人だって」「じゃあ誰?」問い詰める様な私の声に、おじさんが困った様に視線を彷徨わせる。
2012-11-21 17:33:40#萌r 青6c) 「どうしたんだ?いつもより我儘だな」「そうやって誤魔化さないで」絶対に話してもらう。そんな強い意志を込めておじさんの手をぎゅっと握ると、観念した様に苦笑を浮かべた。「…嬢ちゃんも強くなったな」「おじさんが強くしたの」そう言えば、おじさんは声をあげて笑った。
2012-11-21 17:38:34#萌r 青7a) 笑いながら頭にポンと手を置かれた「ちょっと待ってて」ベンチを指差してから自動販売機へ足を向けたおじさん。長い話になるのかな…簡単な話じゃないの?どうして? ベンチよりも近くにあったブランコに腰掛ける。座板の冷たさが胸にも冷や水をかけたよう「緊張、してきた…」
2012-11-22 18:07:13#萌r 青7b) 嫌な考えに目をぎゅっと瞑っていると手に温かい物が触れた「ごめんな、寒かったろ」おじさんが目の前にしゃがみ込んで紅茶を持たせた私の手を両手で包む込む。きつく目を閉じていたせいでおじさんの周りがチカチカしてる「嫌な思いさせて悪かった」スーツの胸元から花が覗いてる。
2012-11-22 18:09:34#萌r 青7c) 自販機近くの花屋の明かりが視界の端で消える「お詫びにな。仕事のことで詳しく話しようがないんだ。」ミニブーケを私の膝に置いた人差し指が招くように動かされる「…許してくれないか?」さっきよりも暗くなった公園。店先のシャッターが下りる音と同時に目を閉じて屈みこむ。
2012-11-22 18:11:49#萌r 青8a) 闇の中におじさんの姿が浮かんでは消えていく。笑ったり怒ったり私をからかったり…自分の中に居る彼の姿に、凍えた心がほんの少し緩む。おじさんはどんな時でも私のことを第一に考えていてくれてたっけ。それはきっと今日だって変わらない…よね。信じてもいいんだよね?
2012-11-27 14:09:12#萌r 青8b) ミニブーケと紅茶の温もりに励まされてそっと目を開けた。目の前に不安そうな表情のおじさん。そっか。おじさんも私と同じ…不安なんだ。「許すも許さないも…私はおじさんを信じるよ」少し涙目の私がそう呟くと「ありがとう」ととても嬉しそうに微笑んだ。「…おじさん、ずるい」
2012-11-27 14:09:19#萌r 青8c) その笑顔に緊張を解かれ、我慢していた涙が零れる。「すまない…だが君が心配するようなことは何もないんだ」大きな暖かい手が私の頬を包む。おじさんの手、大好き。優しさが直接触れているようで心がふわふわする。そのぬくもりをもっと感じたくて自分の手を重ねた。
2012-11-27 14:09:26#萌r 青9a)「なぁ泣かないでくれ嬢ちゃんに泣かれると…困る」「どうしたら…いいの」言葉は嗚咽混じり。涙腺は一度決壊したらとまらない。涙は零れる傍から冷気に冷やされおじさんの指を濡らす「どうした?」「大好きで…会えて嬉しいのに…つまらない事で嫉妬して苦しい…自分が嫌で堪らない」
2012-11-28 19:04:04