「意味の道具主義」を巡って

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

言葉はある種の道具だから、言葉の意味に関しては実在論ではなく、道具主義を採用するのが自然だ、という論の運びは説得力があるだろうか？

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia いやむしろ，あるものを道具として用いる際には道具そのものの実在性が前提されていると思います．例が悪いかもしれませんが，放射線を体内の様子の観測に使えるためには，放射線の諸性質にかなり安定性がある（実在性がある）と知られていなければならない．

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia 理論的概念について道具主義を取る場合も，理論的概念が実在の要素に対応していることは否定されるが，理論的概念そのものの意味内容（演繹推論における振舞い）は確定していると考えるものでしょう．

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft コメントありがとうございます。ハッキングの『表現と介入』を思い出しました、世界に介入するために使えるものは実在するという議論だったと思います。しかし、意味の道具主義にはこの議論は当てはまらないと思います。続

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft というのも意味は因果的効力を持つわけではないので、道具として使える⇒因果的効力を持つ⇒実在する、というルートで実在性を論証することができないからです。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft 科学的実在論ではなく道具主義を採るのと、意味の実在論ではなく道具主義を採るのは、一段階水準が違うように思います。意味の道具主義というのは、意味という概念の外延は空集合だが、意味という概念の推論役割は確定しているという立場になりそうです。

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia うーむ，実在すると論じるために因果的効力が必要かどうかは，「実在する」の意味によりますね．私は「…は実在する」を「…に関する事実がある」「…のあり方は決まっている」という程度の意味に用いたつもりで，この意味で実在するために因果的効力は無用と思います．

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia 例えば「語「パソコン」の意味は何か？」という問いに答えはない（意味概念の外延は空）が，「語「パソコン」の意味」というフレーズをどんなときに使えばよいかは述べられる（意味概念の概念役割は確定），といったことでしょうか．しかしそれは道具主義なのかなあ…．

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia 付言すると私自身は，二人の人がある言葉で同じことを意味しているかどうかは必ずしも定まらない，と信じる程度には意味について反実在論者です．しかし，「意味についての事実というものはない」とか，意味について実在論と対比されるいみでの道具主義を取るのは反対．

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft 頭を冷やして考え直したら、実在論を取るか道具主義を取るかということと、意味の指示対象説と推論役割説のどちらを取るかということは別の問題だと思えてきました。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft 意味の道具主義というのは、種々の語の意味（「＋」の意味、「緑色」の意味など）は、言語使用者の判断と独立に定まっている何かではなく、言語使用者の便宜に適うように我々が作り出していくものだという主張です。

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia なるほど，そういう意味での「道具主義」には積極的に賛成したいです（最近の「意味の良さ」についてのツイートにも共感しています）．ただそうだとすると，当初の「言葉はある種の道具だから…道具主義を採用するのが自然だ」というのはほとんど自明に成り立ちますね．

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft 共感してもらえると嬉しいです。でも「言葉はある種の道具だから、意味について道具主義を採用するのが自然だ」という時の「道具主義」が、「道具主義」の標準的な用法に合致しているのかがわかりません。道具主義について解説した読み物をご存知ですか？

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia 科学哲学で科学実在論との対比で使われる際の用法が標準的（数学の哲学や心の哲学の用法がそこから派生）で，他の用法はほとんど見かけません．科学哲学での用法はご存知と思いますが，小林道夫『科学哲学』，内井惣七『科学哲学入門』の記述は詳しいようです

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

@Zahlangabeheft ありがとうございます。確認してみますね。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

「意味の道具主義」ということで言いたかったのは、意味についての言明は真理を目指しているのではなく、有用性を目指しているということだったのかもしれない。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

theoretical virtueか。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

Andre Kukla "Non-empirical theoretical virtues and the argument from underdetermination" これはドンピシャの論文かもしれない。Kuklaの他の論文も自分に関係ありそうだ。どんな人なんだろう。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

ファン・フラーセンは、経験的十全性以外の理論の美徳（単純さ、説明力など）の違いは特定の理論を信ずるための理由にはならないと主張し、経験的データは理論に関して決定不全的であるという知見から反実在論を導いた。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

一方で、経験的十全性以外の理論の美徳（non-empirical theoretical virtues; NETV）というのは、要するに人間にとっての有用性のことなんだから、それを持ち出して理論を選び始めたらもはや実在論じゃないよね、と言いたくなる。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

ファン・フラーセンの議論は、実際には両刀論法なのだと思う。NETVを認める⇒道具主義を認めることになる。NETVを認めない⇒決定不全性から反実在論が帰結する。

Eisuke SAKAKIBARA @Acrographia

ファン・フラーセンが道具主義者だと言われることがあるのは、彼が、NETVは特定の理論を信じる証拠にはならないが、特定の理論を受容（accept）する理由にはなる、と主張するからである。つまり先のジレンマの第一の角を積極的に採用しているように思われるわけである。

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia ふーむなるほど．この意味での道具主義は，「手持ちの道具よりもっと便利な道具を見つけたら古い道具は捨てる」という道具に関する事実を科学理論に応用したものと見えます．説得力もあります．では意味について，同様の事実が成り立つでしょうか？　私の答えはNOです．

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia 確かに，ある言葉をある意味で使うよりも別の意味で使う方が便利なので意味が変わる，ということはあると思います．しかしそれは，その言葉が持っていた意味への捉え方が変わったのではなく，別の意味になっただけです．

yyyy/mm/dd @Zahlangabeheft

@Acrographia 補足：意味の実在論者も，言葉が別の意味を持つようになる事態は認めるでしょう．問題は「表現Eがある状況sにおいて…を意味する」といった主張が「道具」だと言えるかどうかです．今の「道具主義」の意味では，そうは言えないだろう，というのが私の論点です．