自傷と自殺について― 精神科医・斎藤環のメモ
本日の青少年健康センターのシンポジウム「自殺と自傷」、普段接する機会のない自殺、自傷の問題について。大変勉強になりました。以下ちょっとだけメモ。
2012-11-17 18:56:57思春期の約1割は自傷行為の経験がある。最初の自傷年齢は13歳。男性のほうが助けを求めない傾向がある。92%は誰もいないところでやっている。自傷のことは悩んでいても誰にも相談しない。アピール的な理由は18%のみ。
2012-11-17 18:57:15自傷には鎮痛効果がある。リストカット直後に血液検査をするとβエンドルフィンやエンケファリンの血中濃度が上がっている。痛みを”脳内麻薬”で鎮痛している。しかし鎮痛効果には耐性獲得と依存性が生じる。結果、切っても辛い、切らなきゃなお辛いとパニックになる。自傷はこうして自殺に発展する。
2012-11-17 18:57:52自傷予防のために「いのちの大切さ」を教えてはいけない。それは自傷を道徳や倫理の問題にすり替え、自傷者の自責感情をいっそう高めてしまうだろう。いじめ被害者に「死ぬな」と言うべきではない(内藤朝雄)こととちょっと似ているかな。
2012-11-17 18:58:59教育現場で出来ることは「友だちに自傷を打ち明けられたらどうするか」の方法を教えること。みてみぬふりはしない。気付いてかかわること。声を掛けること。秘密を守る約束はせず教師や親などの大人につなぐこと。手段や状況を詳しく聞かない(”感染”するから)。
2012-11-17 18:59:21自殺報道のあり方について、新聞はいくぶんマシになった。テレビは全然ダメ。スポーツ紙もダメ。「自殺を予防する自殺事例報道のあり方について」のWHO勧告(2000年)が守れていない。自殺を娯楽として消費する傾向。
2012-11-17 18:59:48【メディアがやるべきこと】・自殺に代わる手段(alternative)を強調する。・ヘルプラインや地域の支援機関を紹介する。・自殺が未遂に終わった場合の身体的ダメージ(脳障害、麻痺等)について記述する。
2012-11-17 19:00:12【メディアが避けるべきこと】・写真や遺書を公表しない。・使用された自殺手段の詳細を報道しない。・自殺の理由を単純化して報道しない。・自殺の美化やセンセーショナルな報道を避ける。・宗教的、文化的固定観念を用いて報道しない。
2012-11-17 19:00:46カート・コバーンの自殺時にはシアトルで群発自殺はほとんど起こらなかった。これは彼の恋人コートニー・ラブが、自殺したコバーンにどれだけ怒りを感じているかをはっきり語ったためと言われている。ちなみにカートの母は「あの子は愚か者のクラブに仲間入りしてしまった」と嘆いた。
2012-11-17 19:01:29自殺者周辺にいるのは哀しみにくれる人々ばかりではない。近親者であっても怒りに駆られている人もいる。自殺のコストは遺族の大きな負担となる。哀悼の意ばかりではなく、そうした怒りの報道も公平になされることで群発自殺を減らせるかもしれない。でも”娯楽”であるうちは無理だろうな、罪悪感で。
2012-11-17 19:02:52@pentaxxx 焼死の報道だけは、「遺体は、行方不明となっている○○氏と見られる」みたいな表現で、短絡的な判断を控える報道が各局徹底しています。自殺も、こうした理性的な形になりうるはずなんですが…。RT 自殺報道のあり方について、新聞はいくぶんマシになった。テレビは全然ダメ。
2012-11-17 19:32:54@pentaxxx 怒りにしろ哀しみにしろ身内の自殺が遺族に与える衝撃ははかりしれなく、遺族は一生それを背負って生きていくという重さを考えれば、おのずと報道の姿勢も変わるはずなのですが、問題報道をしている側は他人事なのだと思います。事件に耐性ができてしまうのでは。悲しいことです。
2012-11-17 21:58:11@pentaxxx 私自身ニルヴァーナのファンです。リアルタイムではないですが、後追い自殺はなかったそうです。相談電話は、大変みたいでしたが、ケネディ大統領並みの大騒ぎになったようですが、先生の仰る通りコトニーラブが、怒ったそうです。ファンの前で。かなり。
2012-11-17 22:05:36実はまだ怒っているのです。http://t.co/xTci15J5 「もしこの世に舞い戻ってきたら、殺してやりたいくらい憎たらしい。」(コートニー・ラブ)
2012-11-17 22:17:58@pentaxxx リアルタイムのファンですが、カートはそれより前に、鬱やヘロイン中毒リハビリ中であることを公表していました。その情報まで自ら開示していたのも効果があったと思います。
2012-11-17 22:20:18ちょっと補足(ここまでは主に松本俊彦先生の講演ツイ)。自傷する人の自己愛について。彼らの多くは激しい「自己嫌悪」を訴える。…いや、ちょっと違うな。「自分が大嫌い」と訴える。自分が嫌いだから自傷する。でも-幸いにして-すぐ自殺には至らない。なぜか。
2012-11-17 22:20:53自傷は「死なないため」の手段だから。高まった不安やイライラによる緊張を一気に「切る」ためのガス抜きだから。「自分が嫌い」という言葉は、一種の自己愛-ただし、ぎりぎりの-の表明だから。
2012-11-17 22:21:16なぜそれが自己愛なのか。自分はダメだ、しかし「自分がダメ」なことは自分が誰よりも良く知っている。この「知っている」が自己愛の担保となる。自傷はその確認のためになされるだろう。前にこれを「自傷的自己愛」と呼んだことがある。
2012-11-17 22:21:39しかし自傷は身体を破壊する。そして身体こそは自己愛の最大の拠り所だ(鏡像段階!)。自傷の反復によって自己愛の拠点はぼろぼろに破壊され、最悪の場合、自殺や衰弱死などの死に至る。自己愛ゆえに、生きるために自己を破滅させるという自傷行為の悲しき矛盾。
2012-11-17 22:22:00自傷的自己愛の回復には世界に対する基本的信頼の回復と、親密で安定した対象関係が欠かせないが、残念ながら二つとも医療がもたらすことはできない。その場その場の手当を続け、ネットワークで支援しつつ、最終的には幸運を祈ることになる。
2012-11-17 22:22:28