早期からの職業目標設定型のキャリア教育推進の論拠は?

「高校・大学等の初年次からキャリア教育を実施するよう取組を進めるべき」という「若者雇用戦略」の主張は調査結果に裏付けられてはいない、という話。 6月のツイートですが、若者雇用戦略推進協議会も動き出していることから、まとめました。 ・若者雇用戦略(2012年6月12日) 続きを読む
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上西充子 @mu0283

こちらの方はもう少し落ち着いて整理してから書こうと思っていたのだが、気づいたことは速やかに出した方がよいかとやっぱり思い直して書く。こちらは命にかかわる問題ではないが、キャリア教育の今後の方向性やそれに関連した施策や民間プログラムの動向に関わりそうな問題。

2012-06-18 17:22:40
上西充子 @mu0283

1:6月12日に正式決定した若者雇用戦略にはこういう表現が含まれている。【職業を意識した時期が遅いほど、自分の就きたい職業で悩み、社会に出ることに不安を感じている傾向にあること・・から、原則高校・大学等の初年次からキャリア教育を実施するよう取組を進めるべきである。】

2012-06-18 17:22:54
上西充子 @mu0283

2:【職業を意識した時期が早いほど将来の目標を持って様々な活動に取り組めること、高校や大学等において中退者が相当程度いること等を踏まえ、高校や大学等の各学校において初年次から教育活動の全体を通じて体系的・系統的なキャリア教育を実施するよう取組を進める。】

2012-06-18 17:23:09
上西充子 @mu0283

3:私はこの雇用戦略対話WG(若者雇用)に委員として参加してきたが、このWGにおける若者雇用問題の捉え方に自分の主張の焦点を当てておりhttp://t.co/n7RG5mb0、キャリア教育の部分は他の委員に任せていた。

2012-06-18 17:23:19
上西充子 @mu0283

4:最終的に、私が懸念していた点(若者雇用問題を「若者を何とかしよう」問題に矮小化する)はかろうじて回避された。第5回WGの原案の基本方針では、「厳しい環境の中にあって」「骨太な若者に育っていけるよう」「社会全体で支援」とだけ書かれていたが、

2012-06-18 17:23:32
上西充子 @mu0283

5:最終的な若者雇用戦略の基本方針では、上記と共に、「若者が働き続けられる職場環境を実現し、また、非正規雇用の労働者のキャリア・アップを支援していくことも重要」と、重要な点が2点、並列で表記され、「働き続けられる職場環境を実現」という表現が盛り込まれた。

2012-06-18 17:23:43
上西充子 @mu0283

6:この第二の重要点に関しては、「若者の非正規雇用の割合が大幅に増えており、正規雇用の場合も、長時間労働等、職場環境が厳しく早期離職する場合も少なくない等、適切なキャリアを積むことが難しくなっている」という現状認識も示された。

2012-06-18 17:23:55
上西充子 @mu0283

7:【職業を意識した時期が早いほど将来の目標を持って様々な活動に取り組めること】という表現の問題性に私が気づいたのは、第5回WGが終了し、若者雇用戦略の最終案が固まる前の段階だった。

2012-06-18 17:24:09
上西充子 @mu0283

8:私自身は、早期に職業目標を設定し、それに向けて計画的に大学生活を送るというタイプのキャリア教育は、幅広い進路に開かれた文系学部の学生には向いていないと考えている。狭い職業目標の設定は、学びへの意欲と、学びを通した社会理解を妨げると考えている。

2012-06-18 17:24:21
上西充子 @mu0283

9:そのため、【職業を意識した時期が早いほど将来の目標を持って様々な活動に取り組めること】という表現は変えられないのか、また、これはいかなる知見に基づくものであるか、と事務局側に尋ねた。

2012-06-18 17:24:32
上西充子 @mu0283

10:事務局側からの返答は、この点についてはもう変更はできない、これは第1回WG資料4(事務局側提出資料)のp.2に基づいている、というものだった。 http://t.co/iVCt54XY

2012-06-18 17:25:29
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上西充子 @mu0283

11:そこには「<大学生を対象とした意識調査>進路を選択するときの悩み(職業を意識した時期別)」という調査結果があり、職業を意識した時期が早いほど、自分の適性や就きたい職業について悩む割合は低い結果が示されている。

2012-06-18 17:26:06
上西充子 @mu0283

12:そして同ページには、「大学に入っても職業を意識していない、又は大学に入ってから意識した者は、自分の適性や就きたい職業等で悩み、社会に出ることに不安を感じている傾向」と書かれている。

2012-06-18 17:26:15
上西充子 @mu0283

13:しかし、この資料の元調査(ベネッセ調査)を確認した結果、このグラフを上記のように解釈することは全くの誤解か曲解である、ということがわかった。

2012-06-18 17:26:44
上西充子 @mu0283

14:WG第3回の資料4(松井氏資料)p.4図表5と照らし合わせればわかる通り、これは大学生を対象とした調査ではあるが「大学進学前(高校在学中)」にどのような進路選択上の悩みを持っていたかを示した結果である。 http://t.co/QRSfAjNf

2012-06-18 17:30:01
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上西充子 @mu0283

15:その結果をもとに「大学に入っても職業を意識していない、又は大学に入ってから意識した者は、自分の適性や就きたい職業等で悩み」とまとめることは、全くの誤解か曲解である。

2012-06-18 17:30:50
上西充子 @mu0283

16:なお、この調査結果の元データは下記から確認できる。http://t.co/0X7Tw1hK  の PAGE 14/43およびhttp://t.co/gOz34Ced  のp.352

2012-06-18 17:31:06
上西充子 @mu0283

17:また、同じ松井氏の資料の図表4「大学への進学理由(職業を意識した時期別)」には、職業を意識した時期が早いほど、「すぐに社会に出るのが不安」という傾向は低いことが示されている。 http://t.co/1U2VYNnP

2012-06-18 17:38:19
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上西充子 @mu0283

18:これが第1回WG資料4p.2の【職業を意識した時期が遅いほど、・・社会に出ることに不安を感じている傾向にある】の根拠となったのかもしれないが、上記の松井氏の資料の図表4も「大学への進学理由」であって、就職を前にした大学生の不安を表したものではない。

2012-06-18 17:32:15
上西充子 @mu0283

19:単に、「(大学に進学せずに)すぐに社会に出るのが不安」という傾向を表したものに過ぎない。元データはこちら。http://t.co/0X7Tw1hK  の PAGE 14/43

2012-06-18 17:32:28
上西充子 @mu0283

20:これらを事務局側に伝えたところ、同じベネッセ調査に、大学卒業後の職業に関する意識を問うた設問があり、やはり職業を意識した時期が早いほど、大学卒業後の将来の目標設定等が行われているという傾向があると指摘を受けた。

2012-06-18 17:32:41
上西充子 @mu0283

21:具体的にはこちらhttp://t.co/jZ7SIyPH(p.288-289) http://t.co/gOz34Ced 調査票(p.343)

2012-06-18 17:39:14
上西充子 @mu0283

22: これを見ると確かに「希望する職業がある」「将来についてはっきりとした目標をもっている」「自分にどのような能力・適性があるか知っている」「希望する職業について十分な知識をもっている」の4項目で、早い段階から職業を意識した学生ほど肯定率が高い。

2012-06-18 17:39:37
上西充子 @mu0283

23:しかし同時に注目されるのは、「最近の産業動向について知識をもっている」については、早期に職業を意識した者よりも、かえって大学入学後に意識した学生の肯定率が高いことである。 http://t.co/Bjz7ts4U

2012-06-18 17:40:12
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上西充子 @mu0283

24:雇用戦略対話の論点の1つは「ミスマッチ」であった。実際の労働市場における需要と、学生の希望や適性が合わない、という問題だ。

2012-06-18 17:40:52