自傷に寄り添う。松本俊彦・斉藤環両先生のツイートより。

自傷は人の気を引くため、薬物依存はだらしがないから、そんな風に思ってはいませんか? 自傷のほとんどはひっそりと孤独に行われています。 薬物依存も自傷も、どうしようもない辛さを和らげるコーピング(ストレス対処法)の側面があり、だからこそ抜け出しにくく再燃しやすい。 臨床の現場で彼らに寄り添うお二人のツイートをまとめさせていただきました。自傷と依存への理解の一助となれば幸いです。(後半に意図的に他人に見せる自傷について追加収録を行いました) 続きを読む
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自殺と自傷

  • ほとんどの自傷はひっそりと行われる。自傷に気づいた時、してはならないこと、など。
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

明日17日土曜日の13時30分から17時、青少年健康センターのシンポジウム「自殺と自傷について考える」を開催します。私はひきこもり、いじめと自殺の関係について話します。松本俊彦先生とちゃんとしたコラボは初めてなので、すごく楽しみです。http://t.co/jiT0aqio

2012-11-16 12:17:47
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

本日の青少年健康センターのシンポジウム「自殺と自傷」、普段接する機会のない自殺、自傷の問題について。大変勉強になりました。以下ちょっとだけメモ。

2012-11-17 18:56:57
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

思春期の約1割は自傷行為の経験がある。最初の自傷年齢は13歳。男性のほうが助けを求めない傾向がある。92%は誰もいないところでやっている。自傷のことは悩んでいても誰にも相談しない。アピール的な理由は18%のみ。

2012-11-17 18:57:15
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自傷には鎮痛効果がある。リストカット直後に血液検査をするとβエンドルフィンやエンケファリンの血中濃度が上がっている。痛みを”脳内麻薬”で鎮痛している。しかし鎮痛効果には耐性獲得と依存性が生じる。結果、切っても辛い、切らなきゃなお辛いとパニックになる。自傷はこうして自殺に発展する。

2012-11-17 18:57:52
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自傷予防のために「いのちの大切さ」を教えてはいけない。それは自傷を道徳や倫理の問題にすり替え、自傷者の自責感情をいっそう高めてしまうだろう。いじめ被害者に「死ぬな」と言うべきではない(内藤朝雄)こととちょっと似ているかな。

2012-11-17 18:58:59
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

教育現場で出来ることは「友だちに自傷を打ち明けられたらどうするか」の方法を教えることみてみぬふりはしない。気付いてかかわること。声を掛けること。秘密を守る約束はせず教師や親などの大人につなぐこと。手段や状況を詳しく聞かない(”感染”するから)。

2012-11-17 18:59:21
  • 自殺報道のあり方について。日本の報道の問題点。遺族が怒りを表すことの意義。
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自殺報道のあり方について、新聞はいくぶんマシになった。テレビは全然ダメ。スポーツ紙もダメ。「自殺を予防する自殺事例報道のあり方について」のWHO勧告(2000年)が守れていない。自殺を娯楽として消費する傾向

2012-11-17 18:59:48
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

【メディアがやるべきこと】・自殺に代わる手段(alternative)を強調する。・ヘルプラインや地域の支援機関を紹介する。・自殺が未遂に終わった場合の身体的ダメージ(脳障害、麻痺等)について記述する。

2012-11-17 19:00:12
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

【メディアが避けるべきこと】・写真や遺書を公表しない。・使用された自殺手段の詳細を報道しない。・自殺の理由を単純化して報道しない。・自殺の美化やセンセーショナルな報道を避ける。・宗教的、文化的固定観念を用いて報道しない。

2012-11-17 19:00:46
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

カート・コバーンの自殺時にはシアトルで群発自殺はほとんど起こらなかった。これは彼の恋人コートニー・ラブが、自殺したコバーンにどれだけ怒りを感じているかをはっきり語ったためと言われている。ちなみにカートの母は「あの子は愚か者のクラブに仲間入りしてしまった」と嘆いた。

2012-11-17 19:01:29
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自殺者周辺にいるのは哀しみにくれる人々ばかりではない。近親者であっても怒りに駆られている人もいる。自殺のコストは遺族の大きな負担となる。哀悼の意ばかりではなく、そうした怒りの報道も公平になされることで群発自殺を減らせるかもしれない。でも”娯楽”であるうちは無理だろうな、罪悪感で。

2012-11-17 19:02:52
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

実はまだ怒っているのです。http://t.co/xTci15J5 「もしこの世に舞い戻ってきたら、殺してやりたいくらい憎たらしい。」(コートニー・ラブ)

2012-11-17 22:17:58
  • ぎりぎりの自己愛としての自傷
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

ちょっと補足(ここまでは主に松本俊彦先生の講演ツイ)。自傷する人の自己愛について。彼らの多くは激しい「自己嫌悪」を訴える。…いや、ちょっと違うな。「自分が大嫌い」と訴える。自分が嫌いだから自傷する。でも-幸いにして-すぐ自殺には至らない。なぜか。

2012-11-17 22:20:53
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自傷は「死なないため」の手段だから。高まった不安やイライラによる緊張を一気に「切る」ためのガス抜きだから。「自分が嫌い」という言葉は、一種の自己愛-ただし、ぎりぎりの-の表明だから。

2012-11-17 22:21:16
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

なぜそれが自己愛なのか。自分はダメだ、しかし「自分がダメ」なことは自分が誰よりも良く知っている。この「知っている」が自己愛の担保となる。自傷はその確認のためになされるだろう。前にこれを「自傷的自己愛」と呼んだことがある

2012-11-17 22:21:39
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

しかし自傷は身体を破壊する。そして身体こそは自己愛の最大の拠り所だ(鏡像段階!)。自傷の反復によって自己愛の拠点はぼろぼろに破壊され、最悪の場合、自殺や衰弱死などの死に至る。自己愛ゆえに、生きるために自己を破滅させるという自傷行為の悲しき矛盾。

2012-11-17 22:22:00
東畑開人×斎藤環 対談集『臨床のフリコラージュ——心の支援の現在地』青土社 @pentaxxx

自傷的自己愛の回復には世界に対する基本的信頼の回復と、親密で安定した対象関係が欠かせないが、残念ながら二つとも医療がもたらすことはできない。その場その場の手当を続け、ネットワークで支援しつつ、最終的には幸運を祈ることになる。

2012-11-17 22:22:28

薬物依存-何故繰り返すのか

@DSHtoshilancia

ある者は、「薬物依存症は快楽に耽溺した結果だろ?」と、物知り顔をしていう。だが、そうだろうか? 我々の中枢神経は、いかなる快感にもすぐに倦み、飽きてしまうものだ。それにもかかわらず、なぜ薬物依存者は倦むことなくそれを繰り返すのか? (続)

2012-11-15 10:12:18
@DSHtoshilancia

おそらく薬物は、その人が「不足」と感じている何かを補い、自分を理想の自分に近づけ、少なくとも一時期は現実の生活に適応し、日々を生き延びることを可能にしてくれていたからではないのか? たとえば精神障害によって制限された何かの能力、あるいは、人間関係や自信、自尊心かもしれない。(続)

2012-11-15 10:12:44
@DSHtoshilancia

別の者は、「薬物に対する渇望とは、脳内報酬系の神経化学的なアンバランスの結果だ」という。それではなぜ薬物依存者は、何年間もやめていた薬物に再び手を出すことが珍しくないのだろうか? (続)

2012-11-15 10:13:02
@DSHtoshilancia

再使用したところで得られる快感など線香花火なみにはかなく、たちまち消えしぼんでしまう。むしろ後に続く苦痛の方がはるかに深刻で、延々と薬物依存者を苛み続けるものだ。それにもかかわらず、なぜ彼らはその自己破壊的な行為を繰り返すのか? (続)

2012-11-15 10:13:16