■山本七平botまとめ/【防衛の四原則】/太平洋戦争から得た教訓とは/~「先見性」「的確な外交関係」「国内整備」の前提なしに「軍備」を増強しても無駄~

山本七平著『「常識」の研究』/防衛の四原則/204頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【防衛の四原則】話題を呼んだ森嶋・関両教授の平和論争をさまざまな雑誌その他で読み、それをまた読み返してみて、なるほどとも思い、また少々不思議にも思った。<『「常識」の研究』

2012-11-25 23:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

②というのは、私も前にあるテレビの対談で防衛について意見を聞かれ、極めて簡単に四原則を述べたわけだが、そのとき私の頭にあったのは、「防衛」であって、必ずしも「国防」でなく、ましてやそれがすぐ「大論争・戦争と平和」へと短絡するものでもなかったからである。

2012-11-26 00:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

③簡単にいえば私は、企業の防衛であれ一国の防衛であれ、その原則――これはあくまでも原則だが――は同じであり、この二つに全く別の原則が作用するとは思っていないからである。

2012-11-26 00:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

企業の防衛も一国の防衛も原則は同じだ、という言葉は、さまざまな反発を引き起こす言葉かも知れない。 したがってここでなぜそう言いうるかという点について、もう一度その四原則を、以上の観点から取り上げてみよう。

2012-11-26 01:27:58
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤私が第一にあげたのは先見性、すなわち、冷静かつ的確な将来への見通しである。 この点では私は、太平洋戦争の発端を真珠湾に置かず、日独伊軍事同盟とそれに先立つ三国防共協定に置く。 そしてその背後にあったものが、勝利する枢軸側、没落する米英側という見通しなのである。

2012-11-26 01:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

こういう場合、日本の新聞はしばしば正気を失う。 ある時期のヒトラーはちょうど一時期の毛沢東のようなもので、周恩来に握手されて感動の余り泣き出した女性評論家がいたように、ヒトラーに握手されてただただ感動している日本人のことが当時の雑誌に記されている。

2012-11-26 02:27:49
山本七平bot @yamamoto7hei

企業であれ国家であれ、こうなっでしまってはオシマイであり、先見性もヘチマもあったものではない。 第二は、正確な先見性に基づく的確な外交関係の確立である。 企業であれ国家であれ、完全な孤立状態では存立し得ない。

2012-11-26 02:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧したがって「正しい見通し」をもっていてもそれに対応する手を打たなければ、その見通し自体が意味をなさない。 前記の日独伊軍事同盟は、見通しを誤っていただけでなく、この同盟自体が何一つ機能しなかった

2012-11-26 03:27:51
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨軍事同盟とは名ばかりで、統合参謀本部などは勿論なく、共同作戦などは全くなく、首脳会談もなければ、合同参謀会議といったものすらなかった。 いわば有名無実である。

2012-11-26 03:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩第三が、以上二つに対応し得る国内整備である。これも国でも企業でも同じであり、どのように見通しが正しく、関連企業との連携も完璧でも、社内体制がそれに即応していなければ意味はない。当時の日本のように、石油は一年半、食糧はせいぜい二年では、相手はその涸渇を待っていれば十分なのである。

2012-11-26 04:27:52
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪そして第四が軍備となるのだが、以上の三原則に違反していると、当時のアメリカの七割以上という軍備をもち、真珠湾の奇襲で完全な一時的優位に立ちながら、結局はすべてが無意味な努力となるわけである。

2012-11-26 04:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

結果はこの四原則のうち三原則でほぼ決まっているわけで、最後の一つを能力以上に機能させても無意味だということである。 恐らくこれが、われわれが太平洋戦争から得た最大の教訓であり、同時に私にとっては、倒産出版社から得た最大の教訓なのである。

2012-11-26 05:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬いわば先見性を誤ったらどんなに全社員が努力してもダメ、 たとえ先見性が正しくそれに基づく企画そのものは正しくても、著者、販売店等との連携が的確になされねばダメ、 その連携がうまくいっても人材面・資金面で社内が整備されていなければダメ、(続

2012-11-26 05:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭続>この二つのダメを何とかすべく、全員が特攻隊のように小売店に体あたりしてもダメ、ということである。 私はある出版社の倒産を見て、ちょうど太平洋戦争末期だなと思ったことがある。

2012-11-26 06:27:49
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮防衛問題というとすぐ何やら、われわれ凡俗の手のとどかない崇高な議論になってしまうのは、戦前の軍部の伝統が奇妙な裏返しの形で今も残っている証拠であろう。 そしてこれが、一般人が「日常の論理」としてこの問題を考えることを昔も今も妨げてきた

2012-11-26 06:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯そこで、まず企業の防衛も国の防衛も原則は同じことだと考えてみよう。 自社の先見性が正しいか否かのように、今の日本、特にマスコミの先見性は正しいかどうか

2012-11-26 07:27:54
山本七平bot @yamamoto7hei

⑰自社の連携が機能しているか否かのように、日本の同盟・外交関係は機能しているかどうか。 自社の社内があらゆる面でそれに対応するよう整備されているか否かのように、日本の国内が整備されているか否かである。

2012-11-26 07:57:40