■山本七平botまとめ/「自由」を守らない日本のマスコミ/~「自由」と「民主」は「結合しなければ共に存在し得ない概念」とは考えられていない日本~

山本七平著『「常識」の研究』/「自由」とは/173頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【「自由」とは】「自由民主」という言葉について、あらためて考えてみたい。 というのは、少なくとも戦後の日本においては「自由」と「民主」は「結合しなければ共に存在し得ない概念」とは考えられていないからである。<『「常識」の研究』

2012-11-26 08:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

②たとえば、宮本・袴田論争に出てくる「民主集中制」という言葉である。この場合「民主」という言葉を使い、俗に「民主的」といわれる手続さえ踏んでいれば、それが「民主主義」だという前提でその正当性が主張されていても、「自由」をどう位置づけているかは不明である。

2012-11-26 08:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

③そしてこれが不明であっても「民主」ならばそれで良いとする傾向は新聞の論説等にもある。 では、自由とは具体的に何を意味するのか。

2012-11-26 09:28:05
山本七平bot @yamamoto7hei

④自由民と奴隷がいた社会では「自由」の基本的意味は極めて明確で「個人が自由意志に基づく決断によって行動する権利をもち、またその決断に基づいて自由に契約をなしうる事」で、これができうるのが自由民である。一方奴隷はそれを行い得ない売買と強制の対象であり、従って契約の対象にはなり得ない

2012-11-26 09:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤この原則は組織と個人との間を律するだけでなく、個人と国家との間をも律する筈である。 日本国憲法は、日本人という一個人が自由意志に基づいて国籍を放棄する権利を認めているが、自由主義憲法としては当然の規定であろう。

2012-11-26 10:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥最近朝日新聞に…本多勝一記者のベトナムに関する…一文が載った。…筆者が何を言いたいのかなかなか判らなかったが、末尾の「アメリカ建国時にも20人に1人の割で脱落者があった。現在のベトナム難民はソビエト建国時より遙かに少ないのではないか」といった意味の部分まできてなる程と納得した。

2012-11-26 10:57:45
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦「苦しい建国時代に脱落者が出るのは当然で、これを大問題の如くに取り上げるべきではない」が、まわりくどい表現で読者を誘導して到達させる結論なのであろう。 確かに建国時代には脱落者が出る。アメリカ建国時に5%の脱落者が出たというのは初耳だが、もっとひどい例が目の前にある。

2012-11-26 11:28:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧それはイスラエルで、ユダヤ人人口380万といわれるがその一割の38万は脱落者で、実際の人口は350万以下しかいない。 脱落者が出る事を不名誉と考えるなら、この国は最高の不名誉にあるわけで、ベトナムは勿論ソビエトでも、苦難の建国時にこれほど高率の脱落者を出したわけではあるまい。

2012-11-26 11:57:44
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨イスラエルの脱落者はヨルディームと呼ばれ、この問題は同国で活発に論じられている。 議論百出だが、しかし絶対に出てこないのは、ヨルディームの出現を防ぐため、出国禁止もしくは制限を行うべきだという議論である。

2012-11-26 12:28:04
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩「脱落者」といっても、ヨルディームとベトナム難民とは決して同じではない。 「自由意志に基づく自らの決断」により航空券を買って堂々と自由に出て行くわけであり、後者は、監視の目をくぐって海上に出、僥倖をたよって漂流しているわけである。

2012-11-26 12:57:46
山本七平bot @yamamoto7hei

この二つは本質的に違うが、「自由」という視点がなければ、ともにそのパーセンテージの少ない方が立派だという言い方もできるであろう。 だがそれは詭弁にすぎない。 第二に、ヨルディーム問題はイスラエルで活発に討論されている。これが「言論の自由」であり、「知る権利」の行使である。

2012-11-26 13:28:07
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫ベトナムでは難民問題は論じられているのであろうか。恐らく否であり、ベトナム人はそういう難民の発生している事すら公式には知らされていないのであろう。 そしてこの知らされておらず、自由に討議する事もできないという事実を、言論の自由を主張する新聞自身が承認しているわけである。

2012-11-26 13:57:47
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬ベトナムにしろイスラエルにしろ、外国のことであり、それ自体はわれわれの日々の生活には直接に関係はない。 ただこれらを報じかつ論評しているのは日本の新聞であり、その新聞の視点は外国の問題でなく日本国の問題、すなわちわれわれの問題である。

2012-11-26 14:28:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭そしてこの視点を見ると、もし日本が″解放″されたら、日本の新聞がヨルディームの自由を主張することはあり得ず、おそらくは「脱落者何パーセント」でアメリカ建国時、イスラエル建国時よりはるかに少ないと主張するであろうと思わざるを得ない。

2012-11-26 14:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

そうなった時は、全日本が一個の強制収容所になったときである。ヨルディームの権利を守るからといって、すべての人間がヨルディームになるわけではない。 しかしそれを守ってやらねば、自分たちも「自由」を失ってしまうのである。それが「自由」というものであろう。

2012-11-26 15:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑯そしてこの自由を、日本の新聞が決して守ってくれないことを、各人が銘記しかつ覚悟しておくべきである。

2012-11-26 15:57:45