笠井潔氏 @kiyoshikasai による「政局分析、日本政治史、そして屋根派または街頭派」の話

自分のためのメモ
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笠井潔 @kiyoshikasai

TLは選挙の話題で埋まっている。どこかで書いたと思うが、前回の衆院選と民主党政権成立直後の判断は以下のようだった。……次の選挙までに、民主党ではなにもできないことが誰の目にも明らかになる。自民も駄目だが民主も駄目だ。そこで出てくるのが排外主義新党だろう。

2012-11-29 13:00:57
笠井潔 @kiyoshikasai

3年半前の予測は、当たった部分もあるが外れた部分もある。外れたのは、民主党への期待が1年ともたなかった点。排外主義新党は「維新」という形で登場したが、自民党も極右に占拠された点。小沢派新党が「未来」という形で登場した点、などなど。ま、情勢分析にもこの程度の誤差はある。

2012-11-29 13:06:13
笠井潔 @kiyoshikasai

大震災と原発事故は予測外のファクターだし、そこから派生した問題を除けば、まあまあ当たったといえるのではないか。米ソ冷戦を前提とする日本の戦後政治構造は、細川内閣の誕生で崩壊しはじめたわけだが、あれから20年たっても、まだポスト戦後政治構造は明瞭な形をなしていない。

2012-11-29 13:10:38
笠井潔 @kiyoshikasai

ソ連崩壊以降も西欧では、保守党と社会民主主義党が議会内二大勢力であることに変わりはない。共産党の没落(フランス)や消滅(イタリア)、エコロジー党と排外主義党の登場はあったとしても。ドイツやフランスでは保守党の右に排外党、社民党の左にエコロジー党や反貧困党という構図だ。

2012-11-29 13:18:22
笠井潔 @kiyoshikasai

イギリスやイタリアやスペインの場合も、この構図を大枠では共有している。日本が違うのは、保守党に拮抗する社民党が存在しない点。村山政権時代の迷走で、社会党が崩壊した結果だ。日本型社民党の脆弱性の根拠は、日本の社会党が英・独・仏のような改良主義政党として定着しなかった点にある。

2012-11-29 13:23:57
笠井潔 @kiyoshikasai

日本社会党は、第二次大戦中には大政翼賛会だった勢力と、労農派マルクス主義勢力の折衷として結党された。前者の中心が民社党として分裂して以降、社会党は労農派に由来する協会派に牛耳られる。しかも向坂派はソ連社会主義礼讃だったから、ソ連崩壊で党内ヘゲモニーを失い、社会党は解党状態になる。

2012-11-29 13:30:02
笠井潔 @kiyoshikasai

1960年代のはじめにマルクス主義の放棄を宣言したドイツ社民党は生き延び、マルクス主義に牛耳られていた日本社会党は消滅した。結果として日本には、小選挙区制による外的強制もあって、民主党というヌエ的政党が「第二極」の位置を占め、3年半前に政権を獲得するにいたる。

2012-11-29 13:38:00
笠井潔 @kiyoshikasai

鳩山的なリベラル左派、松下系のリベラル右派、元社会党の社民左派、元民社党の社民右派、とくに思想的立場はない小沢派が雑居していた民主党が過渡的な政党にすぎないことは最初から明らかだった。

2012-11-29 13:42:10
笠井潔 @kiyoshikasai

改憲再軍備派とリベラル派を左右に配置し、吉田→池田→田中ラインの軽軍備・経済優先路線を主流派としてきた自民党も、冷戦の終結以降20年で変質し続けてきた。日本経済の地盤沈下は伝統的な経済優先路線(日本型福祉路線)を、冷戦終結による日米安保再編は軽軍備路線の足下を掘り崩した。

2012-11-29 13:45:48
笠井潔 @kiyoshikasai

こうして、かつて反主流だった右派(改憲再軍備派)が、野党時代の自民党で主流派の位置を占めるにいたる。総裁選の候補者全員が右派であり、なかでも極右の安倍が(政権投げだしというハンディキャップにもかかわらず)勝利した事実が、このことを物語っている。

2012-11-29 13:50:32
笠井潔 @kiyoshikasai

安倍自民党は、経済的には上げ潮路線、政治的には憲法改定の極右路線。野田民主党は、経済的にも政治的にもそれを生温くした路線。デフレ脱却と経済成長を唱えながらも極端な金融緩和とリフレには反対する。外交的にはリベラル右派で、石原が敷いたレールを後追いし尖閣国有化を「決断」した。

2012-11-29 13:58:09
笠井潔 @kiyoshikasai

この勝負なら、なにごとにつけても曖昧な野田民主より、輪郭鮮明な安倍自民のほうが圧倒的に有利だ。民主100議席以下、自公で300に迫る(あるいは超える)というのが、今回の選挙にかんしては妥当な予想だった。

2012-11-29 14:02:13
笠井潔 @kiyoshikasai

ただしこれは、民主と自公の勝負に限定した話だ。社共その他の少数政党は別として、いわゆる「第三極」が存在する。原発政策をフルイにして、それも極右第三極とリベラル第三極に大きく分かれてきた。

2012-11-29 14:05:53
笠井潔 @kiyoshikasai

実体は小沢派でも、看板をかけかえた「未来の党」は、そこそこ善戦するだろう。第三極内の勝負では「維新」に勝利する可能性が高い。丸裸の小沢派では全滅に近かった一年生議員が、「未来」の看板で頽勢を挽回することも、ある程度は期待できる。

2012-11-29 14:12:08
笠井潔 @kiyoshikasai

「未来」が現行の70議席を減らしても、40あるいは50の線を維持できれば大成功だろう。選挙後の政局は、自公民か自公維かに焦点が移る。「未来」の登場によって、自公維という極右連合政権の可能性は少し減った。しかし、政局にはあまり関心がない。どちらになろうと、たいした違いはない。

2012-11-29 14:16:44
笠井潔 @kiyoshikasai

たとえば原発政策にかんしても、自公民であれ自公維であれ、自民党の再稼働路線に引きずられる。民主も維新も風向きになびいているだけで、脱原発に真剣な関心はないのだから。

2012-11-29 14:20:35
笠井潔 @kiyoshikasai

今回の選挙によって、排外主義との闘争も原発をめぐる闘争も、そして沖縄基地問題や日米安保をめぐる闘争も、それぞれに困難な局面に入るだろう。排外主義勢力優位の政権ができることは、覚悟しておかなければならない。

2012-11-29 14:27:55
笠井潔 @kiyoshikasai

とはいえナチスやボリシェヴィキの類が権力を奪取するわけではない。いくらでも闘いようはある。次の次の選挙まで、これから4年が、真の勝負になるだろう。アメリカ型の民主党でも西欧型の社民党でも、その中間形態でもいいが、本来の意味での第二極が日本でも形成されるのか、どうか。

2012-11-29 14:31:40
笠井潔 @kiyoshikasai

右側に安倍自民や維新の排外主義、左側に「未来」や自民と民主からこぼれたリベラル派という構図なら、西欧の政治構造に類似してくる。後者のために頑張ろうというなら、坂本龍一やグリーン・アクティブ文化人に反対する気はない。どんどんやってください(笑)。

2012-11-29 14:36:46
笠井潔 @kiyoshikasai

無翼階段派の笠井は、その先のことを考えたいと思う。

2012-11-29 14:39:32
笠井潔 @kiyoshikasai

今年1月か2月にツイートしたはずだが、フラスン国民議会の議席配置を参照例として政治的立場を分類するとしたら、二つの観点がある。議席が右か左か、ようするに右翼か左翼か。しかしアリーナ席と階段席という上下の対立構図もあった。

2012-11-29 14:42:00
笠井潔 @kiyoshikasai

階段席の「上派」をモンタニャール(高いところに坐るから、山岳派)という。アリーナ席は沼地派(これは自称ではない、モンタニャールが揶揄してそう呼んでいた)。議席の左右による政治的立場の分類を拒否し、上下による分類で「階段派=上派」であるというのが、笠井の自己規定である。

2012-11-29 14:45:47
笠井潔 @kiyoshikasai

笠井のことを左翼だと思っている人は、考えを改めていただきたい。さらに階段席の最上部を突き抜けて、屋根に登ってしまうことを望んでいる。屋根の上で跳んだりはねたりして、騒音で議事進行を不可能にさせたいものだ。行き着くところ階段派は、議場からはみ出して屋根の上派になる。

2012-11-29 14:51:44
笠井潔 @kiyoshikasai

議場の外という点で、屋根派はまた街頭派でもあるのだが、この点についてはまた改めて。

2012-11-29 14:53:13