ガイデッド・バイ・マサシ

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
5
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第一部「ネオサイタマ炎上」より:「ガイデッド・バイ・マサシ」

2012-11-30 13:42:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ターン!東のフスマが音を立てて開き、十数人のヤマブシが出現した。ターン!ニンジャスレイヤーがそちらへ向き直る暇を与えず、今度は西のフスマが音を立てて開き、十数人のヤマブシが出現した。 1

2012-11-30 13:47:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヌゥーッ」ニンジャスレイヤーはカラテ警戒する……ターン!今度は南のフスマが音を立てて開き、十数人のヤマブシが出現した。ターン!ニンジャスレイヤーがそちらへ向き直る暇を与えず、今度は北のフスマが音を立てて開き、十数人のヤマブシが出現した。完全包囲である! 2

2012-11-30 13:48:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「覚悟あっての侵入か!」北のヤマブシの奥から白髭のエルダーヤマブシが進み出、威圧的にボーを構えた。ニンジャスレイヤーはヤマブシを睨み渡す。彼らの中にニンジャはいない。「争う意志は無い」「で、あろうとも!愚か者め」エルダーヤマブシはその目を敵意に光らせた。「涜神者に死を与えん!」3

2012-11-30 13:55:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ソイヤ!」「ソイヤ!」ヤマブシ達がじりじりと包囲網を狭めにかかる!彼らの手には危険なジュッテやサイが握られ、スリケンを構えている者も多数いた。「ニンジャの侵入者が今迄に無かったとでも考えておったか!過去の涜神者は残らずゼンメツよ!」エルダーヤマブシはボーを打ち鳴らした。 4

2012-11-30 13:59:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「手厚い歓迎だぞ」ニンジャスレイヤーはIRCインカムに呟いた。『切り抜けて頂戴』ナビゲーターのナンシー・リーは平然と言った。ニンジャスレイヤーは唸った。「ソイッ!」「ソイヤ!」ヤマブシが迫る!「イヤーッ!」包囲網からスリケンが複数飛来!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回転! 5

2012-11-30 14:03:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」回転を終えたニンジャスレイヤーは無傷!だがヤマブシは三人死亡!三人負傷!ニンジャスレイヤーは回転しながらスリケンを弾き返し、同時に自らもスリケンを投げ返していたのだ!「ソイッ!」「ソイヤ!」ひるまずボーやジュッテを構え、ヤマブシが前進!6

2012-11-30 14:06:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」間髪いれずニンジャスレイヤーは足元のタタミめがけカワラ割りパンチを打ち下ろす。KRAAASH!吹き飛ぶタタミ!「卑劣!」エルダーヤマブシが非難する中、ニンジャスレイヤーは床に穿たれた大穴に飛び降りる!「追え!追うのだ!守りを固めよ!回り込め!」「ソイヤーッ!」 7

2012-11-30 14:09:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

六階から五階のトコノマへ落下し流麗に着地したニンジャスレイヤーは、活けられた水仙の横にあるモニタを一瞥した。画面に砂嵐が走り、レリックタワーのワイヤーフレーム地図が映し出された。ナンシーによるハッキング情報だ。「こちらになります」のガイド文字が冷淡に点滅。映像は砂嵐に消えた。 8

2012-11-30 14:17:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ターン!フスマを引き開け、指示された迂回路を進みながら、ニンジャスレイヤーはこの後待ち構えるであろうソウカイニンジャとのイクサに思いを馳せた。狂ったヤマブシ達が言うところの「涜神者」は、実際、別に居る。間違い無く、奴らはこのあと現れる……ナンシーの情報が正しければ、だが。 9

2012-11-30 14:23:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オープンザドー」「オープン」キャバァーン!電子音が鳴り響き、鉄扉が内側に重々しく開いた。「ウィーピー!」エディアキはガッツポーズした。「ダッセ!一世代前のセキュリティだ!」だが、現地人のモガタの表情は暗く曇ったままだ。「試練ここからよ、貴方」「試練?避ける、避ける!」 11

2012-11-30 14:28:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前のその、ブー!ドゥー!そろそろギャグにもならねえ……もっと文明を見つめろッて」テック6がモガタをバカにしたように指差した。「タワーを守る?アッサシン?ダッセ!遺物!あのよ、俺たちにはこれよ。テック」最新式ボルトガンを構えた。エディアキも同様の武器を持っている。12

2012-11-30 14:32:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この、引き金を引くとな?ボルトがBOOM!貫通してお前、一度に三人ぐらいはPINよ、PIN!」テック6は突入前にデザイナーズドラッグをキメたばかりで、ハッキング能力と冷静さをトレードオフしている。「オイ、はしゃぎ過ぎんなッて!」エディアキは注意した。「行こうぜ!」 13

2012-11-30 14:38:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人のトレジャーハンターは互いにサムアップし、レリックタワーに侵入した。「……」モガタは侵入前に一瞬立ち止まり、後方を振り返った。彼らが上ってきた数百段の石段と、斜面に作られた棚田の光景を。古式農法で栽培されるコメ……ヤマブシ達の手による、自給自足のシステムだ。魔境! 14

2012-11-30 14:46:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」モガタは上に視線を動かし、眉根を寄せる。空に浮かぶ黒点を見咎めたのだ。彼はまぶしそうに目を細めた。瞬きすると、異物は見えなくなった。「早く早く早くしろよ!」テック6がうるさく呼びかける。モガタは顎をさすり、ハチェットを構えて用心深くエントリーした。 15

2012-11-30 14:49:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人のトレジャーハンターは異常なテンションを維持していたが、モガタが危惧するようなヘマはしなかった。要所要所の配電盤やUNIXポイントを見逃さず、危険な落とし穴やアロートラップにかかる事も無い。二人は罠群に侮蔑的評価を下した……彼らのスラングで言えば「ダッセ」であった。 16

2012-11-30 14:54:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お、階段!」「マブ」二人は頷き合った。「お前の古地図、結構リアルじゃん」エディアキがモガタに言った。モガタは陰気に頷いた。テック6が笑う。「緊張してら!ブー!ドゥー!」「迷信じゃないよ」モガタは言った。「ヤマブシ実在。このタワーの中にいる。全然会わない却っておかしいね」 17

2012-11-30 14:58:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だからさァ」テック6が顔をしかめる「ヤマブシ来たらボルトガン!これを……」「わかったって!」エディアキが笑いながら止めた。「今3階だから、三分の一ぐらい来たか?え?」「……そうね」モガタが頷いた。彼は耳に手のひらを当てた。「……鐘が鳴ってるよ」「アーン?」 18

2012-11-30 15:02:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ドスエ……侵入……囲重点……包囲重点……第五フロアな……)マイコ音声である。「第五?俺らじゃねェ」エディアキが唸った。「先客か?ふざけんなよ」「アイツかな、ダマスカス・トミー」テック6が商売敵トレジャーハンターの名を口にした。「殺るしかない」「全くだぜ」「全部殺って、マブ」19

2012-11-30 15:07:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」モガタは暗澹たる気持ちで二人の命知らずに続く。恐るべき運命の予感に、震えを抑えるのがやっとだ。誰がこんな探索に進んで手を貸すというのだ?日々、落日を背に、彼の村がある谷を不吉なシルエットで見下ろす悪魔の塔……だが、他に選択肢は無い。一攫千金せねば、家も家族も失う。 20

2012-11-30 15:13:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この塔は大昔の英雄、哲人戦士「ミヤモト・マサシ」の修行の地の跡地に建てられている。マサシゆかりの修行の地は日本各地に残されているという。マサシ崇拝者達のカルトがこの地に集まり、修道院めかした建造物を建てた。何百年も、周囲の村人と一切交流を持たず、儀式と修行に明け暮れる……。 21

2012-11-30 15:32:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

壁に描かれた剣術指南図や「ヒョットコを割らねば確かめられぬ」「敵前のスモトリ、ドヒョー・リングを踏まず」といった警句は、モガタにとっては邪神を描いたイコンや暗黒の祈祷文にも見えて恐ろしく、UNIXシステムのLEDライトやアラートの類も、悪魔の息吹に思えてしまう。 22

2012-11-30 15:35:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人の冒険者は数日前にモガタの村を訪れ、ガイドを募集した。注意深いモガタは、何らかの宝物に関する情報がこの数日で世に流出し、彼らのようなヨタモノをこの地に招き寄せたという事実を把握した。 23

2012-11-30 15:40:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モガタにはまとまったカネが必要だった。川下に作られた巨大なノリ工場は、村の産業を崩壊させた。手作りで高いノリは買い手がつかない。村が滅びる前に、家族を連れて、マシな土地へ引っ越すのだ。そのためには涜神も止む無し。彼は己を強いた。 24

2012-11-30 15:41:22
1 ・・ 5 次へ