山本七平botまとめ/昔「PPM」、今「ベクレル」/~”知る”とはどういう状態なのか、を知らない「知らざるに劣る」日本人~
- yamamoto7hei
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①【PPM】東京工大名誉教授桶谷繁雄博士の参議院予算委員会における「公害についての公述」は大変に面白い。私は『月曜評論』で要旨を読んだだけだが「なるほど、専門家の言葉とは実にしっかりしたものだ」と思った。<『無所属の時間』
2012-11-22 09:28:03②ただ、ちょっと「いや、これはむしろ逆なのではないか?」(それとも、逆に表現されたのか?)と思った部分があるので、その点について少し書いてみたい。それは社会党の上田哲氏の質問に答えられた部分である。次に引用させていただく。
2012-11-22 09:57:44③《過去五年間の公害に関する新聞報道というものをずっと見ておりまして、我々はこれを一つの反面教師のような形でとらえるというのが正しいというふうに思っております。新間があのように騒ぎ、世論があのように騒ぎ、一方において微量分析装置というものがその必要から大分広まってきておるし、(続
2012-11-22 10:28:08④続>PPMというのは、たとえばフランスなどに行きまして友達にPPMと言ったら、PPMって何だって聞かれたのですけれども、そういう点から言いまして日本人のそういう点に関する知識は非常に上がっております。》 問題はこのPPMなのである。
2012-11-22 10:57:46⑤私も確かに「PPMという言葉のあること」は知っているから、この言葉を聞いても「PPMって何だ」とは言わないであろうと思う。 では「PPMの正しい定義を述べよ。またその数値と公害との関係を、例をあげて正確に説明せよ」と問われたら、私は何と答えるであろう。
2012-11-22 11:28:03⑥正直に自状すると、この問題には一行の解答も書けず、いわば答案白紙提出の状態なのである。 私は、自分のこの状態に興味を感じたので、事務所に来る人に、次から次へと前述の問題を出してみた。
2012-11-22 11:57:45⑦「PPMって知ってるか」 「知ってるサァ、今じゃ常識ですよPPMは」 「ではうかがうがネ……」 という形で前述の問題を出す――答えられた者は一人もいない。 しかもそれが、みな出版者・著者・編集者という知識人なのである。
2012-11-22 12:28:05⑧もしかりに桶谷博士が参議院で、居並ぶ議員たちに同じ質問をされたらどうだったであろう。 おそらく全く同じ結果ではなかっただろうか。 これが「一知半解」であり、「知らぎるに劣る」状態ではなかろうか。
2012-11-22 12:57:46⑨「PPMという言葉がある事」を知っているのは「PPMを知っている」のではない。 そしてこの二つを混同すると「PPMって何だ」といったフランス人と全く同じ状態にありながら「PPMを知っている」という錯覚を抱き、この錯覚に基づいて行動するから「知らぎるに劣る」状態になってしまう。
2012-11-22 13:28:06⑩今我々に必要なのは「”知る”とはどういう状態をいうのか確実に″知る″こと」であろう。 そして「自分はこのことは知っている。このことは知らない」と自らの内に載然たる線をひきうる状態を獲得することであろう。 そしてこの場合も「わからないことは、わからないとしておくこと」。
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