がん幹細胞について

個人的まとめ
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Y Tambe @y_tambe

「がん幹細胞仮説」について。ざっくりと説明してみるか。

2012-12-03 17:14:14

より判りやすい喩えを用いたヤンデル先生による解説もおすすめ
:「キャンサーステムセル」「分子標的薬」をヤンデル先生が解説してくれた - Togetter - http://togetter.com/li/212662

Y Tambe @y_tambe

「がん幹細胞仮説」を理解するためには、まず、他の「がんが起こるメカニズム」の説のことは置いといて、別に考えるとよい。他の説とは、化学発がん説とか、プロモーター・イニシエーター仮説とか、多段階発がん説とかのことね。

2012-12-03 17:16:38
Y Tambe @y_tambe

「がん幹細胞仮説」のポイントは、(1)幹細胞→前駆細胞→分化した細胞、というヒエラルキーが、一つのがん組織においても存在していること。 (2) がん幹細胞は「コッホの条件」を満たす(=がんの「病原体」である)ことが実験的に証明されたこと。

2012-12-03 16:43:09

Y Tambe @y_tambe

俗に、「がん」のイメージとしては、何か体の一部で「癌細胞」がどんどん無制限に増殖していって「塊(=癌腫)」になり、それがさらにどんどん成長して、周囲の組織を巻き込んで蝕んでいくイメージかな、と思う(続

2012-12-03 17:19:50
Y Tambe @y_tambe

承前)この「癌細胞」は、確かに増殖がさかんで「一つの癌細胞がどんどんクローン増殖していく」イメージかもしれないけど、実を言うと、まるっきり「一種類の同じ癌細胞」が増えてるわけではない(続

2012-12-03 17:22:18
Y Tambe @y_tambe

承前)見た目には区別しにくいけど、増殖性とか薬剤抵抗性とかの性質が異なる、何種類かの細胞が、一つの癌組織の中の「癌細胞」として混じってることが明らかになってる。この複数の集団には、幹細胞様の性質を持つ少数の細胞集団と、それを持たない大多数、その中間にあたる集団などの階層がある(続

2012-12-03 17:26:19
Y Tambe @y_tambe

承前)最近、ヒトの癌組織から、こういった細胞集団を選り分けて、それを特殊なマウスに接種して、実際に同じ癌が発生するかどうかを研究する手法が開発されてきたのだけど(続

2012-12-03 17:28:22
Y Tambe @y_tambe

承前)ヒトの癌組織を刻んで一個一個ばらばらの細胞にして、その種類(細胞表面のマーカー分子の違いで区別した)ごとに、そのマウスに接種したとき、大多数を占める癌細胞(増殖はさかんだが、分化してて幹細胞の性質は少ない)では癌は生じず、少数の幹細胞様の性質をもった細胞では癌が生じた(続

2012-12-03 17:31:59
Y Tambe @y_tambe

承前)しかもその少数の、幹細胞様の細胞集団でマウスに生じた癌では、やっぱり「幹細胞の性質を持つ少数の細胞集団と、それを持たない大多数の細胞集団…」という細胞集団の階層が生まれていた。この実験は、まだ一部の癌でしか証明されてはいないけど(続

2012-12-03 17:36:12
Y Tambe @y_tambe

承前)少なくとも、その一部のがんでは「がんは『そのがん全体を作り出すことが可能な、幹細胞様の細胞』から生じる」ことが実験的に証明された、と言える。これが「がん幹細胞仮説」

2012-12-03 17:37:52

Y Tambe @y_tambe

個人的には、証明に使われた手法が、まんま「コッホの原則」なのが面白かったです…実際に再現されたマウスの癌で同じ実験繰り返すとこまでやってて。感染症の方では、いろいろ例外も見つかってるのだけど、やっぱり病原因子の実験的証明のゴールデンルールなのだと再認識した。

2012-12-03 18:12:29

コッホの原則 - Wikipedia - http://ja.wikipedia.org/wiki/コッホの原則

Y Tambe @y_tambe

承前)仮説そのものの歴史は古い(1970年代)のだけど、証明できたのが割と最近。そもそもヒトのがん細胞をマウスに移植しても普通は免疫で排除されて、がんは出来ない。ヌードマウスを使う実験系は、割と古くに出来てたけど、それでできる腫瘍はヒトのとは別物なので、証明としては弱かった(続

2012-12-03 17:41:54
Y Tambe @y_tambe

承前)それがまず、「血液のがん」である白血病で証明された……もともと血球系は「造血幹細胞」という正常な幹細胞の研究が進んでたこともあって。で、その後、いくつかの固形腫瘍でも似たようなものが見つかり、世界中の研究者が「○○がんの、がん幹細胞を探せ」とばかりの競争になったり(続

2012-12-03 17:45:57

なぜ注目?

Y Tambe @y_tambe

承前)で、何でこの「がん幹細胞」が注目されるのかというと、これが再発や転移に関与する「本体」かもしれない、ってことから。

2012-12-03 17:47:54
Y Tambe @y_tambe

承前)例えば、抗がん剤治療をして、腫瘍が小さくなって安心してたら、また再発した、という場合。ひょっとしたら、この抗がん剤が「大多数の癌細胞」を殺すけど、がん幹細胞は殺せない、ということが原因ではないか?という仮説が、頭をもたげてくるわけ。

2012-12-03 17:50:30
Y Tambe @y_tambe

承前)また例えば、他の「大多数の癌細胞」なら、リンパや血流に乗って他の場所に到達しても問題はないけど、がん幹細胞ならそうして移動した先で(マウスでのモデル実験のように)新たにがんを作る可能性があるんじゃないか?という仮説とか。

2012-12-03 17:52:26
Y Tambe @y_tambe

承前)そういう、がんの治療や悪性化との関連が深そうなこともあって、注目されてるのが「がん幹細胞仮説」。で、どこまでが「仮説」でどこからが「事実」なのか、というと難しいんだけど。

2012-12-03 17:56:39
Y Tambe @y_tambe

承前)「少なくとも一部のがんでは、がん幹細胞の存在が証明されてる」は多分OK。ただ、この『一部の』を除くとマズい。同様に「がんは、少数のがん幹細胞から生じる」という解説も粗い。

2012-12-03 17:59:32
Y Tambe @y_tambe

承前)「がん幹細胞が、薬剤治療や転移に関与する『可能性』が…」なら、確かにその「可能性」が研究者から指摘されてるので、まぁOK。

2012-12-03 18:01:21
Y Tambe @y_tambe

承前)ただし本当に治療や転移などの問題にどれだけ関係してるか、もっと言うなら解決につながるかどうかは、今後の課題。

2012-12-03 18:02:35