「富国強兵の遺産」要約 第一章
ちなみにこの本は96年に書かれたもので、アメリカから見た日本を描いていますので、事実と違う事があるかもしれませんがしょうがないことです
2012-12-11 20:36:45アメリカ人は、「国際分業」によって国家の安全保証にかかわる様々な問題が解決できるものだと考え、社会が「リベラルな民主主義」という最終目標に向かって前進するのを阻む元凶である時代錯誤的なナショナリズムを一掃できると期待してきた。
2012-12-11 20:39:22だが日本は、国家安全保証を確立することによってアメリカが考えている以上のことが可能であるということを、身をもって示してきた。「個人の権利が最大の価値をもつ世界」で国防を考えていたアメリカは、「国益」が個人の権利を確立する上で重要な役割をはたしているという点を見落としてきたのだ。
2012-12-11 20:40:09日本が国家戦略だけにより国防上の目標を達成した訳ではないが、日本のやり方からは、「集団の利益の確保」と「国防体制の強化」が、「軍事力の展開」だけによってではなく、「経済発展と技術革新を促す制度」によっても実現できるということがわかる。
2012-12-11 20:40:54日本が国防体制の強化に向けて努力してきた最大の理由は、国民の間に「独立国家として存続するには、経済力の強化、つまり「富国」以外に方法は無く、政府の役割はシステマティックな方法で産業を振興し、国家の安寧を図ることだ」というコンセンサス(共通認識)が国民の間にあったからだった。
2012-12-11 20:41:44日本の施政者は「民生分野と軍事分野の間の技術の相互浸透を促す」「防衛装備の生産を民製品産業の中に組込む」という二つの方法によって、着実に日本の技術システムを強化していった。
2012-12-11 20:42:42冷戦時代、アメリカは領土は守ったが、経済的利害は国防には大して重要では無いとみなしてきた。また常に、「技術や経済上の利点」よりも「政治や軍事上の目的」を優先してきた。
2012-12-11 20:44:08一方日本は「経済的利害」と「国防上の目的」を明確に区別したりすることはなく、むしろ技術や工業生産力は、領土と同様に守るべき国益であるとみなしてきた。
2012-12-11 20:44:17製造業の生産力を国家の安全の要と考えたフリードリヒ・リストは、「軍備とは寄生虫のようなもので、彼らの一年の労働によって次の年の国家の安全をあがなうことはできない」というアダムスミスへの反論として、(続く
2012-12-11 20:46:40続き)「相対的な優位性は単に世襲されるものではなく、つくりだすことができる。「優位性をつくりだす」ためには、国家は「現在もっている優位性」を犠牲に、「将来の優位性」を確保しなければならない」と説いた。
2012-12-11 20:47:14短期的に見れば保護政策で守られた経済は自由競争の経済より効率が悪いが、長期的に見れば生まれたばかりの産業を保護するために支払う価格には、投資としての価値はある。
2012-12-11 20:47:32富と軍事力はどちらも国家の政策とするのに相応しい、両立しうる目標であり、軍備は国家の安寧を保つための多くの手段の中の一つにすぎない。
2012-12-11 20:48:20エンゲルスは「武力による支配は兵器を生産する能力に左右され、兵器を生産する能力は一般的な工業生産力―つまり武力が意のままに使える物質的手段によって左右される…武力の内容は、資源を提供する経済秩序によって規定される…」と述べている。
2012-12-11 20:49:00彼にとって、新兵器の製造技術の獲得は、何よりも経済上の優位性の獲得を意味した。「生産に用いられようと破壊に用いられようと、産業はあくまで産業である」と彼は語る。
2012-12-11 20:49:28経済のボトムアップ的な作用に注目し、起業家や企業、産業部門の活動が資本主義の発達にどのような影響を及ぼすか分析したジョセフ・シュンぺーターは、資本主義社会に置ける競争が、(続く
2012-12-11 20:50:01続き)(単なる発明ではない)既存の要素の「新たな組み合わせ」―新消費材、新生産方式、新市場、新産業組織等―によって生まれる「技術革新」(イノベーション)とその「創造的破壊」を中心として行われていると考えた。
2012-12-11 20:50:18「技術こそが経済を動かす中心要素なのだ」と言うシュンぺーターの主張、そして「国家が独立を保ち、安全を確保できるかどうかは、その国の産業が独立を保ち、活力を維持できるかどうかにかかっている」というリストの主張は、日本経済の文化的背景や慣行とうまく呼応していた。
2012-12-11 20:50:48「比較優位は自らがつくりだすものだ」と信じていた日本政府は、いくつかの「障害」―競争力のない産業、熟練労働者の不足、先進技術の不足、巨額で大雑把な資金需要に対応できない未発達な市場―に対して、(続く
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