フー・キルド・ニンジャスレイヤー #4

翻訳チームによるサイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) 日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フー・キルド・ニンジャスレイヤー」#4

2012-12-13 15:16:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピココ……ピココ……闇の中にアラート音が浮かんで消える。セイジは目を開く。天井の「忍」「殺」の文字が彼を見下ろしていた。どれほどの時間メディテーションしていた事だろう。「シューッ」セイジは肺の空気を残らず吐き出す。腕を回す。肩の痛みは癒えた。カラテに支障無し!「よしッ……」 1

2012-12-13 15:24:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ピコココ……ピココ「ドーモ」セイジはログイン・サインに応えた。「ドーモ」カツラだ。「グッドニュースですよ」「グッドニュース?どうぞ」とセイジ。UNIXモニタにワイヤーフレーム地図が展開してゆく。何の地図か。それは、とても高い、実際高いビルだ。……マルノウチ・スゴイタカイ・ビル。2

2012-12-13 15:27:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

セイジの執念と賛同ハッカー達の手腕により、数年前のクリスマス、このビルの痛ましい爆発事故が、ニンジャスレイヤー誕生の発端である事は既に確定させている。「痛ましい事故」に関する記録は、一見、筋道が通っているが、綻びはゼロではない。隠匿の痕跡がある。つまり……ニンジャの関与だ。 3

2012-12-13 15:32:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

あの事故はソウカイヤのニンジャが引き起こした。そして、大量の市民が殺された。犠牲となった市民の誰かがニンジャスレイヤーとなった。ゆえに、マルノウチ・スゴイタカイビルは聖地。生誕の地。概念の地である。 4

2012-12-13 15:37:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゆえに、セイジにとってもこのランドマークは重大な意味を持つ。疎かにしてはならない場所である。だが……心苦しい事ではあるが……そろそろ、よかろう。新たなニンジャスレイヤーのアイデンティティの枷となるようでは本末転倒。セイジはこの遺物めいた存在を克服しなければならないのだ。 5

2012-12-13 15:42:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マルノウチ・スゴイタカイビルの立体ワイヤーフレームが上に浮上してゆく。その地下駐車場部がクローズアップされ、さらに、その下に視点が移動する。「何をしている?ビルをよく見せてくれ」「これでいいんです」文字情報だけだが、カツラの会心の笑みが浮かぶようだ。「展開します」 6

2012-12-13 15:51:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ナブケ=サンとエビウミ=サンが、保守管理のサーバーをハックしたんですが」ピコココ、ピコココ。二人がログインする。「でね、不自然な補強工事の跡があります。これね……空洞ですよ。土台が安普請な」「空洞?つまり……」「イピー」「イピー」 7

2012-12-13 15:57:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ちょっと時間かけてアニメーションさせてみました」カツラが言った。ワイヤーフレームの地下駐車場部の要所、数カ所に設置された爆発物が同時に起爆すると、地盤沈下めいてスゴイタカイビルが真下の空洞部に沈み込み、崩壊……ビルのワイヤーフレームが分解し、「忍」「殺」の文字に再構築された。8

2012-12-13 16:32:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「爆発物……そうだな……」セイジは瞳に暗い輝きをたたえ、闇の中で頷いた。「下水のバイオニンジャ殲滅作戦の為に闇手配したガス……可燃性だ。工夫すればそのまま使える……ぞ」「ですよね」「イケル」「イピー」9

2012-12-13 16:40:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((実行部隊はどうする?人手が要る)))セイジは黙考した。(((こいつらはデッキを離れれば役に立たん連中だ。神聖な儀式行為も、こいつらには所詮ゲーム感覚……)))セイジの発言を待ち望むように、ログインネームが点滅している。(((ヨタモノ……ヒョットコ。カネで集めるか))) 10

2012-12-13 16:51:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー=サンのキュレーション能力、素晴らしいものがあります」エビウミが賞賛した。「いけますよね?」とナブケ。「テンサイ級ハッカーが三人。万全にサポートします」「失敗は許されん」セイジは武者震いし、笑った。「この再生儀式を経れば、俺に勝てるニンジャはいなくなる」11

2012-12-13 17:05:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サスガ」「サスガ」心地良い賞賛!だが、これだけではダメだ。二つの要素を合一させねば、過去のニンジャスレイヤーを葬る事にはならない。「例のニンジャどもはどうだ」「家に帰らないです」とナブケ。「警戒してます」「チッ」セイジは舌打ちした。ナブケは続けた「してますが、しかし、甘い」12

2012-12-13 17:13:45
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UNIXモニタが切り替わり、ネオサイタマの区画図が映し出された。「ココ」という明快なカタカナが三角形と共に拡大縮小し、ある一点を示した。ありふれた廃ドージョーだ。「トレスしました」「テンサイ級をナメたらいけないですよ。三人でタイピング速度は九倍近い計算、つまり百倍の能力だ」 13

2012-12-13 17:20:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いつまでこいつらを捕捉し続けられるか、保証は無い。奴らとてニンジャ。侮るわけにはいかん」「サスガ」「サスガ」「二つのミッション……電撃的に……なおかつ入念に展開せねば」セイジは厳かに言った。「これはイクサだ。試練だ!」「絶対成功しますよ!」「英雄的!」「正統後継者!」 14

2012-12-13 17:26:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ズガタッキェー!」セイジの口をついて古のパワーワードが飛び出した。「アイエエ%4鷀」「ア軣エエエ」「%3イ塒」ハッカー達が乱れた文字を返した。音声認識の誤作動!セイジの怒声に畏れをなしたのだ。セイジは立ち上がっていた。「敬意だ。オリジンへの敬意は忘れるな!敬意もて滅ぼす!」15

2012-12-13 17:40:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ブンブンブンブーン。ブンブブーン。エレベーターミュージックめいたインストゥルメンタル・ポップスが心地良く流れるバッターボックスにシビメはエントリーした。両手に指抜き革グローブ。頭にはカスガ・ブラックストライプスのメタルヘルメット。コインスロットにトークン投入!キャバァーン! 17

2012-12-13 17:46:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

頭上ディスプレイに「あなたのスコアー」「全国ランキング3位」のオレンジ単色液晶パネル文字が点灯した。シビメは職人めいた眼差しでバットを構え、ワータヌキ型のピッチングマシーンを睨んだ。やがてその腕が水車めいて回転。ボールが射出された。「キエーッ!」パコォン!最適タイミング! 18

2012-12-13 17:51:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ホームランドスエ!」「ワー!スゴーイ!」ストココココピロペペー、トコトコテテテペウン!ワータヌキがさらにボール射出!「キエーッ!」パコォン!またもジャストタイミング!「ダブルホームランドスエ!」「ワー!スゴーイ!」……パコォン!「ターキードスエ!」「ワー!スゴーイ!」19

2012-12-13 17:53:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「参りました」のカケジクがファンファーレと共にタヌキの前に降りてきた。「フー」シビメはバットを置き、ヘルメットを脱ぐと、剥げかかった頭の汗をタオルで拭った。いいスタートが切れている。この調子でいけば、もうすぐオンライン全国ランキング2位だ。精進せねば。 20

2012-12-13 17:56:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バッターボックスは緑のフェンスで仕切られている。各ボックスには他の客がスタンバイし、思い思いにバットを振る。「振り方がわからないよー」「こうだよ、こう」左隣、若いカップルが睦まじく遊戯する様に小馬鹿にした目線を送り、シビメは右隣を見る。右隣はピッチング・ゲーム・ボックスだ。 21

2012-12-13 18:01:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そこに立つのは背の高い男、ハンガーにはトレンチコートとハンチング帽がかかっている。キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!スロットに何枚もトークンを投入した彼は、やや腰を落とし、不思議な投球姿勢を取る。シビメは眉根を寄せた。(((オイオイ、何だそれは))) 22

2012-12-13 18:06:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シビメは思わずそのさまを見守った。ガコーン!音を立て、バッターの形をした標的ボードが遠くに出現した。男は……投げた!「イヤーッ!」「エッ?」シビメは思わず声を出した。男が投げたのはボールでは無かったからだ。投擲物はバッター標的ボードを大きく外れ、ネットに突き刺さった。 23

2012-12-13 18:11:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」男は首を傾げ、肩を動かした。そしてまた投擲姿勢を取った。「……」シビメは上の空でバットを構え、もはやそのさまを注視していた。ガコーン!違う位置にバッター標的ボードが出現!「イヤーッ!」やはりボールでは無いなにかを投擲!ボードの端をかすめ、ネットに突き刺さった。 24

2012-12-13 18:12:56
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